執筆者:荒木 杏奈
アンナアドバイザーズ株式会社
近年、日本の経済成長率の鈍化や少子高齢化社会の進行などを踏まえて、海外不動産が魅力的な投資先として話題を集めています。人口増加・経済成長の中にある国で投資に成功すると、より多くの回収が見込める為、メリットに感じる方も多いでしょう。
しかし、海外は文化の違いや言葉の違いなどに基づく失敗例も数多くあります。
今回は海外不動産投資における失敗例を5パターンご紹介します。
1. 海外不動産への投資が注目されている
日本では少子高齢化が進み、今後の不動産市場は明るくないという見立てもあります。
そんな中、海外不動産投資が注目を集めています。特に成長著しい発展途上国では、土地や不動産価格がここ数年で上がってきています。
まずは、海外不動産投資のメリットをまとめました。
(1) 海外不動産投資のメリット
① 投資先の分散によるリスクヘッジができる
先ほどお伝えしたように、日本は経済成長が鈍化し高齢化が進行しています。よって、今後の不動産市場にも影響が出てくることが予測されています。
国内の資本に投資を集中するのではなく、海外の不動産に投資先を分散することで、投資のリスクヘッジができると言えます。
ある程度市場が固まり安定している先進国と、成長著しい発展途上国どちらにも投資を行う事で、万が一海外情勢がガラッと変わった場合のリスクを軽減することができます。
② キャピタルゲインが狙える
発展途上国の中には不動産建設ラッシュの渦中にある国もあり、ここ数年で何倍にも不動産価格や地価が値上がりしている国もあります。
よって、不動産を売買することにより売却差を得ることができる、「キャピタルゲイン」によって大きな利益も期待できます。
一般的にGDPや人口が増えている国では、家賃下落リスクや空室リスクが少なく、国内よりも魅力的な投資先になる場合もあります。
③ 成長国の将来性へ投資できる
東南アジアや南米を筆頭に、新興国の経済成長は勢いを増しています。
GDPが伸びている国、インフレ率が伸びている(物価が上昇している)国で物件を所有することは、その国の将来性へ投資することになり、安定した収入を得るチャンスになります。
トレンドに資本を投下できるという点で、しっかりと分析を行った上での成長国への投資は高いメリットを見込めます。
(2)注目をあびる投資国
では、実際に注目を浴びている国をいくつかご紹介します。
① フィリピン
東南アジアの中でも高い経済成長率を誇るフィリピンの人口は1億人を超えています。人口密度は日本よりも多く、物件へも高い需要を見込むことができます。
一方、海外への出稼ぎ労働者からの仕送りがくがGDPの多くを占めているため、先進国の景気の影響を受けやすいというデメリットもあります。
世界情勢の影響での価格の上下に気をつけなければいけない投資先です。
② タイ
現地に住む日本人も多く、現地の不動産情報を持ち合わせている日本人もいらっしゃいます。日本語で物件情報を得やすいという点もメリットです。
一方で、同じ東南アジアの中では経済成長率が低く、成長トレンドに資本を投資するという観点から考えると、より成長率の高い国を検討するのも一つです。
③ ベトナム
コロナ禍でも継続した経済成長の推移がありました。社会主義国でもある為、統制の取れた感染症対策などの影響も考えられます。
ただ、ベトナムでは外国人の不動産投資の規制が厳しいのが現状です。
通貨の海外への持ち出しも制限があるため、様々な点を注意する必要があります。
社会主義国である以上、急な規制の変更も考えられます。
④ カンボジア
カンボジアは高い人口増加率と経済成長率を誇り、今後も高い水準で推移していくことが予測されています。経済成長によるキャピタルゲイン・人口増加によるインカムゲインの双方狙える国です。
しかしながら新興国である為、整備や質が未熟な物件がある点は否定できません。言語の壁もあることから情報収集にもパワーがかかる為、慎重な検討が必要になります。
⑤ アメリカ
世界No.1の経済大国であるアメリカも、海外不動産投資の人気な投資先です。東南アジアや南米と比較すると落ち着いていますが、まだまだ経済成長を続けており、人口も増加しています。安定した投資が見込めます。
ただ、エリア選定によっては、すでに地価や物件価格がかなり高騰している地域もあるので、利回りが低くなる可能性はあります。
各州によってトレンドが異なるので、投資目的に沿ったエリア分析が必要になります。
2. 海外不動産投資のリスクや失敗例は?
ここまで海外不動産投資のメリットをご紹介しましたが、もちろん良い点ばかりではありません。
本題の海外不動産投資のリスクや失敗例について解説します。
(1) 念頭に置いておきたいリスク
① プレビルド購入によるリスク
海外の不動産投資において、一部の国では、物件の建設中に代金の一部を支払う購入方法が一般的です。これを「プレビルド」といいます。
販売開始時よりも価格が上がっていく可能性があるため、物件が完成すれば大きなキャピタルゲインを得ることができます。
ただ、物件が完成しない可能性があるという大きなリスクもあります。建設前から物件の支払いが始まる為、物件の建設が頓挫すると、支払ったお金が水の泡になってしまいます。
社会情勢を大きく受ける国では細心の注意が必要です。
② カントリーリスク
カントリーリスクとは、投資対象国や周辺エリアの社会情勢の影響で不動産価値が下落するリスクのことを言います。
新興国は、日本では予想できない社会のトレンドの影響を受ける可能性があります。
移住しない限り、現地情報の入手にはタイムラグがあり、日本から現地のリスクをリアルタイムで把握することは難しいのが現状です。
為替のリスクや、政権交代、自然災害、デモなど様々なリスクが考えられますが、先進国よりも新興国の方がこれらのリスクが高いと言われております。
(2) 具体的な失敗例
① 物件完成前に計画が頓挫
プレビルドの物件に投資する場合は、不動産会社や物件建設の計画を入念に調査しましょう。
発展途上国のプレビルド物件の中には、施工前の売り上げが建設資金に充てられる場合もあります。よって、物件の売れ行きが悪いと完成前に建設が頓挫してしまう可能性があります。
購入の際にはどれだけの売れ行きがあるかをしっかりと確認して、プロジェクトが問題かく進行するかを判断する必要があります。
② デモや紛争、政権交代などによる貨幣価値の変動
一般的に、先進国と比較して発展途上国の社会情勢は不安定であると言われています。
日本よりもデモが活発に起きている国や、突如始まる紛争に巻き込まれる可能性もあります。
2009年のギリシャでは、粉飾決算が明るみになり、経済危機が起きました。ギリシャは実質的な債務不履行に陥り、国債を保有する各国に減免を求めました。
この様な突如と現れるリスクを長期的に予測することは極めて困難ですので、常に社会情勢へアンテナを張る必要があります。
③ 契約の確認不足による失敗
海外不動産投資おいて、前提として言語の壁が立ちはだかります。
現地にゆかりのある方や、外国語が堪能な方は問題ないかと思いますが、現地の不動産会社とやり取りを行う場合、その国の言語で行われる場合もあります。
不動産投資は、日本語でも細かい契約事項に目を通さなければいけません。外国語の理解が不十分な状態で契約していると、把握していない契約を締結してしまう可能性があります。
仮に日本人向けの不動産会社を通す場合においても、入念なチェックが必要です。
④ 海外送金の規制
投資を実際に行う前に、対象国の送金規制の確認を必ず行いましょう。
上述したベトナムなどでは、海外送金への規制が多いため、事前に内容を確認する必要があります。
家賃収入は基本的に現地の通貨得るものですが、海外送金ができないと日本で使えなくなってしまいますので注意しましょう。
⑤ リアルタイムで物件の状態を把握できず失敗
日本に住みながら海外の不動産へ投資する場合は、物件の確認を頻繁にできないデメリットがあります。
国内の不動産は自身の目で確認にいくことが出来ますが、海外不動産の場合は、管理会社への委託が必須になります。
よって目視確認ができない為、物件の劣化などにも気付くのが遅れがちです。
信用のおける管理会社の選定が必須です。
3. まとめ
今回は、海外不動産投資の失敗例をご紹介致しました。
海外不動産は非常に魅力的な投資先ですが、無視できないリスクも多々あります。
メリット・デメリットを比較した上で、興味のある方は知識を身につけチャレンジしてみましょう。
執筆者:荒木 杏奈
アンナアドバイザーズ株式会社
日本とカンボジアを拠点に、国内・海外不動産業を展開。
PickUP
荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
代表取締役 / 宅地建物取引士 / 宅地建物取引業 東京都知事免許(2)第99967号
所属団体:一般社団法人RE AGENT 理事長 / 一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC) / 公益社団法人全日本不動産協会
1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。
著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
はじめての海外不動産投資