執筆者:荒木 杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

老後資金の調達や物価高への対策など、お金に関する問題が尽きない現代で、これまで以上に必要とされているのが「投資でお金を増やすこと」です。
投資にはリスクがつきものですが、中にはローリスクで投資ができる「元本保証」「利回り保証」をうたった投資商品もいくつか存在します。
誰でも損をするのは避けたいので、「そんなうまい話はない」と思いつつも気になっている人は多いでしょう。
この記事では、「元本保証」「利回り保証」がある投資商品の種類・特徴について、投資初心者の方にもわかりやすく解説します。
元本保証(利回り保証)とは
元本保証とは、運用期間中に投資資金が元本(購入金額)よりも減らないことを保証することです。
投資資金が元本を下回ることを「元本割れ」といいますが、元本保証の商品はいつ解約しても、元本が割れることはありません。
例えば、いつでも預けた分の現金を引き出せる銀行預金がこれに該当します。
似た言葉に「元本確保」というものがありますが、これは「満期になった時」に元本を保証する商品を指します。
運用期間中に中途解約した場合や、金融商品の発行元が破綻した場合には、運用成績や解約手数料などにより元本が割れる可能性があります。
一方利回り保証は、最初に提示したリターン分を、運用成績にかかわらず一定期間払い続けることを約束した投資商品です。
例えば、利回り保証が年間5%(保証期間5年間)の場合、実際の運用成績が多くても少なくても、購入後5年間は定額で5%のリターンを受け取れます。
元本保証(利回り保証)の投資商品
元本保証(利回り保証)、またはそれに近い投資手法を希望する場合、例えば以下のような選択肢があります。
- 定期預金
- 国債
- 社債
- 貯蓄型保険
- 公社債投資信託
それぞれの特徴について、詳しく解説します。
定期預金
定期預金は、銀行などの金融機関に一定期間、決まった金額を預ける預金口座です。
口座のある金融機関に万が一のことがあった場合でも、元本1,000万円までは保護されるため、安心して資産を預けられます。
その反面、利率が低く、リターンが望めないのが定期預金のデメリットです。
しかし、最近の長期金利の上昇に伴い、メガバンク3行が10年物の定期預金の利率を0.2%まで引き上げると発表しています。
また、定期預金に0.1%以上の比較的高い利率を設定しているネットバンクもいくつかあるため、少しでも良い条件で定期預金を利用したい人は要チェックです。
国債
国債とは、国(財務省)が発行する債券のことです。
国債には種類があり、個人の投資家向けに発行されている「個人向け国債」であれば、最低0.05%の金利保証がついています。
なお、個人向け国債の種類と現在の利率は以下の通りです。
種類 | 利率(税引前) |
---|---|
3年・固定金利型 | 0.05% |
5年・固定金利型 | 0.18% |
10年・変動金利型 | 0.40% |
利率は低めですが、国が破綻しない限りは元本と利回りが保護されるため、安全性の高い商品といえます。
さらに年12回発行される上、多くの金融機関で取り扱いがあるので購入しやすく、また購入から1年が経てば中途解約も可能という、流動性の高さも魅力的です。
社債
社債は、一般企業が発行する債券です。
発行元企業の経営が著しく悪化しない限り、満期時に元本がそのまま戻ってきます。
利回りは発行している企業により異なりますが、国債よりも利率が高いことがほとんどです。
特に大企業が発行した社債は安心感もあるため、人気ですぐに売り切れてしまうこともあります。
多くの金融機関で取り扱いのある国債と異なり、購入できる場所が一部の証券会社などに限られるため、社債によっては入手のハードルが高いのが難点です。
貯蓄型保険
貯蓄型保険は、保険料を貯金のように積み立てることで、将来の有事に備える保険商品です。
受け取った保険料を保険会社が運用することで、払込期間終了後に元本以上の解約返戻金を受け取れます。
「学資保険」「個人年金保険」「終身保険」など、目的によって多彩な商品から選ぶことができ、中には利回り保証を設けている貯蓄型保険もあります。
また、生命保険料控除で所得税や住民税の節税対策ができる点も、他の投資商品にはないメリットです。
ただし、払込期間終了時には元本が確保されますが、払込期間中に解約すると元本割れになるケースがある点には注意が必要です。
公社債投資信託
公社債投資信託は、債券を投資対象とした投資信託です。
元本保証(利回り保証)ではありませんが、株式に投資するハイリスクな投資信託とは異なり、国債・地方債・社債といった、比較的安全な債券のみを対象としているのが特徴です。
市場の価格変動の影響を受けにくく、他の投資信託と比べてローリスクな商品といえます。


元本保証でも価格変動リスクがある
元本保証(利回り保証)や元本確保の商品は、比較的安全性が高いといえども、一定の条件下では価格変動リスクが生じるものが多いです。
例えば、債券を途中解約した場合、その時の政策金利の動向などによって、売却価格が当初の購入価格から下がる可能性があります。
同じく、保険商品を払込期間中に解約した場合にも、運用成績や経済の状況次第で元本割れが生じます。
また注意したいのが、満期になった時にインフレ(物価上昇)が起こっていた場合です。
インフレによって、投資商品を購入した時よりも現金の価値が下がり、購入金額と同額の資金が戻ってきても、資産が目減りしてしまう可能性があります。
元本保証に向いている人
元本保証(利回り保証)や元本確保は、安全性の高さが魅力の投資方法ですが、中には不向きな人もいます。
元本保証に向いている人の特徴として、以下の3つが挙げられます。
長期で資産保有したい人
元本保証(利回り保証)は、長期での運用を前提とした投資商品に付帯しています。
定められた期間よりも早く解約してしまうと、解約のタイミングによっては元本が割れる可能性があります。
そのため、使う予定のない資金を使って、普通預金よりも高い利子(リターン)を得たい場合に有効です。
リスクを最小限におさえたい人
元本保証(利回り保証)がついた投資商品は、なるべくリスクを避けて安全な資産運用をしたい人におすすめです。
元本やリターンが保証されていれば、株式投資のように細かく値動きをチェックしたり、売買のタイミングを測ったりする手間が不要で、安心して投資することができます。
ただし、利益よりも資産の安全性を重視した「ローリスク・ローリターン」な運用になるため、より元本割れリスクの高い他の投資商品よりは、収益性が低くなります。
資金の余裕がある人
元本保証(利回り保証)がついた投資商品には、ある程度まとまった金額を投資しないと意味がありません。
安全性を重視したローリターンな運用であるが故に、金額が少ないと、結局普通の預貯金とさほど変わらないリターンしか得られないからです。
例えば、年率1%の債券を10万円分購入した場合、1年間に得られるリターンはたったの1000円です。
対して購入資金が100万円だった場合は、年間で1万円のリターンが生まれます。
元本保証のようなリターンが少ない投資をするのは、使う予定のないまとまった資金がある場合が望ましいといえます。


まとめ
この記事では、元本保証(利回り保証)、またはそれに近い投資手法を希望する時の選択肢として、いくつか投資商品を紹介しました。
結果的に、完全に「元本保証」といえるものは「定期預金」のみでした。
しかし、「元本確保」や他のローリスクな投資商品を知ることで、自分がどれくらいであればリスクが取れるかが、何となくわかったのではないでしょうか。
投資をするのは資産を守るためだけでなく、有効に増やすためでもあります。
リスクを回避することも大切ですが、自分の許容できるリスクを知ったうえで、改めて自分に合った投資商品を選んでみてはいかがでしょうか。




荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
代表取締役 / 宅地建物取引士 / 宅地建物取引業 東京都知事免許(2)第99967号
所属団体:一般社団法人RE AGENT 理事長 / 一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC) / 公益社団法人全日本不動産協会
1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。
著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
はじめての海外不動産投資