注目を浴びる「海外不動産小口化商品」について解説!メリット・デメリットを比較

執筆者:荒木 杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

資産形成には様々な手法がありますが、安定的な資産運用が期待できる不動産投資は従来から人気のある投資の1つです。

しかしながら、不動産の購入には莫大な資金がかかる為、初期投資のハードルが高い投資と考えられています。
特に海外の不動産への投資には、為替リスクやカントリーリスクも加わる為、より多くの資金が必要になります。

そんな中、海外不動産小口化商品が注目されています。
小口化商品と名前にあるように、少額から投資ができることが考えられますが、具体的な内容をご存じの方はあまりいらっしゃらないでしょう。

そこで、今回は海外不動産小口化商品のメリット・デメリットについて解説します。

 1. 海外不動産小口化商品の登場 

そもそも、海外不動産小口化商品とはどのようなものか解説します。

 (1) 不動産における小口化商品とは 
小口化商品とは、不動産会社が販売する、1万円から投資ができる不動産投資の商品のことです。

例えば、都心部の一等地の物件を個人で取得しようとした場合、莫大な資金が必要になります。この所有権を小口化することで、少額から投資することが可能になります。

大きな必要資金がネックとなり、不動産投資を始めることができないような方でも、少額から始めることができる点が、人気の要因です。

 (2) 法改正により海外不動産の小口化が可能に 
不動産特定共同事業法は、不動産ファンドの運用を規制する法律です。

2017年の不動産特定共同事業法の改正により、海外不動産を対象とした小口化商品も販売が可能になりました。
今まで、興味があっても全く手の届かなかった海外不動産への投資を少額から始めることが可能になりました。

 (3) REIT(リート)と違うの? 
REIT(リート)とは、Real Estate Investment Trustの略で、不動産投資信託のことです。日本では、J-REITが一般的です。

個人投資家の視点から考えると、少額から始めることが出来るという点において、似たように感じるかもしれません。

リートは、証券会社を通じて購入するため、より金融色が色濃い商品です。
様々な不動産の所有権が混ざっている金融商品というイメージを持っておきましょう。

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 2. 海外不動産小口化商品の3つのメリット 

では、海外不動産小口化商品のメリットを3つご紹介します。

 (1) 少額から開始が可能 
海外の不動産投資では、国内の不動産投資と同様に大きな資金が必要になります。
特に海外不動産投資向けの融資は、国内のものと比べても審査基準が高い為、ローンも組みにくくなり、より多くの資金が必要になる場合があります。

よって、少額から海外の不動産へ投資することが出来るため、まとまった資金がなく手を出せない方にも、選択肢の1つとして考えることが出来るようになります。

 (2) 手間が省ける 
海外の物件を取得しようとした場合、現地を訪れて実際に物件を確認したり、現地の不動産業者で契約手続きや資料準備をしなければならなかったりと、非常にパワーがかかります。

実際にその物件に住みたい。という場合は上記の流れは必ず必要になりますが、あくまで投資の対象として海外不動産を検討する場合には、できるだけ手間を省略したいものです。

不動産小口化商品は居住目的ではなく、資産の分散投資の対象として検討される場合が多いので、海外不動産への投資も手間なく始めることができます。

 (3) 資産の分散ができる 
資産運用において避けて通れないリスクが、「為替リスク」です。
為替リスクとは、日本円の価値が海外の通貨に対して変動することによって、日本円ベースの資産額が大きく変わってしまうリスクです。

例えば、最近「円安・ドル高」がニュースでよく問題として取り上げられますが、これは、ドルに対して円の価値が下がってきている相場です。
円の価値が下がってきているということは、輸入品を仕入れるコストが上がるため、海外からの輸入品の金額が上がります。
円安が進行すると、同じ額の円で買える商品やサービスは減少していきます。

この影響は、実生活だけでなく、資産運用においても重要なポイントです。
すべての資産を円で持つことは、このように大きなリスクとなります。

海外不動産を資産ポートフォリオの中に入れることで、為替リスクを分散させることに繋がります。

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 3. 海外不動産小口化商品の4つのデメリット 

投資にあたってはメリットばかりではなくデメリットも把握することが重要です。
では、海外不動産小口化商品投資へ投資をする際のデメリット関してご紹介します。

 (1) 住むことができない 
海外不動産小口化商品は、個人所有ではなく複数のオーナーで共同購入を行う商品です。
オーナーみんなで資金を出し合い物件を購入するイメージです。

その為、個人所有の物件と異なり、実際に物件に住むことができません。
あくまで投資対象は不動産ですが、証券や株式などの金融商品に似たものになります。

物件に資産性があるかの検討はもちろん必要ですが、将来セカンドライフとして海外に移住するなどの目的を対象としたものではないことを理解しておきましょう。

 (2) 売却することができない 
複数オーナーで所有する為、原則として投資対象の物件を売却することができません。
商品によって資産をどのように利確・損切りするかの制限が異なる為、注意が必要です。

不動産投資には、所有する不動産が値上がりしたタイミングで売却し、差益を得る「キャピタルゲイン」を得る投資法がありますが、海外不動産小口化商品はこのような投資目的を対象としていません。

 (3) カントリーリスク 
世界各国、その国固有のリスクがあります。
例えば、政権交代などによる法の改正や、経済状況悪化による通貨危機など様々なリスクが想定されます。

一般的にこのようなリスクが低いとされている先進国では、不動産投資に対する利回りも低くなる傾向にあります。
一方で高い利回りが期待できる発展途上国などの新興国では、政権や経済状況など不安定である可能性が高くなります。

海外不動産投資を検討される方は、日本の低リスク・低リターンの状況を避ける為に投資を考えられる方が多いです。
その為、どれぐらいのリターンを求めるのか自身の許容できるリスクはどの程度なのかをしっかりと把握しておく必要があります。

また、不動産投資は長期的視点が重要です。投資対象国の経済状況が今後どのように推移していくのか。政権の状況は今後どのように動きそうか。など将来を見据えた国の情勢の把握が必要になります。

 (4) 倒産における対策が曖昧 
国内の不動産小口化商品は、事業者が当試算した場合の対策が明確化されていますが、海外の不動産小口化商品では、制度が未熟な場合があります。

よって、実際に投資を行う前に事業者の信頼度や実績、将来性をしっかりと調査する必要があります。

現地の不動産情報に詳しい知人がいると大きくメリットとなりますので、不動産関連の人脈作りも重要なポイントとなります。
リスクを軽減するためにも強い味方を見つけましょう。

 4. 海外不動産小口化商品はこのような人におすすめ! 

今回は、海外不動産小口化商品について解説しました。
本日の内容から、海外不動産小口化商品はこのような人におすすめです。

・資産ポートフォリオの中に海外不動産を組み込みたい人
・所有資産が日本円のみの人
・海外不動産に興味はあるが、資金調達に難航している人

小口化商品は海外不動産投資の最初のハードルを大きく下げてくれる商品です。
ぜひ、少額から開始できる投資を検討してみましょう。

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荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

宅地建物取引士 / 1984年生まれ、東京都出身。
大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。
2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。

著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
   はじめての海外不動産投資