執筆者:荒木 杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

カンボジアは日本から近く、物価や税金の安さなどから移住先やビジネスの拠点として人気が高まっています。
一方、インターネットには「カンボジアには行かないほうがいい」といった意見もあり、カンボジア国内の治安状況は気になるのではないでしょうか。
今回は、カンボジアの治安に関する現在の状況をご紹介し、カンボジアで生活するうえで犯罪に遭遇しやすいシチュエーションや、発生事例の多い犯罪などを詳しく説明します。
カンボジアで犯罪に巻き込まれないためのポイントもご紹介しますので、ぜひ最後までお付き合いください。
周辺国と比較した場合のカンボジアの治安ランキング
まずは、カンボジアを含むアジア圏の「世界平和指数ランキング」をみてみましょう。
「世界平和指数ランキング」は各国の安全性や内紛の有無、軍事化の度合いなどを調査して数値化したものです。
カンボジア周辺各国の「世界平和指数ランキング」は、以下の通りです。
ランキング | 国名 | スコア | 前年比 |
---|---|---|---|
5位 | シンガポール | 1.339 | △3位上昇 |
10位 | マレーシア | 1.427 | △2位上昇 |
17位 | 日本 | 1.525 | ▼4位下降 |
41位 | ベトナム | 1.802 | ▼3位下降 |
48位 | インドネシア | 1.857 | ▼4位下降 |
49位 | ラオス | 1.861 | △1位上昇 |
71位 | カンボジア | 2.028 | ▼7位下降 |
76位 | タイ | 2.048 | △10位上昇 |
89位 | 中国 | 2.101 | ▼6位下降 |
93位 | バングラデシュ | 2.126 | ▼8位下降 |
104位 | フィリピン | 2.210 | △4位上昇 |
出典:World Invest「世界各国の治安・安全性ランキング」2025年4月10日
カンボジアの指数は調査対象168か国中71位と、それほど高い順位とはいいがたく、前年から7位下降しているのも気になる点です。
日本も下降を辿っていますが、カンボジアと日本では順位そのものに大きな開きがあると読み取れます。
外務省の「海外安全」は全土がレベル1
外務省が公表している世界各国の「海外安全ホームページ」では、カンボジアは全土が危険度レベル1にランク付けされています。
危険度レベル1は「十分に注意」を表しており、渡航自体は禁止されていないものの、危険な事態に遭遇する可能性が相対的に高いことを示します。
外務省がカンボジアで注意すべき点として挙げているのが、以下のようなものです。
- 銃火器を用いた犯罪
- 観光地における外国人をターゲットにした犯罪
- 交通事故の多発
- 特殊詐欺(闇バイト)にまつわる監禁・強制労働
外務省のホームページ内には、カンボジアの治安について「日本や他の東南アジア諸国と比較して、治安は決して良くありません」と記載があります。
カンボジアで特に注意したい5つのエリア
カンボジアの特定の地域は、ほかの地域より一層の注意が必要です。
ここでは、カンボジアで特に注意したいエリアを5つに分けて解説します。
繁華街| 外国人を狙ったひったくりや窃盗に要注意
外務省ホームページの記載にもあるように、プノンペンなどの繁華街では、外国人を狙ったひったくりやスリなどの窃盗が起こりやすい状況です。
一般的に、日本人や欧米人などはカンボジア人よりもかなり所得水準が高く、カンボジア人にとって非常に高額な現金や所持品が狙われやすい傾向にあります。
カンボジアの繁華街では観光客をターゲットにした犯罪が発生しやすいですが、国内在住の外国人が狙われるケースもあるので要注意です。
観光地| 外国人を対象としたぼったくりに要注意
カンボジアにはプノンペンのほか、アンコールワットで名高いシェムリアップや、風光明媚なリゾート地であるシアヌークビルの治安状況にも要注意です。
シェムリアップやシアヌークビルなど人気の観光地では、外国人旅行者を対象に法外な料金を請求するツアーが存在します。
外国人にフレンドリーに接してきて、物乞いをするといった行為にも注意が必要です。
タクシーなどの乗り物を利用する場合、メーターが付いていなかったり、高額な運賃を要求されたりする事例があります。
外国人旅行者だけでなく、カンボジアに在住中に観光地を訪れる場合にも同様の事例に注意しましょう。
夜間 | 場所を問わず常に注意が必要
カンボジアでは、夜間の外出や夜遊びの際はより注意が必要です。
プノンペンやシェムリアップなどの繁華街では、バーやナイトクラブなど夜遅くまで営業している店舗が多数あります。
夜の出歩きではアルコールが入る場合もあり、つい注意力が低下しがちですが、隙を狙ったスリなどの窃盗が発生しがちです。
旅行中だけでなく、カンボジア在住中も窃盗のターゲットにされる可能性があります。
東部・西部地域 | 地雷や不発弾による死傷事故が発生
カンボジアでは、内戦やベトナム戦争による地雷の埋没や米軍の爆撃による不発弾が多数残存しており、東部・西部を中心に死傷者が出ています。
政府やJICA・NPO法人などによって撤去作業は進められていますが、いまだに完全な撤去には至っていません。
該当する地点には立ち入り禁止を示す看板が立てられていますが、看板がない地点にも地雷や不発弾が埋まっている可能性があるので要注意です。
人や車が踏み入っていない道路や、農地・森林・空き地などにはむやみに接近しないように注意しましょう。
特に東部の幹線道路は、ベトナム戦争時に重要な攻撃目標として多数の爆弾が投下されており、道路に比較的近い場所であっても注意が必要です。
国境 | 国境線が曖昧な箇所あり
カンボジアには、タイやベトナムとの国境線に一部境界線が曖昧な箇所があります。
タイ・ベトナムと外交・軍事面で目立った緊張関係はみられませんが、不用意に立ち入ることで領土侵犯に該当する可能性があります。
国境付近に赴く際は、前もって状況を確認しておくことが重要です。
カンボジアでの犯罪発生件数自体は減少傾向
カンボジア内務省の発表によれば、2024年の犯罪発生件数は3,121件で、前年より11.1%減少したとのことです。
ただし、犯罪として統計されていない事例なども考えられるので、現地滞在中は十分な注意が必要な点は変わりません。
以下の表は、在カンボジア日本国大使館が公表した最近のカンボジアにおける犯罪発生件数の統計です。

上記のうち、日本人が遭遇した犯罪は、ひったくりが5件・窃盗が2件・昏睡強盗が1件です。


カンボジアで日本人も遭遇した犯罪事例7つ
カンボジアでは複数の犯罪が発生しており、日本人が巻き込まれた事例があります。
ここでは、カンボジア国内で発生し、日本人も遭遇した犯罪事例を7つご説明します。
ひったくり | カンボジアで最も発生件数が多い犯罪
ひったくりはカンボジアで最も発生件数の多い犯罪で、バッグやスマートフォンといった所持品を強引に奪い取る行為です。
犯行には機動力に優れ小回りも利きやすいバイクが用いられるケースが多く、歩行者やトゥクトゥクのドライバーなどが狙われがちです。
なかにはナイフで紐を切断したうえでバッグを強奪したり、力ずくで所持品を奪い取った際に被害者が転倒・負傷したりと、より悪質な事例もあります。
いかさま賭博 | 被害額が大きくなりやすい犯罪
いかさま賭博は、繁華街や観光地などでターゲットに親しげに話しかけ、犯行場所となる自宅などに招いたうえで行われやすい犯罪です。
犯人が複数人いることが多く、「日本の話を聞きたい」といった口実でターゲットを誘いこみ、カードゲームを持ちかけます。
「必勝法がある」などといかさまを吹き込み、別の犯人はわざとゲームに負け続け、最終ゲームで多額の現金を賭けるケースが多いです。
現金を用意するためにゲームが中断し、ATMで現金を引き出すように要求され、主に以下のようなパターンに分かれます。
- 現金を十分に用意できた場合:ゲーム再開までホテルやカフェなどで待つように指示されるが、その後に犯人は姿を現わさない
- 現金を十分に用意できない場合:「多額で売れる」と宝石や貴金属を購入させ、ゲーム再開までホテルやカフェなどで待つように指示されるが、その後に犯人は姿を現わさない
犯行時は有無をいわさない雰囲気でゲームが進行し、詐欺と気づいて途中で抜けようとしても、マフィア風の人物などにその場で所持品を押収されるケースもあります。
ゲーム中に多額のチップを賭けるために、被害額が数十万〜数百万と大きくなりやすいのが特徴です。
窃盗 | 観光地などでのスリが多発
スリなどの窃盗は、観光地や飲食店・ショッピングモールなどで発生しやすい犯罪で、以下のような事例が報告されています。
- 遺跡を観光中、すれ違いざまに財布を抜き取られた
- レストランで食事中、テーブルに置いていた携帯端末を持ち去られた
- ショッピングモールでの買い物中、リュックの口が開いており中身を奪われていた
- 徒歩での散策中、子どもたちにまとわりつかれ、気づくとショルダーバッグから財布を抜き取られていた
大人だけでなく、子どもが物乞い中などに所持品を盗み取るケースもあるので要注意です。
強盗 | 被害者への危険性が特に高い犯罪
強盗は被害者に直接的な暴力などを加えたうえで所持品を強奪する犯罪行為で、カンボジアでは以下のような事例があります。
- 市内を散策中、ポケットから携帯電話を抜き取られたので相手を追跡すると、ナイフを持った複数の男が現れて腕や脚を切りつけられたうえに現金を強奪された
- 夜間にプノンペンのリバーサイドを散策中、複数の男から暴行を受けて現金・一眼レフカメラ・パスポートなどの所持品を奪われた
- 深夜にカジノからバイクで移動中、追跡してきたバイクに乗った男に拳銃を突きつけられて現金を奪われた
ひったくり犯を追跡して自力で所持品を取り返そうとした結果、反撃されてケガを追う事例があるので要注意です。
カンボジアでは警察官の横流しなどによって拳銃が入手できることがあり、拳銃などの銃火器が犯罪に用いられる事例があります。
また、ターゲットに親しげに接近して食事に誘い、飲食物に睡眠薬などを混ぜて意識を奪ったうえで犯罪に及ぶといった昏睡強盗にも注意が必要です。
昏睡強盗は、金品や所持品の持ち去りのほか、わいせつ行為や強姦目的で行われるケースもあります。
空き巣 | ホテルなどの宿泊やアパートの低層階への居住時は要注意
カンボジアでは、アパートなどの低層階を狙った空き巣が発生しています。
簡素な構造で自由に第三者が出入りしやすい物件の低層階は、特に空き巣に狙われやすいので要注意です。
同様に、ホテルやゲストハウスなどの宿泊客を狙った空き巣も報告されています。
宿泊先に現金やクレジットカードなどを保管していた際、施設の従業員による空き巣が発生することもあるので注意が必要です。
カンボジアの平均年収は約1,200ドル(1ドル150円=18万円)といわれており、日本人の所得水準とは非常に大きな差があります。
日本人などの外国人が所持する現金やクレジットカードには、カンボジア人には大変な価値があり、巨額の財産を目前にして犯行に及ぶケースが考えられます。
特殊詐欺(闇バイト) | 甘い誘惑に潜む落とし穴
日本では2024年ごろに特殊詐欺(闇バイト)による犯罪が相次ぎ、社会問題となりました。
2024年10月7日には、カンボジアを拠点に特殊詐欺を行ったとして、10〜40代の日本人の男12人が逮捕されました。
男たちはSNSを介して特殊詐欺に加担し、警察官を装うなどして、電話に応対した女性から現金約200万円を騙し取った疑いが持たれています。
また2025年4月11日には、同居人に銀行員を装い電話口で資産状況を尋ねるというアポイントを示唆したとして、22歳の男が逮捕されました。
犯行として疑われている手口は、銀行員を装いタンス貯金の有無を尋ね、翌日以降に奪い取りに行くといったものです。
カンボジアの電話回線を用いた犯行と考えられており、男は同居人にカンボジアへの渡航を指示したものとされています。
いずれのケースも実行犯がカンボジアの電話回線から架電するという手口で、指示役が実行役を教唆して現地に渡航させるといった共通点が見受けられます。
横領 | カンボジア人従業員による金品持ち去りが発生
カンボジアで事業を営む際は、カンボジア人による横領に注意が必要です。
カンボジア人による金品の横領は複数の事業者が経験しており、荒木にも実例があります。
荒木は2010年代にカンボジアで起業しており、創業時から不動産管理を行っていましたが、当時の家賃は入居者を戸別訪問して集金するというアナログな形式でした。
当時、荒木は妊娠中で身重だったこともあり家賃の集金業務をカンボジア人社員に任せていましたが、当人が集めた家賃を持ち逃げしました。
被害額は約50〜60万円ですが、日本人とカンボジア人では経済水準に大きな差があり、当時の水準から円換算すると数千万円もの大金だったのではないでしょうか。
当人にもそれなりに高額の給与を支払っていましたが、巨額の現金を前に目がくらんでしまったものと思われます。
カンボジアでは第三者の外国人を狙った犯罪行為が多発傾向ですが、知人や従業員による横領にも注意が必要です。
カンボジアで危険を回避するための対策法11選
カンボジアでは日本人が犯罪被害を受けることがありますが、適切な行動を取ることで被害に遭うリスクを回避しやすくなります。
ここでは、カンボジアで危険を回避するための対策法をご紹介します。
渡航前に前もって情報をチェックする
外務省の「海外安全ホームページ」や、在カンボジア日本国大使館にはカンボジアの現在の治安に関する情報が公開されています。
具体的な犯罪事例なども記載されており、閲覧することで犯罪に遭いやすい状況をイメージしやすくなるでしょう。
また、カンボジア旅行者や移住者がSNSなどで自身の周辺で起きたトラブルについて言及していることもあります。
カンボジアに入国する際は、事前に公的機関からの情報やSNSなどで情報収集し、現地の状況を把握しておくのがベストです。
夜間・早朝の外出を避ける
夜間や早朝など、人通りの少ない時間帯は犯罪発生率が高くなり、犯罪に巻き込まれるリスクが上昇しやすいです。
強盗などの凶悪な犯罪に巻き込まれやすくなるため、夜間・早朝の不要な外出は避けるようにしましょう。
やむを得ず夜間や早朝に外出する際は、できるだけ単独行動を避け、タクシーや乗用車で移動するといった対策を心がけてください。
カンボジアの繁華街には活気があり、魅力的な店舗が多いですが、夜遊びで羽目を外しすぎないことも重要です。
貴重品は複数に分けて持ち歩く
カンボジアではバッグを複数用意するなどして、貴重品を分けて持ち歩くことをおすすめします。
1つのバッグにすべての貴重品を収納していると、バッグを奪われた際の被害が大きくなりやすいです。
貴重品を複数に分けて持ち歩くと、仮に1つのバッグを奪われても被害を低減できます。
現金を小分けにして持ち歩くといった対策法も有効です。
歩きスマホを控える
スマートフォンを操作しながら歩いていると、画面に意識が向いて周囲への注意が散漫になりがちです。
ひったくりやスリは相手の不意を突いて行われるため、歩きスマホをしているとターゲットに選ばれる可能性が高くなります。
また、高額で転売しやすいスマートフォンそのものを奪われるリスクも考えられます。
スマートフォンを使用する際は、周囲の安全を確認し、できるだけ静止した状態で操作するとよいでしょう。
地図アプリやナビを使用していると無防備になりやすいため、紙の地図を活用するほか、街中の移動には極力タクシー・乗用車などを用いるのがおすすめです。
バッグの持ち方に気をつける
カンボジアでは、犯人がバイクなどに乗った状態から、歩行者のバッグを奪い取るといったひったくりが多発傾向にあります。
バッグを片手に提げていたり、バッグを車道側に持って歩いていたりすると、ひったくりに遭遇しやすいので要注意です。
リュックなどを背負う場合も、背後に隙が生じやすいためスリに遭いやすくなります。
歩行中はバッグを身体の前側で持ち、すぐに開閉しやすい状態を保つことでひったくりやスリの被害を回避しやすくなります。
ホテルなどではセーフティボックスを活用する
カンボジアでは、ホテルなどの宿泊先で従業員による現金やクレジットカードといった貴重品の窃盗が発生する可能性があります。
貴重品を客室に置きっぱなしにしていると持ち去りやすいので、貴重品はセーフティボックスに保管するとよいでしょう。
セーフティボックスには取っ手付きで持ち運びに便利なタイプも出回っており、2,000円前後で購入できるものもあります。
同様に、ゲストハウスなどに複数人が宿泊する場合や、アパートの低層階で生活する場合もセーフティボックスの活用で盗難リスクを低減しやすいです。
派手な服装を避ける
カンボジアは先進国との経済格差が大きく、外国人や富裕層が身につけるブランド品は非常に価値の高いものと見なされやすいです。
カンボジア滞在中は、高級ブランドのバッグや時計・アクセサリーなどは極力持ち歩かないようにしましょう。
カンボジアは年間を通して気温が高いため、現地での服装は半袖シャツなどの薄着がメインになりますが、特に女性が露出の高い服装をするのは避けたほうがよいです。
ボディラインの出やすい服装は犯人の欲求を刺激し、性犯罪に巻き込まれるリスクが上昇しやすくなります。
また、遺跡を参拝する際、スカートの着用やサンダル履きなどのラフな格好は禁止されています。
初対面の相手には用心する
カンボジアでは、旅行者や渡航して間もない移住者が犯罪のターゲットに選ばれやすい傾向にあります。
犯人は、土地に不慣れなターゲットの不安や孤独感を敏感に察知して接近します。
見知らぬ土地での親切な人物には安心感や親近感を抱きやすいですが、ターゲットの警戒心を解くのが犯人の狙いです。
いかさま賭博や昏睡強盗は、フレンドリーな態度でターゲットを油断させたうえで行われる犯罪です。
初対面の人物から食事や特定の場所への移動といった誘いを受けても、すぐに応じないように注意しましょう。
日本人が犯行グループに加わっている可能性も考えられるので、「同じ日本人」という理由だけで即座に相手を信用しないことも重要です。
「うまい話」に乗らないようにする
近年は、SNSや知人などを経由して特殊詐欺(闇バイト)に加担させられる事例が増加傾向にあります。
「簡単に稼げる」「楽な仕事で高収入」「スマホ1台でOK」「人生を変えるチャンス」などといった誘い文句には安易に乗らないことが重要です。
最近は特殊詐欺(闇バイト)の拠点として、日本から状況を把握しづらい海外が選ばれる事例もあり、カンボジアを拠点とした犯罪も発生しました。
海外を拠点とした特殊詐欺(闇バイト)には、「海外ビジネスで飛躍」「憧れの移住生活を実現」といった誘い文句も考えられます。
特殊詐欺(闇バイト)は指示役と実行役に分かれているケースが多く、実行役はいわゆる「使い捨て」であることがほとんどです。
特殊詐欺(闇バイト)の実行役は強制的な労働環境下に置かれ、「逃亡(失敗)したら連帯責任」などと相互が厳しい監視関係になりやすく、抜けづらいのが特徴です。
強制的に犯罪を実行させられたとしても、教唆に応じて犯行に及んだことには変わりなく、犯罪に手を染めたという事実はその後の人生に深刻な悪影響を及ぼします。
「うまい話」などないと考え、甘い誘い文句に惑わされて人生を棒に振るような選択をしないように注意しましょう。
現地では丁寧な態度を心がける
カンボジアに滞在中は、トラブル防止のためにも現地で丁寧な態度を心がけるようにしましょう。
カンボジア人は親切でフレンドリーですが、プライドが高く侮辱的な態度や言動には強い反発を示す傾向があります。
人種や収入などをあげつらった差別的な行為はトラブルに発展しやすいため、くれぐれも避けてください。
カンボジアはポル・ポト政権による虐殺や内戦によって多数の犠牲者が出ており、約40年前の悲劇は未だに人々の心に残っています。
内戦の話をむやみに持ち出すのも、カンボジア人の国民感情を損なう可能性があるので、控えたほうがよいでしょう。
カンボジアには敬虔な仏教徒が多い国で、仏教の教えでは頭の上は神聖な場所と考えられており、他人の頭を撫でる行為は宗教上のタブーです。
頭を撫でる行為は、日本では相手への親愛と解釈されますが、カンボジアでは相手の尊厳を損なう行為であるため注意が必要です。
カンボジア人に金品を預けるのを慎重に検討する
カンボジアで事業をするうえでカンボジア人従業員に金品を預ける場合、慎重に検討したほうがよいでしょう。
カンボジアと日本の所得水準は大きく乖離しており、例えば100万円程度の資金であっても、カンボジア人の基準では約数千万円の価値を持ちえます。
荒木自身もカンボジア人社員に預けた現金を横領された経験があり、被害額は数十万円と比較的少額だったものの、信頼していた人物による横領には心理的なショックがありました。
同様に、カンボジア人の友人などに金品を貸す際も慎重になったほうがよいでしょう。
日本で数万円程度の金品が、平均的なカンボジア人にとっては数十〜数百万円の価値になることがあり、返ってこない可能性があります。
金品の貸借は人間関係のトラブルに発展しやすいため、注意が必要です。
被害に遭った場合は現地警察・日本国大使館に連絡
カンボジアで犯罪被害に遭った場合は、すぐに現地警察(電話番号117)に連絡しましょう。
現地警察に被害届を提出すると、被害届受理証明書(ポリスレポート)が発行され、パスポートの再発行や傷害保険の請求が可能になります。
現地警察では英語が通じないケースもあるので、必要に応じて通訳を手配します。
通訳は、在カンボジア日本国大使館を経由しての手配が可能です。
日本国大使館では日本語でのやり取りが可能で、詐欺被害や民事トラブルに応じて弁護士の手配もできます。
在カンボジア日本国大使館 | 023-217-161~4 | https://www.kh.emb-japan.go.jp/ |
在シェムリアップ日本国領事事務所 | 063-963-801~3 | https://www.kh.emb-japan.go.jp/itpr_ja/00_000091.html |
ただし、日本国大使館・領事事務所ともに土日は対応時間外なので要注意です。


カンボジアの生活で気をつけたいこと5選
カンボジアでは治安状況以外にも、生活面で注意すべき点があります。
ここではカンボジアで生活するうえでの注意点を5つご説明します。
食事 | 屋台やローカル食堂は衛生状態に注意
カンボジアで外食をする際、屋台やローカル食堂は数ドルで利用できるので経済的です。
ただし、屋台やローカル食堂は店内の衛生管理が徹底されていなかったり、料理が十分に加熱されていなかったりするので注意が必要です。
衛生面や雰囲気に抵抗がある場合は、一般的なレストランを利用するとよいでしょう。
市場では安く食品を購入できますが、カンボジアは気温が高く、食品によっては早く傷むので要注意です。
プノンペンは上水道の整備が進んでおり、飲用も可能なほど水質がきれいですが、体質に合わない場合はミネラルウォーターを利用するのが無難です。
カンボジアでは、ミネラルウォーターのサーバーが一般家庭にも広く普及しています。
生物 | 動物を介したデング熱や狂犬病に注意
カンボジアでは蚊がデング熱の媒介になりうるなど、危険な症状を人体にもたらす生物が複数存在します。
街中には野犬や放し飼いの犬が多く、狂犬病の感染源となるので要注意です。
狂犬病の初期症状には発熱や倦怠感などがあり、症状が進行すると昏睡や意識障害が生じ死に至る病気で、一般的に約1〜3ヶ月という潜伏期間があります。
狂犬病は病原菌を保有する生物の唾液などが人体に入り込むことで感染し、発症した場合の致死率はほぼ100%と非常に恐ろしい病気です。
狂犬病は犬のほかに、コウモリや馬などの哺乳類も媒介になります。
カンボジア渡航前に、デング熱や狂犬病などの予防接種を受けておくことが推奨されます。
現地で野犬に噛まれたり、特定の哺乳類によって負傷したりした場合は、速やかに医療機関を受診してください。
狂犬病は、24時間以内を目途にした早期のワクチン接種で発症をほぼ抑制できます。
医療 | 公的保険制度が整備されていないので注意
カンボジアには日本と異なり、国民皆保険制度が導入されていません。
ケガや病気で医療機関を受診する場合、受診料は基本的に全額自己負担となるため、医療費が高くなりやすいです。
先進国と比較すると医療設備が十分に整っておらず、大きなケガや病気で近隣国への移送が必要な場合、さらに医療費が高額になります。
強盗に遭遇するなどといった原因で負傷した場合も、医療費を自己負担しなくてはなりません。
カンボジア滞在中は、旅行傷害保険や民間の医療保険に加入して、万が一に備えておきましょう。
電気 | 停電が発生しやすいので注意
カンボジアは国内の送電網が十分に整備されておらず、停電が発生しがちです。
現代はビジネス・プライベートの両方で多くの電化製品を使うため、停電の発生が多いと不便を感じやすいです。
また、カンボジアでは必要電力の多くをタイやベトナムからの輸入に頼っており、輸入コストが加算されることで電気代が高くなりやすいです。
特に発電所から離れた都市部は、さらに送電コストもかさむため、より電気代が高くなりやすい傾向にあります。
交通 | 危険運転の多発に注意
カンボジアは交通ルールが浸透しきっておらず、危険な運転をするドライバーが多いので注意が必要です。
急な進路変更や割り込み・信号無視など自分本位な運転によって交通事故が多発しやすいです。
また、警察官が外国人をターゲットに運転違反を捏造し、不当に罰金を徴収するという行為が半ば公然と行われています。
カンボジアでは警察官の汚職などを政府が問題視しており、汚職や職権乱用に対する厳罰化が検討されています。
カンボジアで女性の一人暮らしは可能?
ここまで、カンボジアの治安について解説しましたが、カンボジアでは女性の一人暮らしは可能でしょうか。
結論から申し上げますと、カンボジアで女性が安全に一人で暮らすことは十分に可能です。
荒木自身、20代のころに会社の業務でカンボジアに赴任し、一人暮らしをしていましたが特に身の危険を感じるような事態には遭遇しませんでした。
ただし、一般的には女性のほうが男性より体格面で不利になりやすく、性犯罪を含む犯罪に遭いやすい傾向にあるのは確かです。
女性がカンボジアで安全に暮らしやすくなる対策法には、以下のようなものがあります。
- 夜間の外出は避ける
- 露出の高い服装は避ける
- アパートの低層階への入居は避ける
場合によっては、洗濯物に男性用の服を干すなど、複数人での生活をカムフラージュするといった対策法も有効です。
また、女性の一人暮らしでは、ある程度の高層階でセキュリティ性の高い物件を選ぶのがおすすめです。
カンボジアでは不動産や銀行口座開設に関するトラブルにも要注意
カンボジアに移住する際は、不動産契約や銀行口座に関する詐欺にも注意が必要です。
カンボジアの不動産仲介業者や管理会社は、不動産契約後の対応がいい加減で、入居者からの連絡にまともに応じない場合があります。
同様に、カンボジア国内銀行の口座開設をサポートする業者が複数存在しますが、口座開設後に連絡が取れなくなってしまうケースがあるので要注意です。
実際、弊社のお客様にも他社で不動産契約・銀行口座を開設したのちに音信が途絶え、トラブルを解決できずお困りになった方が複数いらっしゃいます。
特に個人ブローカーを介しての手続きは、アフターフォローにほぼ対応していないケースが多いので利用を控えたほうがいいでしょう。
カンボジアで不動産契約・銀行口座を開設するにあたっては、信頼できる仲介業者・管理会社を選ぶことが重要です。
カンボジアの管理会社については、こちらの記事で詳しく解説しています。
アンナアドバイザーズの不動産仲介・銀行口座開設はアフターフォローにも注力
弊社はカンボジアでの不動産仲介・銀行口座開設で多数の実績があり、移住者に向けたサービスも承っております。
弊社はプノンペン周辺の不動産仲介に特化しており、お客様のご要望に応じて豊富な選択肢から物件を仲介可能です。
東京・プノンペンにオフィスを設置することで、オフライン・オンラインでのご契約のほか、現地での仲介も可能です。
プノンペン在住スタッフが現地の情勢を絶えず把握しておりますので、安全性の高いエリアや高セキュリティ物件の選定もお任せください。
仲介に加えて管理業務にも注力しており、弊社の取り扱い物件に安心してお住まいいただけるほか、緊急時には現地日本人スタッフが対応いたします。
銀行口座開設については、開設時の必要書類を確認・提出代行させていただき、必要に応じて銀行員との面談には日本人スタッフによる通訳を承ります。
アフターフォローにも万全を期しており、銀行アプリの使用マニュアルの進呈や資産凍結トラブルなどにご対応可能です。
年に数回開催している銀行口座開設ツアーでは、期間中にスタッフによるサポートによって確実に銀行口座を開設できます。
まとめ
カンボジアでは、ひったくりや窃盗などの軽犯罪が多発しやすい傾向にあります。
カンボジアと日本の所得格差は大きく、カンボジア人にとって裕福な日本人を狙った犯罪が発生しやすいので注意が必要です。
カンボジア滞在中は持ち物や周囲に気を配り、深夜の繁華街など犯罪が発生しやすい場所や時間帯の外出を避けることで、犯罪に遭遇するリスクを緩和できます。
注意して生活すれば、女性の一人暮らしも十分に可能です。
移住にあたっては、居住物件のエリアやセキュリティ性なども考慮しておきましょう。
弊社では、カンボジア不動産の仲介・管理や銀行口座開設を承っております。
アフターフォローにも注力しておりますので、カンボジア移住の際は、ぜひ弊社にご相談ください。




荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
代表取締役 / 宅地建物取引士 / 宅地建物取引業 東京都知事免許(2)第99967号
所属団体:一般社団法人RE AGENT 理事長 / 一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC) / 公益社団法人全日本不動産協会
1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。
著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
はじめての海外不動産投資