近年注目を浴びている海外不動産投資。物件を取り扱う業者も増え、日本に住みながら海外の不動産へ資本を投資できる環境が整ってきております。
とはいえ投資先も様々であることから、国や物件の選定に迷われる方も多いことでしょう。
そこで今回は、海外不動産投資の観点から、投資先となる国の特徴をメリット・デメリットに分けて解説します。
海外不動産投資に興味がある方、投資先の選定に迷われている方はぜひご参照ください。
1. 国別に特徴を解説!海外不動産投資の対象国は?
前提として、海外不動産に投資をするにあたって抑えておくべきポイントがあります。代表的な3つを挙げると
・法制度
・融資
・通貨
これらは必ず抑えるべきポイントです。
法制度は各国様々ですし、特に外国人に対するルールはより複雑なものとなります。
また、融資に関しても国内の銀行を利用するか、現地の銀行を利用するか様々です。
国内の銀行でも、投資先のエリアが決まっているものがあります。現地の銀行でも国によっては外国人の開設や送金に制限がありますので確認が必要です。
通貨も各国異なる場合があり、為替の変動リスクも経済状況から予測しなければなりません。
このように海外不動産投資には注意するポイントも多く、様々な知識が必要ですが、その中でもメインで投資先として挙がるのが、東南アジアや欧米です。
よって、今回は東南アジアや欧米から複数国ピックアップしメリットやデメリットをご紹介します。
(1) 東南アジア
近年成長凄まじい東南アジア各国は海外不動産の投資先として検討される方々が多いエリアです。
なぜなら、その高い経済成長率や人口増加率からキャピタルゲイン・インカムゲイン共に高い収益が見込めるからです。
その中でも代表的な5カ国をピックアップしご紹介致します。
① フィリピン
【メリット】
フィリピンの不動産投資において特にメリットと考えられているのは、高い人口増加率による将来性です。
不動産投資では将来性を判断する為に、年齢の中央値も大事な指標となります。
フィリピンのは2018年時点で28.7歳であり、中央値が40歳を超える日本と比較しても高い将来性が見込まれることがわかります。
また、都市部の人口密度の高さもメリットとして考えられます。
なぜなら、人口密度の高さは賃貸需要に直結する為、高い収益性が見込めるからです。
周辺の東南アジア諸国と比較しても高い人口密度を誇り、日本を上回る人口の集中がありますので、高い賃貸の需要が見込めます。
【デメリット】
デメリットとしては、施工の頓挫のリスクがある点です。
フィリピンでも他の途上国と同様プレビルドでの不動産投資が一般的である為、客付き次第では物件が完成しないというリスクがあります。
また、物件が完成したにも関わらず賃貸に出せるようなクオリティに仕上がっていない物件も散見されますので、信頼のおける不動産会社の選定が必須です。
物件の取り扱い実績や日本人への対応の実績のある会社を入念に選定する必要があります。
② タイ
続きまして。タイについて見てみましょう。
【メリット】
タイを投資先に検討するにあたって最も心強いのは、現地の日本人の多さでしょう。
在留邦人数が非常に高いので、現地で不動産業を営む日本人も多いです。よって、海外不動産投資においてネックとなる、価値観や言葉の違いから起きるリスクを軽減できる点は、大きなメリットと考えられます。
日本に居ながら現地とコミュニケーションを取れやすいので投資先として大変オススメです!
【デメリット】
一方、首都バンコクの物価の上昇が既に進行していることがデメリットとして考えられます。
人口密度や賃貸需要から考えると、投資エリアはバンコクがメインとなります。
バンコクでは不動産価格も既に高くなっており、海外不動産投資で大きなメリットとなる。「利回り」が低い点が気になります。
現地の不動産業者から、良い情報をいち早く入手できる関係性づくりが重要でしょう。
③ カンボジア
3つ目はカンボジアです。
【メリット】
カンボジアは人口増加率、経済成長率ともに高い水準で推移しており、その高い将来性が注目を浴びています。
また、現地では「米国ドル」がメインで流通しており、家賃収入もドルで得ることができる点も大きな利点と考えられます。
現地の銀行は、定期預金の金利も4〜6%と、日本の数千倍にもなる為、家賃収入をそのまま運用できることも検討できるでしょう。
【デメリット】
カンボジアでは、外国人の土地の取得が法律で禁じられております。
その為、投資対象は2階以上のコンドミニアムに限定されています。都市部のコンドミニアムは富裕層や外国人向けに設定されているものが多く、そもそも高い価格が設定されている為、利回りが見込めにくいというデメリットがあります。
また、法整備も未熟な点が多く、内戦後所有者が曖昧になっている土地も散見されますので、注意が必要です。信頼のおける不動産業者の選定が重要になります。
④ ベトナム
4つ目はベトナムです。
【メリット】
ベトナムの物件は東南アジア周辺諸国と比較しても現状は安価です。首都ホーチミンの物件価格はバンコクやシンガポールなどと比較しても低い設定になっています。
また、経済もかなり上向きであり、物流関連企業を中心に、海外企業の進出が相次いでいます。年齢の中央値も2020年時点で、32.49歳と今後も生産年齢人口の高い増加が予測されています。
よって、インカムゲイン・キャピタルゲインともに高い利回りに期待できるエリアです。
【デメリット】
デメリットとしては、海外への送金の規制です。手続きが非常に煩雑であり、納税証明書が必要であったり、銀行によって対応が異なったりと高い壁があるのが現状です。
また、ベトナムは社会主義国家ですので、急な法改正が行われるリスクも考えなければいけません。特に自国民を最優先に急なルールの変更がある可能性がありますので、外国人の不動産購入に関しても障壁が生まれてくる可能性があります。
⑤ マレーシア
最後はマレーシアです。
【メリット】
マレーシアは既に大きく経済成長を遂げてきている国であり、国民所得の水準も周辺諸国と比較して高いです。東南アジアの中でもいち早く様々な経済対策を打ち、高い経済成長率と人口増加率を続けています。
東南アジアの中では先進国と呼んでも過言では無い中で、首都クアラルンプールの物件は比較的安価である点も魅力的です。バンコクやマニラよりも安い価格で取得できる物件もあります。
【デメリット】
高い経済成長を遂げてきているマレーシアですが、物件価格が2020年頃から下落している点が気になります。2020年頃までの10年間で物件価格は約2倍にも上昇しましたが、供給過多であったのか、少々勢いが衰えています。
ただ、将来性に高い期待が持てる国であることは間違いないので、今が買い時である。という見方もできます。現地の不動産業者からの情報収集が重要でしょう。
(2) 欧米
欧米諸国の不動産市場も投資の対象として考えられます。
法整備も整っており、通貨の信頼性も高い先進国への投資は、将来性の高い途上国への投資とはまた違ったニュアンスを持ちます。
資本の分散という意味で、リスクヘッジになる投資とも考えられます。
今回はアメリカとイギリスをピックアップしご紹介します。
① アメリカ
まずはアメリカについて解説します。
【メリット】
世界第一位の経済大国であり、アメリカドルは基軸通貨で最も信頼のおける通貨です。
先進国でありながら、人口増加率や経済成長率も高い基準で推移しております。
よって、今後の需要の拡大も見込める市場であることから、インカムゲインだけでなくキャピタルゲインも見込める点が大きなメリットです。
アメリカの不動産市場は法整備も整っており、外国人にも市場が開かれている為、カントリーリスクは低いと言えます。
【デメリット】
アメリカに限った話ではありませんが、言語や時差の問題はデメリットとして考えられます。
公用語である英語は世界で最もメジャーでありますが、苦手な方にはストレスになり得るポイントです。また、時差もかなりありますので物件管理においてコミュニケーションにラグが生まれてしまう点も気をつけましょう。
② イギリス
続きまして、イギリスについて見てみましょう。
【メリット】
イギリスも、他の先進国と同様法整備が整っており、外国人に対して市場が開かれています。不動産取引にはソリスターという弁護士が介入する為、大きなトラブルを防ぐことができます。
また、イギリスの不動産投資では留学生向けの「学生寮」への投資も検討できます。イギリスの大学は留学生の受け入れが多く、学生の賃貸需要も高いです。
学生は家賃などを低価格で抑えたいので、比較的狭い物件でも入居の可能性があります。その為、安価な価格から投資を始めることができる利点もあります。
【デメリット】
一方で、この整った法整備により物件購入が煩雑になってしまうデメリットもあります。提出する書類も多く、物件の取得にも比較的長い時間がかかってしまいます。
スタートにあたっての時間や煩わしさが障壁として降り掛かってきます。
2. 海外不動産投資はこのような方にオススメ
(1) キャッシュが豊富な方
海外不動産投資では、現地で流通する通貨で取引を行います。
その為、キャッシュを多くお持ちの方は、通貨のリスク分散という観点から海外不動産投資を検討されてみても良いでしょう。
日本は少子高齢化社会で人口も伸び悩んでいます。より利回りを期待できる海外不動産に資本を分散し、運用することで効率の良い資産の運用ができます。
(2) ある程度のリスクを取れる方
ご紹介した通り、海外不動産投資は高い利回りが見込める反面、リスクも伴います。
余剰資金があり、ある程度のリスクを許容できる方は、検討されても良いでしょう。
資産ポートフォリオの中で、もう少し利回りを求めていきたいという方は積極に考えられても良いかと思います。
(3) 現地の言語が堪能な方
言語の壁は、海外不動産投資においてどうしても避けては通れないポイントです。
一方で現地の言葉が堪能な方は、それだけで大きなメリットと言えます。
交渉や契約の詳細の確認など、言語が流暢なだけで取引でも有利ですし、契約の際のリスクも避けられるという利点があります。
日本国内だけでなく海外を積極的に投資の対象として検討していきましょう。
3. 各国の特徴を理解し選定しよう
今回は、海外不動産投資における各国のメリット・デメリットをご紹介しました。
解説した通り、各国の不動産市場はリスクもある反面、大きな収益性も期待できます。
国によって検討できる投資スタイルなど様々ですので、本日ご紹介した内容をもとに海外不動産への投資を検討してみましょう。
荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
代表取締役 / 宅地建物取引士 / 宅地建物取引業 東京都知事免許(2)第99967号
所属団体:一般社団法人RE AGENT 理事長 / 一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC) / 公益社団法人全日本不動産協会
1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。
著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
はじめての海外不動産投資