不動産STOを徹底解説!ポテンシャルや活用事例を紹介

執筆者:荒木 杏奈

アンナアドバイザーズ株式会社

2022/05/30

不動産STOが注目を浴びています。不動産STOとはブロックチェーンシステムを利用して不動産をデジタル証券化し、株式のように売買ができるようになる仕組みです。

政府もSTOに関する法整備を進めている段階であり、今後もSTOは発展していく可能性が非常に高い市場です。

特にブロックチェーン技術の不動産業界への応用は従来から注目を浴びてきている為、STOの知識を持つことは今後不動産投資を行う中で重要なものとなります。

今回は、STOの基礎知識とその活用事例をご紹介します。STOに興味のある方や、不動産投資にどのような影響を与えるか知りたい方はぜひご参照ください。

 1. STOの基礎知識 

 (1) STOとは? 
STOとは(Security Token Offering)の略語です。セキュリティトークンとは、ブロックチェーン技術によってデジタル化された有価証券のことです。

ブロックチェーンは分散型台帳とも呼ばれており、公正かつ正確に取引履歴を記録できる仕組みです。ハッキングや不正アクセスが事実上不可能になります。
このセキュリティトークンを利用して資金調達を行うことをSTOと呼びます。

つまり、投資物件に対する契約書類や、取引履歴などのデータを全てブロックチェーンシステムで管理することで安全性が保たれます

 (2) STOの仕組み 
STOでは投資物件に出資を行うことでセキュリティトークンを受け取ります。このSTを受け取ることで、従来の不動産投資と同じように売買や管理ができます。

従来の不動産では、不動産権利の売買や物件の取得へ仲介業者を挟んで行うことが一般的ですが、このSTOの導入でコストを大きく削減できるというメリットがあります。

不動産の所有権がオープンかつ正確にブロックチェーン上に記録されるため、信頼性の高い取引が可能になります。

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 2. 不動産市場への活用・STOを活用するメリット 

ここまで、STOに関して基礎知識を解説しましたが、実際に不動産市場へ活用することでどのような変化が生まれるのかを解説します。

STOを導入することで不動産取引においてもさまざまなメリットが考えられます。
主なメリットとして4点考えられます。

 (1) 非可逆的記録による安全性 
ブロックチェーンシステムは非可逆的な記録。つまり過去に遡って記録を改ざんすることが出来ないという特性を持ち合わせています。

STOを不動産取引へ取り入れることで、取引履歴がブロックチェーンによって高いセキュリティが保たれます。よって安全性が担保されます。

ここでポイントとなるのは、取引履歴がオープンである為、所有者の個人情報などはどのようにして守られるのか?という点ですが、2020年5月に政府は金融商品取引法を改正し、日本STO協会から投資家のプライバシーを保護する法制が整ってきております。

STO導入で、高い安全性をもたらすことが出来ます。

 (2) 即時決済が可能 
従来の不動産取引では、書類の準備や手続きで売買から決済において数日のタイムラグが生まれてしまいますが、STOの導入で24時間リアルタイムでの取引が可能になります。

取引記録がブロックチェーン上に記録されることで、技術的にはいつでも有価証券化された不動産所有権の売買が可能になります。

何かと時間を要する不動産取引において、その流動性を高めてくれる大きなメリットがあると考えられています。

 (3) 利便性の向上とコスト削減 
セキュリティトークンの導入で、今まで必要であった不動産取引の書類や手続きを簡素化できるため、時間やコストを大きく削減することが出来ます。

また、STはプログラム化することで、家賃収入の受け取りや売買を自動化することが可能と考えられています。

よって、大変利便性が向上し、時間や費用を抑えることができる利点があります。

 (4) 所有権の小口化 
STOの導入で、非常に高価な不動産の所有権を小口化して分割できるようになります。

従来、非常に高額な不動産の所有権を分割することは、手続きや管理の兼ね合いからコストがかなりかかる為、実施されることはほとんどありませんでした。
ただ、STOの導入で多くの人へ所有権を分割できるようになります。

不動産投資は基本的に多額の資金がかかりますが、小口化することで少額から投資を開始できるようになります。よって、より多くの投資家から資本を集めることが出来ますし、不動産市場も活発になっていくでしょう。

個人では検討できないような不動産も、所有権が分割されることでその一部の管理者になることが出来ます。非常に魅力的な仕組みです。

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 3 .実際の活用事例 

アメリカやイギリス、フランスなど海外ではすでにSTOの不動産事業への導入が多く見られます。

例えば、アメリカでは大手クラウドファンディング会社(indiegogo)とSTOのプラットフォームを提供するTEMPLUMによるホテルへのSTOにて約20億円の資金調達を完了しています。

日本においては、STOの不動産市場への活用は未だ始まったばかりで今後が期待されていますが、すでに実施されたSTOの活用事例をご紹介いたします。

 (1) 三井物産DAの個人投資家向けの公募事例 
三井物産DA(デジタルアセットマネジメント)は、2020年4月からSTOを活用した個人投資家向けの金融商品を販売しております。

対象となるのは六甲アイランドDCの信託受託権の一部です。大手外食チェーンの物流拠点でもあり、自動立体倉庫システムを導入した最新鋭のDC(ディストリビューションセンター)です。
この物流倉庫の信託受託権をデジタル証券化し、投資家からの資金を募っております。
販売は、SBI証券です。

取得予定価格は約7億円であり、投資金額は最低50万円からとのことです。運用期間は5年を予定し、投資家は投資金額に基づいた賃料を収入が配当されるとのことです。

三井物産DAは、この実証ファンドを契機として、運用業務の効率化や資金調達手段をセキュリティトークンを用いて推進していくことを宣言しています。
今後3年での運用資産残高を1,000億円規模まで成長させることが目標とのことです。

国内大手三大商社の一つ、三井物産のグループ会社もSTOの将来性に投資し、今後も大規模な事業展開を計画しています。
今後さらに事業を展開していく企業も増えていくことが予想できる為、これらの事業の動向は常にチェックしておきましょう。

※出典元:三井物産デジタルアセットマネジメントHP

 (2) ケネディクス・リアルティ・トークン渋谷神南 
こちらは、ケネディクスが提供する、渋谷駅から徒歩8分の好立地築浅物件へのSTO導入事例です。販売会社は野村證券株式会社、SBI証券です。

都内の好立地のレジデンスである為、不動産価格も高く、従来の不動産投資で考えると高額な資金を調達する必要があります。
従来、このような23区内の好立地築浅物件は、豊富な資産やキャッシュを所有している人でなければ中々手を出しにくい状況でした。

しかし、このSTOの導入で一口100万円から投資を開始することが出来ますので、よりターゲットが広がったと考えられるでしょう。
資産価値の高い好立地の物件が小口化されることで、投資家に間口が広がることは非常に魅力的です。

※出典元:ケネディクス・リアリティトークン渋谷神南(譲渡制限付)

 4. STOのポテンシャルは非常に高い 

今回は、STOのシステムの基礎知識と不動産市場への活用事例。実際に導入された事例についてご紹介致しました。

STOは今後発展していく可能性が非常に高いです。かなり高いポテンシャルを秘めている為、更に不動産市場への導入が進んでいくでしょう。

通常高額な資金が必要となる不動産投資において、少額から始めることが出来たり、リアルタイムで所有権の譲渡が出来ることは革新的です。

STO関連の情報を常に仕入れ、今後の動向をチェックしていきましょう。

執筆者:荒木 杏奈

アンナアドバイザーズ株式会社

日本とカンボジアを拠点に、国内・海外不動産業を展開。

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荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

宅地建物取引士 / 1984年生まれ、東京都出身。
大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。
2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。

著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
   はじめての海外不動産投資