執筆者:荒木 杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
親日国であり、日本人の移住者が多いことで有名なタイですが、不動産投資先としても多くの魅力があることをご存じでしょうか?
この記事では、タイ不動産投資のメリット・デメリットやおすすめのエリアなどについて、詳しく解説します。
これからタイ不動産投資を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
タイは日本人移住している国第4位
タイは「日本人移住者が多い国ランキング」でアメリカ・中国・オーストラリアに次いで第4位の国であり、78,000人程度の日本人がタイに住んでいます。
そのため、日本人向けの賃貸物件の需要が安定しており、不動産投資が向いている国といえます。
タイ不動産の価格推移はどうなる?
タイの首都バンコクのコンドミニアムの価格指数の推移は、右肩上がりです。
この10年間で2倍近く高騰しており、2020年のコロナショックで世界中の経済指標が大きく下落した際にも、堅調に推移しています。
2024年以降も、大手デベロッパーなどによる再開発事業が相次ぐバンコクの不動産価格は、今後も上昇する見通しです。
タイ不動産投資するメリット
タイ不動産投資のメリットを4つ紹介します。
インカムゲイン・キャピタルゲインとも狙える
タイ不動産投資では、インカムゲイン(家賃収入)とキャピタルゲイン(売却益)の両方が期待できます。
インカムゲインについては、経済成長によりタイ国内で中間所得層が増加していることと、日本人の移住者や駐在員向けの賃貸需要が見込めることがプラスに働きます。
また近年、日本と比較してタイの不動産価格の上昇幅が大きいことから、キャピタルゲインも狙いやすいといえるでしょう。
少額からの投資ができる
タイでは、外国人が不動産購入する際の最低価格が定められていないため、少額でも投資ができます。
例えばマレーシアの場合、外国人は100万リンギット(日本円で約3,000万円)以下の物件を購入できないように決められていますが、タイではそういった規制はありません。
そのため、手の届きやすい価格帯の物件も購入することができます。
日本より税金が安い
タイ不動産投資は、不動産に関する税金が安いことも大きな魅力のひとつです。
タイでは賃貸収入に対して税金がかかりません。
加えて、法改正により2020年から固定資産税が90%も引き下げられており、税金の面でも不動産投資がしやすい国だといえます。
鉄道網の建設より新しい駅周辺の賃貸需要が期待できる
タイの首都であるバンコク近郊では現在、都心部の渋滞緩和を目的として、鉄道網を拡大させる工事が進められています。
高架鉄道「BTS」や地下鉄「MRT」などの路線拡張により、複数の駅が増設される予定で、その周辺では特に住宅需要の増加が期待できるでしょう。
タイ不動産投資するデメリット
タイ不動産投資のデメリットを5つ紹介します。
為替変動の影響を受けるリスクがある
タイに限らず、海外不動産投資をする上で考慮すべきなのが、為替変動によるリスクです。
購入時よりも円高になっていた場合など、売却時のタイミングによっては為替差損が出る可能性があります。
現地の情報量が少ない
タイの不動産投資には、不動産市場や現地情報の収集がしにくい側面があります。
理由は、情報量が多い日本国内や先進国などと比べて、タイの情報はまだそれほど多くないためです。
そのため不動産売買をする際は、現地に精通した不動産業者が重要な情報源になります。
不動産投資に関する詐欺が多い
タイ不動産投資では、相場より高い金額で資産価値の低い物件を購入させられるなど、詐欺行為が横行しているのも事実です。
そのため、不動産会社やエージェント選びは慎重に行う必要があります。
融資が難しく現金で購入する必要がある
タイの不動産は、融資を受けずに自己資金のみで購入する必要があります。
その理由は、新興国への不動産投資を、融資の対象外としている金融機関がほとんどだからです。
仮に融資が受けられたとしても融資金額が少ないため、どのみち不動産購入の費用の大半を、現金で用意することになるでしょう。
ディベロッパーが倒産するリスクがある
タイ不動産投資では、ディベロッパーが倒産して物件が手に入らないリスクがあります。
タイで新築の物件を購入する際は、建物が完成する前に購入を決める「プレビルド方式」が一般的です。
そのため建設途中でディベロッパーが倒産した場合、物件が完成せず、先に支払った購入資金も返ってこないという事態になる可能性があります。
タイ不動産投資でおすすめしたいエリア3つ
タイの中で、不動産投資におすすめのエリアを3つ紹介します。
首都「バンコク」
近年、国際都市へと発展しているタイの首都バンコクは、経済の中心地であり利便性が良く、不動産投資対象としても大人気の都市です。
物件数が多く、タイの中でも比較的情報が得やすいエリアなので、初めてタイで不動産取引をする人にもうってつけでしょう。
人気のリゾート地「パタヤ」
高級ホテルが立ち並ぶ「パタヤビーチ」で有名なパタヤは、年間400万人の外国人観光客が訪れるリゾート地でありながら、バンコクに次ぐ「第2の都市」としての顔も持っています。
鉄道路線の拡充により新駅の増設が予定され、それに伴って大規模な不動産開発も計画されている、これから注目したいエリアです。
日本人街「シラチャ」
シラチャは世界有数の日本人街として知られているエリアです。
小規模な街ですが、大手の日本企業が多数進出しており、日本人の賃貸需要が安定して見込める点が大きな魅力です。
タイ不動産投資する時の注意点
タイ不動産投資をする時の注意点として、以下の3つが挙げられます。
不動産を購入後の管理は自分でする必要がある
タイで不動産購入した場合、購入後の管理を自分で対応することになる可能性が高いです。
タイでは「物件所有者が自主管理するのが当たり前」という風潮があるため、管理会社自体が少なく、あっても日本のような手厚いサービスは期待できないのが現状です。
タイ不動産投資をする際は、現地に管理会社があるかどうか、ある場合はどこまでサポートしてもらえるのか、購入前に調査しておいた方がよいでしょう。
人気エリアの供給過多による価格下落に注意が必要
人気のエリアであっても、物件数が入居希望者数を上回ることで、供給過多に陥るケースもあります。
供給過多の状態が続くと、不動産価格の下落につながります。
タイ不動産投資をする際は、事前に不動産市場の動向や成約件数などをリサーチしたうえで、物件を選ぶことが非常に大切です。
建物は日本のような耐震構造ではない
タイは比較的地震が少ない国であるため、日本のような耐震基準がなく、建物も耐震構造になっていないことがほとんどです。
建物の構造や内装について、あらかじめエージェントに確認しておくなどして、安心できる物件を購入できるよう努めましょう。
タイ不動産投資で実際にあった失敗例
タイ不動産投資で実際にあった失敗事例を3つ、紹介します。
購入した物件に入居者がつかなかった
「人気エリアだからすぐ入居者が決まる」というブローカーの言葉を信じてタイの不動産を購入したところ、まったく借り手がつかなかったケースです。
調べてみると、その不動産の周辺は新築の高級コンドミニアムが多数建てられており、供給過多に陥っているエリアだったのです。
結局家賃を下げることで、なんとか借り手を見つけることができましたが、オーナーは「事前に現地の状況や賃料相場について調べておけばよかった」と反省したそうです。
相場より高い価格で購入させられた
不動産仲介会社に「今買わないともっと高い物件価格になる」と急かされて購入した物件が、実は相場よりも高く買わされていたケースです。
購入後、賃貸に出すために家賃相場を確認した際、想定よりも利回りが低くなったことで気づいたそうです。
タイで不動産購入する際は、不動産会社に急かされても、まず自分で周辺の物件価格をチェックしてから検討するようにしましょう。
不動産が手に入らずお金を持ち逃げされた
プレビルド方式の物件を購入した結果、建物が完成しなかったケースです。
不動産の開発プロジェクトが突然中止になり、さらに物件を販売した会社も音信不通になったため、先に支払っていた購入費用も戻ってこなかったそうです。
プレビルド方式の物件購入は、難易度が高くトラブルも多いため、不安な方は中古物件に絞って検討した方が良いかもしれません。
タイ不動産投資をおすすめしたい人
タイ不動産投資は、以下に当てはまる方には特におすすめです。
- 日本人の多いエリアで海外不動産投資をしたい
- 手の届きやすい価格帯の物件を購入したい
- インカムゲインとキャピタルゲインの両方を狙いたい
- 物件の購入価格を自己資金でまかなえる
東南アジアのカンボジア不動産投資との違いは?
同じ東南アジアであるタイとカンボジアの、不動産投資の違いについてまとめました。
GDP成長率の見通し
タイの今後のGDP成長率(経済成長率)の見通しは、2023年に2.7%、2024年に3.2%上昇すると予想されています。
一方、カンボジアのGDP成長率は、2023年に5.5%、2024年に6.1%上昇する見通しです。
(※共に2023年12月時点の予想値)
経済的に安定しているのはタイですが、不動産投資でよりキャピタルゲインを狙いたい場合は、カンボジアの方が向いているといえます。
不動産投資に使われる通貨
タイで不動産投資をする場合、自国通貨の「バーツ」を使用します。
しかしカンボジアは自国通貨である「リエル」の信用力が低いため、米ドルを使って不動産投資をすることが可能です。
米ドル建ての資産に魅力を感じる人には、カンボジア不動産投資をオススメします。
開発するデベロッパー
タイはASEAN諸国の中では比較的不動産市場の整備が進んでおり、国内で上場しているような大手デベロッパーが開発している不動産も多く存在します。
反対にカンボジアは上場している国内のデベロッパーがなく、中国や日本といった外資企業が不動産開発を進めているケースが多いです。
そのためカンボジアで不動産投資をする際は、背景のわかりやすい日系企業の開発した不動産を選ぶなど、タイよりも慎重な物件選びが必要です。
まとめ
今回は、タイ不動産投資のメリットやデメリット、おすすめのエリアなどを詳しく解説しました。
タイの不動産市場は比較的整備されている上、日本人の賃貸需要を見込めるエリアもあるため、東南アジアの中では投資がしやすい国といえるでしょう。
ただし、外国人投資家を狙った詐欺や、プレビルド方式のリスクには十分注意する必要があります。
タイ不動産投資を始める際には、いくつかの不動産業者に問い合わせてみるなど、慎重に検討することが大切です。
荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
代表取締役 / 宅地建物取引士 / 宅地建物取引業 東京都知事免許(2)第99967号
所属団体:一般社団法人RE AGENT 理事長 / 一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC) / 公益社団法人全日本不動産協会
1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。
著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
はじめての海外不動産投資