執筆者:荒木 杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
海外の不動産が魅力的な投資先として注目を集めています。
これは、日本の経済成長率の鈍化や少子高齢化社会の進行などにより、海外に魅力を感じる方が多いからです。
人口の増加や経済成長の中にある国に不動産投資をし、成功すると多くの回収が見込めます。
しかし、海外での投資は文化の違いや言葉など、壁が多く存在します。
メリットとデメリットをしっかり確認しましょう。今回は海外不動産での失敗例も含めてご紹介します。
海外不動産投資が注目されている理由
海外不動産投資が人気な理由はいくつかあります。
- ポートフォリオの多様性
海外不動産投資は、個人や投資家にとって、ポートフォリオの多様性を追求する手段として魅力的です。
不動産は他の資産クラスとは異なる動きを示すことがあり、国際的な不動産投資を組み込むことでリスクを分散できます。 - 収益性
一部の国や地域では、不動産投資が比較的高い利回りをもたらすことがあります。これは、賃貸収入やキャピタルゲイン(資産の価値の増加)を通じて得られる収益に関連しています。
一部の市場では、高い家賃や不動産価格の上昇が期待され、収益性が高いとされています。 - 通貨の多様性
海外不動産投資は、異なる通貨を持つ国に投資することを含むため、外国為替市場で通貨リスクを管理する手段としても利用できます。通貨の価値変動を利用して利益を上げることができる可能性があります。 - 地政学的リスクの分散
地政学的なリスク(政治的な不安定性や規制の変更など)は、不動産投資に影響を及ぼす可能性があります。異なる国や地域に投資することで、これらのリスクを分散し、リスクを管理できる可能性が高まります。 - 移住や退職計画
一部の人々は、海外不動産を購入し、将来の退職先や第二の住居として活用するために投資を行います。
また、一部の人々は海外での移住を検討し、不動産を取得することでビザの取得などの法的手続きを容易にする場合もあります。 - 観光地としての価値
海外の一流リゾート地や観光地に不動産を所有することは、自身で利用するだけでなく、不動産を観光地として貸し出すことで収益を上げる機会を提供します。 - 税制度のメリット
一部の国や地域では、外国人に対する不動産に関連する税制度の優遇措置が存在し、投資家にとって魅力的な税制度を提供しています。
ただし、海外不動産投資にはリスクが伴うことに留意する必要があります。
異なる国や地域に投資する場合、現地の法律や規制、市場の特性をよく理解し、専門家の助言を受けることが重要です。
また、通貨リスクや地政学的リスクに対する適切な対策を検討することも大切です。
海外不動産投資のメリット
海外不動産投資には多くのメリットがあります。
その1つが資産ポートフォリオを多様化し、リスクを分散させることです。異なる国や地域に投資することで、不動産以外の投資との相関性を下げ、ポートフォリオ全体のリスクを軽減することができます。
また、一部の国や都市では、高いキャピタルゲインや賃貸収入を期待できるため、海外不動産投資は収益性が高いとされています。
不動産市場が成長している場所や観光地などでの投資が、収益を増加させる可能性があります。
海外不動産投資は、異なる通貨を持つ国に投資することを含み、外国為替市場の変動を利用して通貨の多様性をもたらすことができます。通貨の価値変動を活用し、利益を上げることができる可能性があります。
注目されている不動産投資国
- フィリピン
フィリピンは人口1億人を超え、東南アジアの中でも高い経済成長率を誇ります。日本よりも人口密度が多く物件の需要を見込みことができます。
一方で、GDPの多を占めているのが海外への出稼ぎ労働者からの仕送り額になるため、世界情勢の影響を受けやす苦なっています。 - ベトナム
2023年には人口が1億人となり、ベトナムは世界で最も人口が多い国のトップ15に仲間入りする見通しとなっております。社会主義国でもあるため、しっかり統治されている点からも投資環境は良いでしょう。
ただ、ベトナムでは外国人による不動産投資の規制が厳しく、通貨の海外への持ち出しも制限があります。 - カンボジア
カンボジアは経済成長によるキャピタルゲインと、人口増加によるインカムゲインの両方が狙える国です。高い人口増加率と経済成長率で、今後も高い水準で推移していくことが予測されています。
しかし、新興国のため、物件の整備や質が未熟なものがあります。情報収集、慎重な検討にパワーが必要になります。 - アメリカ
経済大国世界No.1のアメリカ。経済成長は東南アジアと比べると落ち着いていますが、安定した投資が見込めます。
ただ、エリアによってすでに地価や物件価格がかなり高騰している地域があり、利回りが低くなる可能性はあります。投資目的にあったエリア分析が必要になります。
海外不動産投資のデメリット
海外不動産投資には多くのメリットがある一方で、デメリットや課題も存在します。
以下は海外不動産投資の一般的なデメリットです。
- 外国市場の理解
異なる国や地域に投資する場合、その地域の不動産市場や規制、文化、法律、税制度を理解する必要があります。
地元の法律や規制に従う必要があり、これには法的手続きや地元の税制度への適合が含まれ、これにはコストと時間がかかることがあるので、専門家のアドバイスを受けることが重要です。 - 通貨リスク
海外不動産投資は通貨リスクを伴います。外国通貨の価値変動が収益に影響を及ぼす可能性があります。不利な為替レートの変動により、利益が減少することがあります。 - 地政学的リスク
不動産市場は政治的な不安定性や規制の変更に影響を受けることがあります。地政学的リスクは不動産投資において重要な要因であり、不確実性をもたらす可能性があります。 - 遠隔地の管理
海外の不動産を所有する場合、物理的な距離が問題となることがあります。不動産のメンテナンス、賃貸管理、トラブルの解決など、リモートからの管理は課題となる可能性があります。 - 不確実性の増加
国際的な不動産市場は変動が大きいことがあり、投資家にとって収益が不確実性を伴うことがあります。経済的な不況や地域的な問題が影響を及ぼす可能性があります。 - 市場変動の影響
不動産市場は景気や地域の需要供給の変動に影響を受けます。市場の変動により、不動産価格や賃貸収入が変動する可能性があります。
海外不動産投資で知っておきたいリスク
プレビルド購入
プレビルド購入(またはプレコンストラクション購入)は、まだ建設中または建設前の不動産プロジェクトを購入する方法で、魅力的な投資機会となることもありますが、一定のリスクも伴います。
建設プロジェクトは予定通りに進まないことがあり、遅延が発生する可能性があります。これにより、予定された期限に物件を利用できない場合があり、これは賃貸収入の損失または住宅としての利用を延期することを意味します。
また、建設プロジェクトのコストが予算を超えて増加することがあります。これにより、購入価格が増加し、投資の収益性が低下する可能性があります。一方で、建設中に品質問題が発生することもあります。欠陥や問題が発見された場合、修復や再建の費用が発生し、所有者に負担をかけることも。
プレビルド購入は将来のキャピタルゲインや賃貸収入の可能性を提供することがありますが、これらのリスクを認識し、検討することが重要です。慎重な調査とプロのアドバイスを受けることで、リスクを最小限に抑えることができるでしょう。
カントリーリスク
海外不動産投資において、カントリーリスクとは特定の国に関連するリスクのことを指します。これらのリスクは国際的な不動産市場で不可避であり、投資家が異なる国や地域に投資する際に考慮すべき重要な要因です。
国の政治状況が不安定である場合、不動産市場に影響を及ぼす可能性があります。政治的な不安定性、政府の変化、法律や規制の変更が投資に対するリスクとなります。
また、国の経済状況、通貨、法律、不動産市場、これらのカントリーリスクは、海外不動産投資において考慮すべき要因であり、適切なリスク管理策を検討することが重要です。投資前に徹底的な調査とプロのアドバイスを受けることは、リスクを最小限に抑え、成功の可能性を高めるのに役立ちます。
海外不動産投資の失敗例
- プレビルド物件の頓挫
プレビルド物件には施工前の売上が建設資金に充てられることがあります。ですので、物件の売れ行きが悪くなってしまい資金が充てられなくなると、物件が完成せず建設が頓挫してしまいます。
プレビルド物件に投資する場合は、購入時にどのくらいの売れ行きがあるのかを必ず確認しましょう。また、不動産会社や物件建設の計画を入念に調査しましょう。 - 契約事項の確認不足
海外不動産投資には言語の壁が立ちはだかります。外国語が堪能な方であれば問題はありませんが、現地の不動産会社とやりとりをする際はその国の言語で行われることがほとんどです。
外国語の理解が不十分な状態で契約を締結してしまい、その後把握していない事態が起こってしまう可能性があります。
日本人向けの不動産会社を通しての契約においても、契約事項の入念なチェックが必要です。 - 海外への送金規制
投資をする対象国の海外への送金規制を必ず確認しましょう。
上記でお伝えしましたが、ベトナムなどは海外への送金規制があるため、事前に内容を把握する必要があります。
購入後の家賃収入などは基本的に現地の通貨で得ます。海外送金ができないとその資金を日本で使うことができませんので注意しましよう。 - 物件のリアルタイムがわからない
住まいが日本で、海外の不動産へ投資をする場合、物件の確認は頻繁にできません。
国内の不動産であれば現場へ行き、目で見て確認することができますが、海外の不動産の場合は自身ではなく管理会社へ委託することになります。
自身で目視確認ができないので、物件の劣化や異変に気づくのが遅くなってしまう可能性があります。
管理会社へ委託する際は、信用のおける会社の選定が重要です。
荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
代表取締役 / 宅地建物取引士 / 宅地建物取引業 東京都知事免許(2)第99967号
所属団体:一般社団法人RE AGENT 理事長 / 一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC) / 公益社団法人全日本不動産協会
1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。
著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
はじめての海外不動産投資