
カンボジア不動産の売却・出口戦略を考える時代が来た
カンボジア不動産投資を検討する際、「買うこと」と同じくらい重要なのが「出口戦略」です。特に資産分散を重視する富裕層や経営者にとって、投資資金をどのタイミングで、どのような方法で回収するかは投資判断の核心といえます。
2025年12月24日付の首相決定(経済財務省文書第12792号におけるフン・マネット首相の承認)、2025年12月31日付の経済財務省Prakas No. 1130および2026年1月2日付の税務総局(GDT)通達第041号により、カンボジア政府は不動産売却益に対する20%のキャピタルゲイン税(CGT)の施行を2027年1月1日からとすることを正式に発表しました。キャピタルゲイン税の施行はこれまで複数回延期されており、今後さらに変更される可能性がありますが、この税制変更は投資家の出口戦略に大きな影響を与えるターニングポイントとなっています。
本記事では、カンボジア不動産の売却・出口戦略について、エリア別・物件タイプ別・他国との比較を表で整理し、どの選択肢があなたに適しているかを判断できるようにまとめました。2026年8月時点の最新情報をもとに、リスクと出口を重視する投資家視点で解説します。
出口戦略を考える3つの比較軸
カンボジア不動産の売却・出口戦略を検討する際には、以下の3つの視点から比較することが重要です。
1. エリア別の売却しやすさ・流動性
プノンペン市内でも、エリアによって売却のしやすさ(流動性)や買い手の層が大きく異なります。ボンケンコン(BKK)やトンレバサックのような中心エリアは外国人駐在員や投資家の需要が高く、比較的短期間で買い手が見つかる傾向があります。一方、郊外エリアは価格が手頃な反面、売却までに時間がかかるケースもあります。
2. 物件タイプ別のリセールバリュー
コンドミニアムとサービスアパートメント、プレビルド(建設中)と完成済み物件では、売却時の評価や買い手の期待が異なります。完成済みで賃貸実績のある物件は収益性が証明されているため、投資家にとって安心材料となります。一方、プレビルド物件は価格の上昇余地がある反面、完成リスクや市場変動リスクを伴います。
3. 他のアセアン諸国との比較
タイ・ベトナム・マレーシアなど、他のアセアン諸国の不動産市場と比較した際、カンボジアの優位性とリスクを把握することも重要です。米ドル建て資産という点ではカンボジア独自の強みがありますが、市場の成熟度や法整備の進展度では他国に劣る部分もあります。
【比較表1】プノンペン主要エリア別の売却・出口特性
まず、プノンペン市内の主要エリアを売却の観点から比較しましょう。
| エリア | 流動性(売りやすさ) | 主な買い手層 | 平均売却期間(目安) | 出口戦略の特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ボンケンコン(BKK) | 高い | 外国人駐在員・投資家 | 3〜6ヶ月 | 国際学校・商業施設が充実し需要が安定。短期売却に有利 |
| トンレバサック | 高い | 富裕層・大使館関係者 | 3〜6ヶ月 | 高級物件が多く、資産価値が安定。長期保有も選択肢 |
| ダウンタウン(中心部) | 中程度 | ビジネス利用・短期賃貸 | 6〜9ヶ月 | オフィス需要があるが競合物件も多い。賃貸収益重視型 |
| チュロイチャンバー | 中程度 | 中間層・ローカル富裕層 | 6〜12ヶ月 | 新興エリア。インフラ整備次第で価値上昇の可能性 |
| 郊外エリア | 低め | ローカル層 | 12ヶ月以上 | 価格は手頃だが売却に時間がかかる。長期保有前提 |
ボンケンコン(BKK)は依然として最も人気のあるエリアの一つとして高い関心を集めており、中心エリアの中でも高価格帯を維持しています(2026年時点)。売却の際も買い手が見つかりやすく、流動性が高い点が大きな魅力です。ただし、BKKにはBKK1・BKK2・BKK3があり、BKK1が特別なエリアです。一方、郊外エリアは売却に時間がかかる傾向があるため、賃貸収益を積み上げる長期保有型の戦略が適しています。
【比較表2】物件タイプ別の出口戦略比較
次に、物件タイプごとの売却特性を比較しましょう。
| 物件タイプ | リセールバリュー | 売却時の訴求ポイント | リスク | 向いている投資家 |
|---|---|---|---|---|
| 完成済みコンドミニアム(賃貸中) | 高い | 賃貸実績・安定収益を証明できる | 市場価格の変動リスク | すぐに売却したい投資家・収益重視型 |
| 完成済みコンドミニアム(空室) | 中程度 | 買い手が自由に使える・内装変更可 | 賃貸実績がなく評価しにくい | 柔軟な条件で交渉したい投資家 |
| プレビルド物件(建設中) | 中程度〜高い | 完成前の値上がり益を狙える | 完成遅延・デベロッパーリスク | キャピタルゲイン狙い・リスク許容度高め |
| サービスアパートメント | 中程度 | 管理・運営体制が整っている | 管理費が高く収益性が低下する場合も | 管理の手間を省きたい投資家 |
| 転売物件(中古) | 中程度 | 価格交渉の余地あり・即入居可 | 物件の状態・過去の管理履歴を確認必要 | 割安で購入し短期転売を狙う投資家 |
完成済みで賃貸実績のある物件は、買い手にとって収益性が可視化されているため、売却交渉がスムーズに進む傾向があります。一方、プレビルド物件は完成前に売却することで値上がり益を得られる可能性がある反面、デベロッパーの信頼性や完成リスクを慎重に見極める必要があります。
【比較表3】カンボジアと他のアセアン諸国の出口戦略比較
カンボジアと他のアセアン主要国の不動産市場を、売却・出口の観点から比較します。
| 国 | 市場の成熟度 | 流動性 | 税制(売却時) | 通貨リスク | 総合評価 |
|---|---|---|---|---|---|
| カンボジア | 発展途上 | 中程度(エリア次第) | 2027年からCGT 20%予定※ | 米ドル建て(低リスク) | 成長性高いがリスクも高め |
| タイ | 成熟市場 | 高い | 譲渡所得税(累進課税) | バーツ建て(中リスク) | 安定性・流動性が高い |
| ベトナム | 成長市場 | 中程度 | 譲渡所得税2% | ドン建て(中〜高リスク) | 成長性あるが外国人規制あり |
| マレーシア | 成熟市場 | 高い | 不動産譲渡益税(保有期間で変動) | リンギット建て(中リスク) | 法整備が進み安心感高い |
| フィリピン | 成長市場 | 中程度 | キャピタルゲイン税6% | ペソ建て(中〜高リスク) | 人口増加で需要拡大期待 |
※不動産CGTは2027年1月1日施行予定ですが、これまで複数回延期されており、今後さらに変更される可能性があります
カンボジアの最大の特徴は米ドル建て資産を保有できる点です。通貨リスクを抑えながら新興国の成長を取り込める点は他国にない魅力ですが、市場の流動性や法整備の面では、タイやマレーシアのような成熟市場に比べるとまだ発展途上です。
【比較表4】売却タイミング別の戦略比較
売却のタイミングによって、税負担や戦略が大きく変わります。
| 売却タイミング | 税負担(目安) | メリット | デメリット | 向いている投資家 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年中に売却 | CGT課税なし(予定) | キャピタルゲイン税を回避できる | 市場価格が希望に届かない可能性 | 短期キャピタルゲイン重視・早期出口希望 |
| 2027年以降に売却 | CGT 20%課税(予定) | 市場の成熟・価格上昇を待てる | 税負担が増加し利益が圧縮される | 長期保有前提・賃貸収益重視型 |
| 5年以上保有後に売却 | 居住用なら非課税の可能性 | 税制優遇を受けられる場合も | 長期保有リスク・市場変動リスク | 居住目的・超長期投資家 |
| プレビルド完成前に転売 | 取引形態により異なる | 完成前の値上がり益を狙える | 買い手が限定的・流動性低い | 短期転売狙い・リスク許容度高め |
2027年1月1日以降に売却される物件であっても、過去5年以上にわたって主たる住居として所有・居住していた場合には、個人のキャピタルゲインは非課税となる予定です。ただし、外国人投資家(非居住者)がこの条件を満たすケースは限定的であり、また制度の詳細は今後変更される可能性があるため、最新情報の確認が不可欠です。キャピタルゲイン税の施行時期や詳細は今後変更される可能性があるため、最新情報の確認が不可欠です。
タイプ別の向き不向き:あなたに合った出口戦略は?
ここまでの比較を踏まえ、投資家のタイプ別に適した出口戦略を整理します。
【タイプA】短期キャピタルゲイン重視型
特徴:3〜5年程度の保有で売却益を確定させたい投資家
おすすめエリア:ボンケンコン、トンレバサック
おすすめ物件:完成済みコンドミニアム、プレビルド物件(完成前転売)
出口戦略:2026年中の売却を検討し、CGT課税を回避する。流動性の高いエリアで短期間での売却を目指す
【タイプB】賃貸収益+長期保有型
特徴:安定した賃貸収益を得ながら、5〜10年以上の長期保有を前提とする投資家
おすすめエリア:ボンケンコン、トンレバサック、ダウンタウン
おすすめ物件:完成済みコンドミニアム(賃貸中)、サービスアパートメント
出口戦略:賃貸収益で管理費・税金を賄いながら、市場の成熟を待つ。2027年以降のCGT課税を織り込んだ上で売却時期を判断
【タイプC】リスク分散・ポートフォリオ型
特徴:複数国・複数物件に分散投資し、リスクとリターンのバランスを重視する投資家
おすすめエリア:ボンケンコン、トンレバサック、チュロイチャンバー(新興エリア)
おすすめ物件:完成済み・プレビルドを組み合わせ
出口戦略:エリアと物件タイプを分散し、市況に応じて柔軟に売却タイミングを判断。一部は2026年中に売却、一部は長期保有
【タイプD】ハイリスク・ハイリターン型
特徴:高い利回りや値上がり益を狙い、リスクを許容できる投資家
おすすめエリア:チュロイチャンバー、新興エリア
おすすめ物件:プレビルド物件、転売物件
出口戦略:完成前の転売や、インフラ整備による価値上昇を狙う。市場変動リスクを十分理解した上で投資判断
選び方の判断軸:出口戦略で失敗しないために
カンボジア不動産の出口戦略を選ぶ際、以下の4つの判断軸を意識しましょう。
判断軸1:保有期間と税負担のバランス
キャピタルゲイン税の導入は当初2020年代初頭に計画されていましたが、コロナ禍の影響などによって複数回延期されてきました。2027年1月施行予定のCGTですが、過去の延期事例を踏まえると今後も変更の可能性があります。売却時期と税負担を天秤にかけ、最適なタイミングを見極めることが重要です。
判断軸2:流動性(売りやすさ)の確保
いざ売却しようとしても買い手が見つからなければ、出口戦略は機能しません。ボンケンコンやトンレバサックのような流動性の高いエリアを選ぶことで、売却リスクを大きく軽減できます。郊外エリアは価格が手頃ですが、売却に時間がかかる覚悟が必要です。
判断軸3:賃貸実績の有無
賃貸中の物件は、買い手にとって収益性が証明されているため、売却交渉が有利に進みます。空室の物件よりも、安定した賃貸実績がある物件のほうがリセールバリューは高い傾向にあります。購入時点から、賃貸管理の実績があるエージェントを通じて物件を選び、完成後の管理シミュレーションを事前に確認しておくことが重要です。
判断軸4:通貨リスクと為替の考慮
カンボジア不動産は米ドル建て資産ですが、最終的に日本円に戻す際には為替リスクが発生します。2024年は一時的に1米ドルが161円台後半をつける歴史的な円安水準となりました。2026年8月時点も円安傾向が続いており、売却時の為替レートを考慮した上で、利益を最大化するタイミングを見極めましょう。
判断軸5:税務コンプライアンス
売却時の名義変更登記と日本への海外送金を成功させるには、適正な納税とその証明(税務コンプライアンス)が不可欠です。 土地法に基づき、毎年の固定資産税に未納があれば名義変更登記は行われません。また、銀行の送金審査では資産譲渡税(4%)や非居住者源泉徴収税(14%)の納税証明がないと、海外送金を拒否される可能性があります。
保有中から売却・送金まで、税務を一貫してサポートできるパートナー選びが重要です。
おすすめエリアと物件
出口戦略を考える上で、流動性が高く、売却しやすいエリアと物件を選ぶことが最も重要です。アンナアドバイザーズでは、以下のエリアと物件をおすすめしています。
ボンケンコン(BKK)エリア
- J-Tower 2(転売・賃貸):中心地で流動性が高く、賃貸実績も豊富。短期売却に有利
- GATOタワー(プレビルド):完成前の値上がり益を狙える新築物件。キャピタルゲイン重視型に最適
- De Castle Royal(転売・賃貸):安定した賃貸需要があり、長期保有にも向く
トンレバサックエリア
- J-Tower 3(プレビルド):富裕層向けエリアで資産価値が安定。長期保有前提の投資家に最適
- Skylar By Meridian(転売・賃貸):高級物件として評価が高く、リセールバリューが期待できる
- Embassy Residence(転売・賃貸):大使館関係者など富裕層の需要が厚く、売却時も有利
これらの物件は、流動性・賃貸実績・デベロッパーの信頼性いずれの面でも優れており、出口戦略を考える上で安心して選べる選択肢です。
まとめ:専門家と一緒に最適な出口戦略を設計しよう
カンボジア不動産の売却・出口戦略は、エリア・物件タイプ・保有期間・税制の4つの要素を総合的に判断する必要があります。2026年はキャピタルゲイン税導入前の「最後の移行期」となる可能性があり、短期売却を検討する投資家にとっては重要なタイミングです。
一方で、長期保有を前提とした賃貸収益重視型の戦略も十分に成り立ちます。市場の成熟とともに、安定した賃貸需要とキャピタルゲインの両方を享受できる可能性があります。
重要なのは、ご自身の投資目的とリスク許容度に合った戦略を選ぶことです。税制や市場環境は刻々と変化するため、最新情報をキャッチアップしながら柔軟に対応することが求められます。
本記事の情報は2026年8月時点のものです。税制度・法令は変更される可能性があるため、投資判断の際には最新情報を必ずご確認ください。
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荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
代表取締役 / 宅地建物取引士 / 宅地建物取引業 東京都知事免許(2)第99967号
所属団体:一般社団法人RE AGENT 理事長 / 一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC) / 公益社団法人全日本不動産協会
1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。
著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
はじめての海外不動産投資
