海外不動産投資で失敗しないためのマクロ分析とミクロ分析

執筆者:荒木 杏奈

アンナアドバイザーズ株式会社

2021/12/08

「経済成長している国の不動産を購入できたのに、居住者が入らずに損をしてしまった」

「順調にインカムゲインで収益を得られているものの、値上がりしたタイミングで売却してさらにキャピタルゲインを得ようとしていたのに、逆に地価が下がってしまった」

しっかり情報を集めて投資をはじめたつもりでも、見えていないところが仇となり、失敗してしまう人は多くいます。そういった人に共通しているのが、偏った視点で情報分析をしてしまうことです。

海外不動産への投資は、広い(マクロ)視点からの分析と狭い(ミクロ)視点からの分析の2つが必要になります。
ここでは失敗しないための海外不動産投資の分析の仕方を見ていきましょう。

 1. 不動産投資のマクロ分析 

マクロ分析とは、巨視的分析とも呼ばれ海外不動産投資では、国単位の分析など、大きな視点で分析していくことを指します。投資先の国を決めるときなどに必要な分析で、怠ると、せっかくいい物件を選んでも国の経済全体が落ち込み、収益があがらないということもあり得ます。

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 1-1. 先進国か新興国か 
まず一番に考えるべきは、先進国の不動産に投資するか、新興国の不動産に投資するかです。

先進国は、経済発展が大きく進んだ国家を指し、安定した投資で収益を得たい人におすすめの投資先です。
新興国は、経済水準はまだ低いものの、高い成長性が期待されている国々を指し、多少リスクを冒してでも大きなリターンを得たい人におすすめの投資先です。

その他にも、先進国と新興国ではいくつも違いがあるので、詳しく知りたい方は下記の記事を合わせてお読みください。
『国内不動産投資と海外不動産投資は別物』

 1-2. 地域ごとの特色を分析してみる 
次は、どこの地域がいいのか分析していきましょう。

先進国か新興国かを決めた時点で投資先の国を決めてもいいのですが、一度踏み止まり、どこの地域か考えることによって、より自分に合った投資先を見つけることができます。

先進国でしたら、北アメリカやヨーロッパ、東アジアが候補に上がりますし、新興国ですと、東南アジア・南米・アフリカなどの地域でしょう。それぞれの地域によって、宗教や言語、日本からの距離が異なります。

不動産の管理がしやすいという視点で地域を選べば、不動産投資の成功率が高まるでしょう。

新興国について詳しく知りたい方はこちらの記事も合わせてお読みください。
『あなたは知っている?これからが期待される新興国の国々』

 1-3. 国ごとの分析 
ここまで来たら、いよいよ国ごとの分析に入っていきます。
地域に位置する全部の国を分析する必要はありません。地域の中から不動産投資が盛んに行われている国を3つほどピックアップして分析していきましょう。

国を選ぶときのポイントは成長性です。
・人口
・インフラ
・治安
・教育
・政策

若年層の人口が多い、インフラへの投資がしっかり進んでいる、政権が安定していて経済発展に向けた政策がきちんと整備されているなど、これからの成長に有利な条件が揃っているかを吟味します。ここまで考えられたらマクロ視点はばっちりです。続いて、ミクロ視点での分析に入っていきましょう。

 2. 不動産投資のミクロ分析 

マクロ分析で投資先の国を絞ることができたら、次はミクロの視点に切り替えて分析を進めていきます。

海外不動産投資のミクロ分析とは、ズバリ!投資物件と管理会社の分析になります。
 

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 2-1. 投資物件は2つのタイプを知っておこう 
投資物件には2つのタイプがあります。タイプによって分析するポイントが変わりますので、気を付けましょう。

1つは、保証のついていない一般的なタイプの不動産。
もう1つは、管理会社が買い取りなどをおこなう保証がついているタイプの不動産です。

一般的な保証のついていない不動産ですと、物件が完成したら、現地の不動産会社が賃貸として入居者を募集します。その後、入居者の賃料から管理費を引いたものがインカムゲインとして入ってくるという収益構造で、基本的には物件を保有し続け、賃料収入で収益をあげるため、現地での細かい分析が必須になるのです。

・どういう所得層の人が住むエリアなのか
・そのエリアは生活しやすいのか
・近くにスーパーがあるか
・治安がいいのか
・物件の建築工事がそもそも存在しているか
・不動産が実物としてあるか、進捗がしっかりしているか

これらのことを目で見て確かめることが大切です。
コロナ禍で、現地視察が難しいときは、オンラインでの視察でも大丈夫ですが、エリアなど見えないところの情報もネットなどで可能な限り集めるようにしましょう。

そして、新興国への不動産投資で一番気をつけなければならないのは、そもそも物件がちゃんと建つかどうかです。工事が行われているのか、ちゃんと建物があるのか、開発会社の信用度はどうなのか、ショールームや不動産を見せてもらったり、オンラインで情報を集めたり、必ず確認をおこないましょう。

続いて2つ目の買い取り保証がついているタイプの不動産投資の場合です。
一般的な不動産投資と異なり金融商品に近い形ですので、保証なしの不動産に比べると細かい分析は必要ありません。

また、買い取り保証がついている不動産では分析の視点も変わります。分析が必要なのはエリアではなく、管理会社になります。一番怖いのは管理会社が倒産してしまい、保証がなくなることです。ですから、決算書や実績を見て経営がしっかりしているかを確認しましょう。

また売りきり業者などは使わないようにしましょう。
仲介だけの会社ではなく、管理まで一括でやっているところのほうがおすすめです。

 3. 海外不動産は2つの視点で分析しよう 

海外への不動産投資をするときに、マクロの視点だけ、ミクロの視点だけで判断をしてしまうと、予期せぬ事態に陥り、投資が失敗に終わってしまうかもしれません。

勝手知ったる日本国内でも不動産の購入には慎重になるのですから、住む人も文化も異なる海外の国となれば、なおさら慎重に情報を集めることが重要になります。

しっかりと2つの視点から分析を進め、目的にかなう物件を見つけていきましょう。
 

執筆者:荒木 杏奈

アンナアドバイザーズ株式会社

日本とカンボジアを拠点に、国内・海外不動産業を展開。

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荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

宅地建物取引士 / 1984年生まれ、東京都出身。
大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。
2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。

著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
   はじめての海外不動産投資