執筆者:荒木 杏奈
アンナアドバイザーズ株式会社
近年海外への不動産投資、特に東南アジアの不動産への投資は非常に注目を集めています。
国内不動産への投資と違い、英語やその国の言語で情報を集めたり、為替のチェックをしたり、社会情勢や経済動向を調べたりと手間の掛かりそうな海外不動産への投資がなぜ注目を集めているのでしょうか。今回は、国内不動産投資と海外不動産投資の違いを元に「海外の投資が注目を集めている理由」について解説していきます。
1. 国内不動産投資への投資
不動産投資を始めようと思ったときに真っ先に考えるのは、日本国内の不動産への投資ではないでしょうか。長年住んだ国で愛着もあるし、何よりも日本というだけで安心・安全なイメージがありますよね。しかし、国内の不動産は本当に安心・安全でメリットしかない投資先なのでしょうか。
ここでは、国内不動産への投資をするメリットとデメリットについて見ていきましょう。
1-1. 国内不動産投資のメリット
みなさんもご存知の通り、世界の中でも日本はとても安全な国です。政治的にもクーデターなどの危険もなく、経済的にも通貨である円が安定しているため急落の心配がないなど、他の先進国の国々と比べても非常に安定しています。不動産投資関連の制度もしっかり整っているため、安心して投資に取り組むことができると言えるでしょう。こういったことから、国内不動産投資は家賃収入(インカムゲイン)を安定して得ることに向いています。
また、国内不動産投資の最大のメリットは低金利にあります。低金利を利用して、ローンの返済を少なくして、不動産投資を行うことができるのです。国内不動産への投資ですと、ローンも比較的組みやすいので、担保するものの価値によってはフルローンを組むこともできます。注意するべき点は、今後いつ利上げするのか不透明であるところです。不動産購入の際のローンは経済の状況に応じて金利が上下する「変動金利」が選ばれることが多いです。変動金利の場合は、わずかに利上げがあった場合でも金額に大きな影響があるので、注意が必要になります。
1-2. 国内不動産投資のデメリット
日本は安定している一方で、今後は少子高齢化が進み労働人口がどんどん減少していきます。これが国内不動産への投資を考える時の最大のデメリットになります。人口の減少により、将来的に賃貸の借り手が減ることが予想されますし、消費者も減ることになるので経済の成長も期待できません。そのため、不動産の値段が購入時より上昇したタイミングで売却することによって利益を得る売却益(キャピタルゲイン)を期待した不動産投資には向いていないのです。
また、大都市圏だけではなく地方都市でもタワーマンションが増えてきているため、物件の供給過剰が家賃単価の下落につながることも課題として出てくることが予想されます。国内投資による収益化を考えている方は、日本の将来がどうなりそうか予測して投資を行う必要があります。
国内不動産への投資は比較的簡単に取り組むことができ、リスクも小さいですが、大きな収益をあまりない期待できないのが特徴です。
2. 海外不動産への投資
国内への不動産投資と大きく異なるところは、使える言語が日本語ではないところです。代理店などに依頼をすれば別ですが、現地の管理会社とのやり取りや情報の収集などは全部英語または、その国の言語で行う必要があります。
また、住んだことのない国の文化や民族性を理解することは非常に難しく、思ってもみなかったところでトラブルが起こるケースなども見られます。
一口で海外不動産投資といっても、先進国と新興国への不動産投資はまったくの別物です。ここでは先進国と新興国を分けて見ていきましょう。
2-1. 先進国不動産投資のメリット
先進国への不動産投資は国内の不動産投資と同じく、不動産取引の法整備が進んでいるため、取引上の事故が起きにくい点が大きなメリットになります。また、国内の不動産ほどではないですが、融資を受けることができるのもポイントです。
先進国の不動産投資も日本と同じ理由で「インカムゲイン」による収益化に向いていると言えます。しかし、情報収集が思うようにいかないため、管理会社選びなどに課題があります。しっかりしていない管理会社を選んだ結果、家賃を滞納され家賃収入を得られないといった事例もあります。
国内と異なる点は、先進国には今後の成長性が期待できる国もあります。アメリカでは労働人口が増加しているため、新興国ほどではないですが、「キャピタルゲイン」にも期待が持てるのです。
2-2. 先進国不動産投資のデメリット
先進国の不動産に投資をするときは為替の動向には注意をする必要があります。
不動産価値が上がると、「キャピタルゲイン」を得るために不動産の売却手続きを進めていくことになります。このときに投資している国の通貨の価値が下がっていると円に両替するときに利益が予想以上に目減りしてしまうことがあるのです。ですから、為替による損失がでないように、日本円に替えるタイミングも重要になります。
また、これまでは海外不動産に投資を行い、耐用年数の短さにより多額の損失を計上して、税負担の軽減を図る、つまり節税目的で先進国の不動産に投資する人が多くいました。少ないリスクで節税をすることが可能だったことが、注目を集めている理由の1つでした。
しかし、令和2年に税制が改正されたことによりこの海外不動産による節税方法は制限されてしまったのです。このことを知らないまま、海外不動産に投資をしてしまうと大きな損失につながりかねません。不動産投資を行っている方はしっかりと情報を収集するようにしましょう。
先進国の不動産への投資は情報収集等の労力を必要としますが、収益化が多少期待でき、リスクも小さいのが特徴です。
2-3. 新興国不動産投資のメリット
新興国への投資のメリットはやはり、今後の経済成長性が見込めるところにあります。
新興国は、1人当たりのGDPがまだまだ先進国に比べて低いため、インフラ投資などによる大きな経済効率向上が見込めます。
また一番注目すべき点は、新興国では今後も人口が増加していくこと、特に若い労働人口が増加していきます。若い労働人口は、付加価値を生み出す労働力としてだけではなく、消費の担い手としても経済成長の原動力にもなっているため、今後の経済成長が見込めるのです。
なかでも近年、東南アジアの国の中には積極的に外資を取り入れ、インフラ整備や開発が着実に進んでいる国もあり、爆発的な国の成長によって投資の恩恵を受けたいと考える投資家から人気を集めています。
2-4. 新興国不動産投資のデメリット
新興国不動産への投資の一番のデメリットはやはり環境的な変化によるカントリーリスクがあることでしょう。
カントリーリスクとは、急な政治・経済・環境の変化により起こるリスクのことです。新興国では、いまだにクーデターや民衆によるデモなどが多く見られます。このような政治・経済の変化が起こると、不動産価格が下落することがありますので、注意が必要でしょう。
また、不動産投資関連の制度などがしっかり整備されていないところが多いため、トラブルや事故につながりやすいのも新興国のデメリットでしょう。
いままで、投資家への優遇政策を推進していたにも関わらず突如内需向けの政策に変わり、収益が悪化するようなケースも見られます。
新興国不動産への投資は情報収集等の労力を必要としますが、大きな収益が見込める代わりに、リスクも大きいのが特徴です。
3. 海外不動産への投資に向けて
海外不動産への投資は、情報収集や言語の面で労力を必要としますが、その分国内不動産への投資より収益面での期待値が大きくなるため、多くの投資家に注目されているのです。
この記事を読んで、海外不動産への投資に興味を持ちさっそく何かに取り組んでみたいという方もいると思います。しかし、先に述べたように海外不動産への投資では融資を受けることが非常に難しくなるので、投資をするためには現金が必要になります。
ですから、まとまった現金がいまはないという方はまず貯金から始めてください。貯金をしてまとまったお金ができると、海外不動産投資に限らず、いろいろな投資への幅が広がるでしょう。
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執筆者:荒木 杏奈
アンナアドバイザーズ株式会社
日本とカンボジアを拠点に、国内・海外不動産業を展開。
PickUP
荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
代表取締役 / 宅地建物取引士 / 宅地建物取引業 東京都知事免許(2)第99967号
所属団体:一般社団法人RE AGENT 理事長 / 一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC) / 公益社団法人全日本不動産協会
1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。
著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
はじめての海外不動産投資