執筆者:荒木 杏奈
アンナアドバイザーズ株式会社
カンボジア不動産への投資は「これからの豊富な成長余力」「高金利で米ドル建て」など、多くの魅力がある不動産投資になります。
海外不動産投資をするときに、どのようなメリットがあるのかを考えて投資先の国を選ぶことは大切ですが、魅力的な面ばかりを見て投資に踏み切ってしまうと予期しないトラブルに巻き込まれる恐れがあります。
今回は日本の不動産投資とは異なる、カンボジア不動産投資の意外なリスクについて紹介していきます
1. カンボジア不動産投資リスク – 物件が完成しないことがある
「海外では購入した物件の完成が遅れることが当たり前のようにあります」
このようなお話をすると、多くの日本人が驚かれます。日本で生活をしていると考えられないことが海外では、当たり前のように起こっているのです。
なぜ海外では、不動産の完成が遅れるといったことが起こるのでしょう?
これは、海外の開発会社が行っている資金獲得方法に理由があります。
海外の不動産投資でよく見られるのが、建物完成前に物件を販売するプレビルド販売になります。プレビルド販売とは、開発業者が完成後の価格よりも値引きをして物件を販売する形式です。
開発会社は、プレビルド販売を行って得た資金を、建設費用に充てます。そのため販売が不調になると建設資金を確保できず、完成がどんどん遅れていくことになるのです。最悪の場合、建物が完成せず、プレビルドで購入した人は支払ったお金が戻ってこないということも起こりうるので注意が必要になります。日本でも建設前にマンションが販売されることがありますが、料金の支払いタイミングは建物完成後になり、販売で得た資金が建設費用に充てられるということはありません。
カンボジア不動産投資でこのようなリスクがあってもプレビルド販売で購入する人がいるのは、不動産売却時に大きなキャピタルゲインを見込むことができるからです。
では、この建物が完成しないリスクを回避するにはどうしたらよいでしょうか。
それは、事前の確認をすることです。一番大切なのは開発会社の資金力の確認です。資金力を確認するには決算書を見るのが一番ですが、上場していない会社ですと公開していないこともあります。そういったときは過去の建設実績を確認するようにしましょう。
他にも建設以外の様々な業種の事業に手を出し過ぎていないか、融資を受けすぎていないかも確認しておくとより安心して投資を行えます。事前に時間を掛けてでも情報を調べることが、リスクの回避につながるのです。
2. カンボジア不動産投資リスク – 開発会社や管理会社が途中で変わってしまう
カンボジアの不動産では、管理会社や開発会社がこちらの意図に関係なく途中で変わってしまうことがあります。これも日本ではあまり見られないことですね。
管理会社は、開発会社からお金をもらって
・家賃の集金
・クレーム対応
・修繕工事の手配
などを代行する会社になります。
管理会社が頻繁に変わってしまうと、引継ぎが上手くいかずに揉めごとが起こったり、管理体制が杜撰(ずさん)になってしまい、気が付いたときには部屋がボロボロで入居者が入らないといったことになりかねません。
開発会社が変わるとさらに問題です。家賃保証がある場合、開発会社が保証しているため、開発会社が変わると保証なども途中で打ち切りになってしまいます。また、管理会社とのやり取りも開発会社が行っていることがほとんどなので、購入時とは多くのことが変わってしまい、運用に支障をきたす恐れがあります。
これらのリスクを回避するには、信頼できる開発会社や管理会社を見つけ、任せることが大切です。
3. カンボジア不動産投資リスク – 政治的なリスクが高い
最後のリスクは、カンボジア国内の政治という広い枠組みでのリスクとなります。カンボジアの政治リスクは世界的に見ても高いと言えます。
2017年には、当時のカンボジア最大野党であった「カンボジア救国党」の党首が「国家転覆罪計画に関与した」として逮捕され、カンボジア救国党が解党に追い込まれるという出来事がありました。この後、カンボジアでは選挙があり、フン・セン政権率いるカンボジア人民党がすべての議席を確保するという事態になったのです。
国外からは、最大野党を現政権が弾圧したとして多くの批判が集まりました。欧州連合(EU)はカンボジアの野党弾圧を大きく受け止め、カンボジアへの関税優遇措置の一部を停止しました。事実上の経済制裁を受けたカンボジアでは「壊滅的な打撃を受ける可能性がある」と制裁の延期を求める声も出ています。
フン・セン政権により、経済成長が順調に進んできたカンボジアですが、政治のリスクは依然として高いままなのです。政権が変わると国内の情勢もいっきに変わることになるので注意しましょう。
4. リスクをしっかりと理解してカンボジア不動産投資を検討しよう
このようにカンボジア不動産投資には多くのメリットがある一方で、リスクも潜んでいます。普段日本で生活をしている方からすると、想像できないようなリスクもあったのではないでしょうか。
リターンが大きい分、リスクもあるということをしっかりと理解してカンボジア不動産に投資するべきか検討していきましょう。
執筆者:荒木 杏奈
アンナアドバイザーズ株式会社
日本とカンボジアを拠点に、国内・海外不動産業を展開。
PickUP
荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
代表取締役 / 宅地建物取引士 / 宅地建物取引業 東京都知事免許(2)第99967号
所属団体:一般社団法人RE AGENT 理事長 / 一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC) / 公益社団法人全日本不動産協会
1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。
著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
はじめての海外不動産投資