執筆者:荒木 杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

カンボジアをはじめ、東南アジアの不動産投資に興味を持つ人は年々増えています。
しかし、海外の不動産に投資するとなると、多くの方が最も気になるのが「本当に自分のものになるのか?」という所有権の問題ではないでしょうか。
実は、外国人が不動産を所有できる国はそれほど多くありません。特に東南アジアでは、外国人には一般的に「借地権」と呼ばれる長期賃借権しか認められていない国が多いのが現状です。
一方でカンボジアでは、以前は外国人による不動産所有は認められていませんでした。しかし現在では、マンションなどの区分所有であれば、外国人でも所有することが可能になっています。
つまり、カンボジアは外国人にも不動産投資のチャンスが広がっている数少ない国の一つなのです。
そこで今回は、カンボジアで不動産投資を検討している方に向けて、カンボジアの不動産所有権についてわかりやすく解説します。
実は、カンボジアの不動産所有権には4つの種類があります。
それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なるため、投資前にしっかり理解しておきましょう!


① ハードタイトル(Hard Title)
ハードタイトルは、カンボジアで最も安全性が高く、最上位の不動産所有権とされています。土地の所有権の中でも最も信頼性が高く、多くの不動産取引で基準となる権利です。
このハードタイトルは、カンボジアの土地管理・都市計画・建設省および地籍局によって正式に認定・管理される所有権証明書です。所有者や土地の位置・面積などの詳細情報が国レベルで登録されているため、法的にも強い保護を受けることができます。
ハードタイトルの特徴
- カンボジアで最も信頼性の高い不動産所有権。
- 所有権を巡るトラブルが発生した場合、ソフトタイトルよりもハードタイトルが優先される。
- 土地管理・都市計画・建設省が発行する正式な土地所有権証明書。
- 国土省および地籍局で正式に登録・認定されており、全国で法的効力を持つ。
- 名義変更(譲渡)の際には、資産評価額の4%の譲渡税が必要。
- 所有権移転の手続きには通常4〜6週間、長い場合は最大12週間ほどかかる。
- 外国人はカンボジア憲法により、ハードタイトル(土地所有権)を取得することはできない。
② ソフトタイトル(Soft Title)
ソフトタイトルは、カンボジアで最も一般的に利用されている土地所有権です。
ハードタイトルとの大きな違いは、国ではなく地方自治体レベルで管理・登録されている点です。日本で例えると、市役所や区役所で管理されているイメージに近いでしょう。
ソフトタイトルは、地域のSangkat(サンカット)やKhan(カーン)などの地方自治体で発行・登録されます。そのため、全国レベルの登記ではありませんが、有効な法的所有権として認められています。
近年では、ソフトタイトルからハードタイトルへの切り替えが進んでおり、最近の新築マンションや大規模な不動産開発では、ハードタイトルで取引されるケースがほとんどです。
ソフトタイトルの特徴
- カンボジアで最も一般的な土地所有権。
- 登録手数料はハードタイトルよりも安い。
- カンボジア国内の不動産所有者の約85%がソフトタイトルを利用しているといわれている。
- Sangkat(サンカット)やKhan(カーン)など、地方自治体レベルで登録・管理されている。
- 全国登記ではないものの、有効な法的所有権として認められている。
- 名義変更(譲渡)の際には、ハードタイトルと同じく資産評価額の4%の譲渡税がかかる。
- 登録手続きには約10〜12営業日程度かかる。
- 外国人はソフトタイトル(土地所有権)を取得することはできない。
③ ストラタタイトル(Strata Title)
ストラタタイトルは、外国人でもカンボジアのマンションやオフィスなどの専有部分を所有できる権利です。
日本でいう「区分所有権」にあたり、2009年の法改正によって導入されました。これにより、一定の条件を満たせば、外国人でもカンボジアのコンドミニアムなどを正式に所有できるようになりました。
また、ストラタタイトルはハードタイトルと同様に国レベルで登録・管理される所有権です。法的な信頼性が高いうえ、外国人でも取得できることから、近年では新築コンドミニアムを中心に急速に普及しています。
ストラタタイトルの特徴
- 主にコンドミニアムやオフィスなどの区分所有物件に利用される所有権。
- カンボジア人だけでなく、外国人も取得可能。
- 国の関係機関によって発行・管理されるため、全国レベルで正式に登録される。
- 名義変更(譲渡)の際には、資産評価額の4%の譲渡税がかかる。
④ LMAPタイトル(LMAP Title)
LMAPタイトルは、土地の所有権をより安全かつ明確に管理するために導入された新しい所有権制度です。
2002年、カンボジア政府は土地管理制度の近代化を目的として、LMAP(Land Management and Administration Project)を開始しました。LMAPタイトルもハードタイトルと同様に、国レベルで正式に登録・管理される所有権です。
ハードタイトルとの大きな違いは、GPSによる正確な位置情報が登録されている点です。
土地の境界をGPS座標で明確に定め、さらに隣接する土地所有者同士の合意を得たうえで登録されるため、境界トラブルや所有権をめぐる紛争を未然に防ぐことができます。
日本で例えるなら、確定測量が完了し、地積測量図とともに法務局へ正式に登記された土地に近いイメージです。
現在のカンボジアではハードタイトルが最も一般的で信頼性の高い所有権として利用されていますが、今後はGPS情報を備えたLMAPタイトルが主流になっていくと考えられています。
LMAPタイトルの特徴
- 土地管理・都市計画・建設省(MLMUPC)と地籍局によって、全国レベルで発行・管理される所有権。
- ハードタイトルとの最大の違いは、土地の境界を示す正確なGPS座標が登録されていること。
- 地籍図に登録済みの土地のみがLMAPタイトルの対象となるため、未登録の土地には発行できない。
- LMAPタイトルの登録が完了すると、その後の各種手続きは地方自治体でも行うことができる。
- 名義変更(譲渡)の際には、資産評価額の4%の譲渡税がかかる。
- 外国人はLMAPタイトル(土地所有権)を取得することはできない。
まとめ
カンボジアでは、外国人が土地を直接所有することは原則として認められていません。しかし、マンションなどの区分所有権(ストラタタイトル)の取得や、一定の条件を満たした投資スキームを活用することで、外国人でもカンボジア不動産へ投資することは十分に可能です。
また、カンボジアの不動産所有権には、ハードタイトル・ソフトタイトル・ストラタタイトル・LMAPタイトルの4種類があり、それぞれ法的な位置付けや特徴が異なります。安心して投資を行うためには、それぞれの違いを正しく理解しておくことが重要です。


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荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
代表取締役 / 宅地建物取引士 / 宅地建物取引業 東京都知事免許(2)第99967号
所属団体:一般社団法人RE AGENT 理事長 / 一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC) / 公益社団法人全日本不動産協会
1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。
著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
はじめての海外不動産投資
