執筆者:荒木 杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

東南アジアの不動産投資というと、「外国人は土地を所有できない」というイメージから、コンドミニアム(日本でいうマンション)への投資を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
もちろんカンボジアでも、外国人が不動産投資をする場合の王道は、ストラタタイトル付きのコンドミニアムを購入することです。
しかし、投資家としては欲が出るもの。
将来的に大きなキャピタルゲインが期待できる郊外の土地や、売却時に実需も見込める土地付き住宅にも投資してみたいと思いませんか?
実際のところ、カンボジアでは外国人が土地を直接所有することは原則として認められていません。
ですが、実は一定の条件やスキームを活用すれば、土地に投資したり、実質的に保有したりする方法が存在します。
今回は、外国人がカンボジアの土地に投資・所有するための5つの方法について、それぞれの特徴やメリット・注意点をわかりやすく解説していきます。


① カンボジア法人を活用した土地の所有・投資
カンボジアでは、株式の51%以上をカンボジア人(またはカンボジア法人)が保有している会社であれば、土地を所有することが認められています。
つまり、外国企業が49%まで出資する形で現地企業との合弁会社を設立すれば、その会社名義で土地を合法的に所有することが可能です。
さらに、カンボジアの投資法では、外国人や外国企業でも**最長50年間の長期賃借権(リース)**を取得することができ、契約の更新も認められています。
この制度を活用し、外国企業は100%出資の自社法人を別途設立し、その会社に土地を長期リースするという方法が一般的に利用されています。
この場合、土地の所有者が第三者へ売却するには、借主である外国企業の同意が必要となります。
つまり、外国企業の承諾なしに土地を自由に売却したり処分したりすることはできず、実質的に土地を長期間コントロールできる仕組みを構築することが可能です。
このように、現地法人との合弁会社と長期リースを組み合わせることで、外国企業でもカンボジアの土地へ合法的かつ安全に投資できるスキームが確立されています。
② 土地保有信託サービスを利用して土地に投資する
カンボジアで土地保有信託サービスといえば、Canadia Bankの100%子会社であるCANA TRUSTが最も有名です。
「土地保有信託」と聞いても、あまりイメージが湧かない方も多いと思います。
簡単に言えば、自分に代わって信頼できる会社に土地を保有・管理してもらう仕組みです。
外国人はカンボジアで土地を直接所有することはできませんが、CANA TRUSTと信託契約を結ぶことで、土地の名義はCANA TRUSTが保有し、その土地から得られる賃料収入や将来の売却益などの経済的利益は、契約に基づいて投資家が受け取ることができます。
日本でいう「信託受益権」を保有するイメージに近い仕組みと考えると分かりやすいでしょう。
もちろん、このような土地保有信託サービスを提供している会社はCANA TRUST以外にもあります。
しかし、「安心して資産を預けられるか」という点を重視するのであれば、現時点ではカナディア銀行グループのCANA TRUSTは有力な選択肢の一つといえるでしょう。銀行グループならではの信頼性や実績から、多くの投資家に利用されています。
③ カンボジアの市民権を取得して土地を所有する
カンボジアでは、市民権(国籍)を取得すれば、外国人でも自分名義で土地を所有することができます。
これは、1996年に制定された国籍法に基づく制度で、一定の条件を満たした外国人はカンボジア国籍を申請することが可能です。
通常、市民権を取得するためには、7年以上(カンボジア生まれの場合は3年以上)の居住実績に加え、クメール語やカンボジアの歴史・文化・伝統に関する知識が求められます。
一方で、外国人が33万米ドルを国庫へ寄付した場合は、この7年間の居住要件が免除される制度も設けられています。
さらに、2022年7月22日からはCambodia My Second Home(CM2H)プロジェクトが正式にスタートしました。
この制度では、条件を満たした外国人投資家に10年間有効のゴールデンビザが発給され、その期間中はカンボジアへの出入国を自由に行うことができます。
また、一定の条件を満たした申請者は、5年後にカンボジア国籍(パスポート)を申請できる可能性があり、市民権を取得すれば土地を所有できるだけでなく、ASEAN加盟国の国民としてさまざまな権利やメリットを享受できるようになります。
ただし、市民権の取得要件や関連制度は変更される可能性もあるため、検討する際は最新の法令や制度内容を確認することが大切です。
④ 政府との契約(コンセッション)による土地利用
ここまでご紹介した方法とは少し性質が異なりますが、カンボジアには政府から土地の利用権を取得できる「コンセッション制度」があります。
これは、政府の許可を受けることで、個人や法人が一定期間にわたり土地を占有・利用できる制度です。
ただし、この制度は土地そのものを所有したり、将来的な値上がり益(キャピタルゲイン)を狙ったりすることを目的としたものではありません。
代表的なのが経済的土地コンセッション(Economic Land Concession:ELC)で、主に農業や農園開発などの大規模プロジェクト向けに利用されています。
ELCを取得すると、広大な土地を借り受け、農業や産業開発などの事業を行うことが可能になります。
つまり、この制度は土地を保有して資産価値の上昇を狙う投資ではなく、土地を活用して事業収益を生み出すための制度と考えると分かりやすいでしょう。
そのため、今回は「外国人が土地に投資・所有する方法」というテーマからは少し外れるため、番外編としてご紹介しました。
なお、外国人でも利用できる土地の長期賃借(ロングリース)についても同様に、「土地を利用する権利」であり所有権ではないため、本記事では詳しい解説は割愛します。
⑤ 名義貸しと長期リースを組み合わせた投資
最後にご紹介するのが、カンボジア人の名義を借り、長期賃借契約を組み合わせる方法です。
仕組みを簡単に説明すると、
- カンボジア人名義で土地を取得する
- 外国人は長期賃借契約を締結し、その土地を実質的に管理・利用する
というスキームです。
考え方としては、最初にご紹介した「現地法人を活用する方法」に少し似ています。
ただし、この方法は法律で明確に保護された所有形態ではありません。 契約内容や名義人との信頼関係に大きく依存するため、利用する場合は必ず弁護士などの専門家に相談し、適切な契約書を作成することをおすすめします。
実際には、弁護士がノミニー(名義貸し)契約書を作成するケースも少なくありませんが、それだけでリスクがなくなるわけではありません。
まとめ
カンボジア不動産投資の王道といえば、やはり外国人でも所有権を取得できるコンドミニアムへの投資です。
一方で、本記事でご紹介したように、土地への投資にもさまざまな方法があります。それぞれ仕組みやメリット、リスクが異なるため、ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて選択することが大切です。
海外不動産投資の魅力は、こうした多くの選択肢の中から、自分に合った投資方法を選べることにあるのではないでしょうか。
この記事が、カンボジア不動産への投資を検討されている方の参考になれば幸いです。


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荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
代表取締役 / 宅地建物取引士 / 宅地建物取引業 東京都知事免許(2)第99967号
所属団体:一般社団法人RE AGENT 理事長 / 一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC) / 公益社団法人全日本不動産協会
1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。
著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
はじめての海外不動産投資
