強まるアメリカ(米国)の利上げ|景気や投資に与える影響を解説

執筆者:荒木 杏奈

アンナアドバイザーズ株式会社

2022/04/28

3月にFRB(米連邦準備制度理事会)は利上げを開始し、6回に分けて0.25%ずつの利上げを想定しています。
また、計画を前倒しし、5月に0.5%の利上げも検討するなど、より積極的な利上げが行われる見込みが高まっています。

こちらの記事では、このアメリカの利上げが世界経済にもたらす影響や投資について書いていきます。
アメリカの利上げについてより詳しく知りたい方は、ぜひ最後までお付き合いください。

 1. アメリカの利上げの背景と今後の予測 

まず、アメリカはなぜ今回のような利上げに踏み切ったのでしょうか?
米国の経済状況や経済政策、現状について振り返りましょう。

 (1) コロナ禍の経済対策とインフレーション 
コロナウイルスが世界中へ拡大し始めたのが2020年の2月末ごろです。このコロナウイルスの蔓延で、株式などを含めた資産価値の下落「コロナショック」が始まりました。

アメリカももれなくこの影響を受けたのですが、その経済対策としてFRBは金融緩和政策を行いました。金利を引き下げたり、現金の供給を増やしたりする政策です。
この経済対策の結果、米国の経済は成長トレンドへ移行しました。代表的な株式指数が過去最高額を更新したり、失業率が改善したりとコロナ蔓延前以上に経済が伸びたのでは?という声すら上がりました。

一方で、コロナ禍の供給不足や賃金上昇の影響で物価が上昇。いわゆるインフレーションを懸念する声が出てきました。
コロナウイルス蔓延から約1年後の2021年1月には、前年同月比約7.0%程のCPI(消費者物価指数)が上昇となり、インフレーションへの懸念が強まりました。

よって、このインフレーションの対策としてFRBはテーパリング(量的緩和政策の縮小)を決定したのです。

 (2) 引き上げ加速の可能性とロシア・ウクライナ情勢の影響 
2022年3月16日に開始されたアメリカ連邦公開市場委員会(FOMC)において、FRBの利上げは開始されました。年末までの6回の会合で0.25%ずつの利上げが想定されています。

ただ、FOMC直後の21日には「より迅速に」利上げを引き上げる必要性について言及しています。また、今後のCPIの上昇次第では0.5%の引き上げも視野に入れるとの声も出ています。

また、2022年3月よりウクライナ危機による資源価格の上昇という危機も同時に訪れている。大幅利上げに相乗する形でより一層アメリカの経済成長へのストップがかかることが予測されています。

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 2. 国内経済市場の予測と不動産投資への影響は 

では、このアメリカの利上げは、国内の経済市場に対してはどのような影響を与えるのでしょうか。

コロナショックはご存知の通り日本へも大きな影響を与えました。しかし、日本ではインフレ率は0%です。超低金利政策は引き続き継続して行われる可能性は高くアメリカ市場とは異なる状況と言えるでしょう。

アメリカの利上げが国内の不動産市場へ与える影響に関して解説します。

 (1) 円安の進行と輸入価格の上昇 
アメリカの利上げが国内の不動産市場に与える最も予測されるリスクがあります。「円安」の進行です。

アメリカの金利の引き上げで、世界中から多くの資金が高金利目当てに「米国ドル」に集まってきています。資本家たちにとって、超低金利の「日本円」で資本を持つよりも、金利の高い「米国ドル」で資本を持つ方がメリットがあるからです。

大量のドルが変われることで、各国の通貨のドルに対する価格は下落していきます。日本においても「ドル高・円安」が進行します。
円安が進行することで、輸入品の価格の上昇が予測されます。さらに上記で説明した通り、昨今のウクライナ情勢により原油価格が上昇しています。

円安の進行に加え、このイレギュラーな情勢による供給量の低下で、更なる輸入価格の上昇が懸念されています。よって、日用品などにも影響が出ることで家計の圧迫が考えられます。

国内企業も投資先を海外に回すことが考えられるため、この株価の好調もいつまで続くかは予測できません。企業の賃金を底上げするような政策も検討されていますが、そのような余裕のある企業がどれほどあるかは疑問です。
賃金が据え置きでも、この状況で物価が上昇してしまうと実質賃金がさらに下落。「スタグフレーション」化していきます。(賃金が上がらず物価が上がってしまう状態。)

では、これらの状況が不動産市場に対してどのような影響を与えるか考えてみましょう。

 (2) 国内不動産価格の予測は 
アメリカの利上げにより国内の不動産価格は上昇するのでしょうか。下落するのでしょうか。一般的に金利が上昇すると、自己資本比率の低い住宅の価格は下落することが多いです。ローンの金利が上がってしまう為、買い手が付きにくいのです。

日本においては、先程お伝えしたように金利を上げる政策は今の所検討されておらず、ローン金利が影響して買い手が大幅につかなくなると言う点は予測しづらいでしょう。

ただし、結論をお伝えすると、国内の不動産価格は上昇し、国内での不動産購入に影響を与える可能性があります。
理由としては、円安の進行による輸入価格の上昇が予測されるからです。
円安の進行により、海外から輸入している材料や原油の価格が上昇することで建設の費用が上昇してしまうことが考えられます。

米国の金利の上昇による円安の進行に相乗して、昨今の海外情勢による供給量の低下から輸入原材料の価格は高騰するでしょう。現に半導体も入りにくく、木材などの価格も上昇が予測されています。

ここで、今回一番お伝えしたい点は、この不動産価格の上昇は投資の観点で考えるとデメリットばかりではないということです。

ローン金利は上がらずとも、不動産価格が上昇すると、購入する顧客の減少はもちろん予測されます。その為、賃貸物件の市場が拡大する可能性も秘めているのです。
不動産投資といっても不動産の売買益で収入を得る投資と、所有物件を賃貸に出し家賃収入を得る投資の2パターンがあります。

前者においては、買い手市場の減少が予測される為、苦戦が見込まれますが、後者においては、賃貸市場の拡大が投資の回収率の上昇を後押ししてくれる可能性もあるのです
よって、経済情勢を加味しながら自身に向いた投資を検討していく必要があります。

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 3. 利上げ渦中のアメリカの住宅価格の推移 

最後に、実際に利上げが行われ、今後も持続的な利上げが検討されているアメリカの住宅価格はどのように推移しているのでしょうか。

FRBの利上げ決定後、アメリカの国債利回りは大幅に上昇し、それに連動する形で住宅ローン金利も1ヶ月で1%以上上昇するなど、予測されていた通り住宅ローンの金利も上昇しました。

しかし、この利上げ状況下でもアメリカの住宅価格は「大幅な上昇」が見込まれています。
理由としては2点です。

 (1) 供給の問題 
1点目は供給の問題です。
利上げ環境下でもアメリカの不動産市場での住宅に対する潜在的な需要は未だ大きく、それに付随して在庫水準が限りなく低い為、これらの要因が不動産価格の上昇に寄与するであろうとのことです。

 (2) ウクライナ情勢 
2点目はウクライナ情勢です。
2022年3月より勃発したロシアによるウクライナの進行では、当該国だけでなく世界中の経済市場にも大きな影響を与えています。
当初より段階的に計画していたテーパリングによる0.25%ずつの利上げも、この海外情勢の影響で多少なりとも減速する、様子見に入るのでは。と言う見解があるからです。

よって、当面はセオリーに反する形でアメリカの不動産価格は上昇トレンドが継続することが予測されています。

 4. まとめ 

今回は、アメリカの利上げが国内外の経済市場・不動産市場にもたらす影響について解説しました。
様々なトレンドを加味した上で投資先は慎重に検討しましょう。

執筆者:荒木 杏奈

アンナアドバイザーズ株式会社

日本とカンボジアを拠点に、国内・海外不動産業を展開。

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荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

宅地建物取引士 / 1984年生まれ、東京都出身。
大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。
2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。

著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
   はじめての海外不動産投資