カンボジアで会社を設立する手順とは?必要書類・費用・サポート業者を徹底解説

執筆者:荒木 杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

カンボジアは経済成長が著しくビジネスに適した環境であることから、外国人投資家だけでなく海外企業の進出先としても注目を集めています。
カンボジアは海外進出する企業から人気を博している一方で、カンボジアに会社を設立するための方法についてはあまり知られていないのではないでしょうか。

今回は、カンボジアで会社を設立するための手順や費用について詳しく解説します。

なお、弊社はカンボジア進出時の会社登記手続きや弁護士・税理士の紹介などのトータルコーディネートを承っております

カンボジアに進出している日系企業は約1,300社

JETRO(日本貿易振興機構)の調査によれば、2022年時点でカンボジアに進出している日系企業は1,290社で、業種の割合は以下の通りです。

  • サービス業614社(47.6%)
  • 貿易業250社(19.4%)
  • 建設・不動産業152社(11.8%)
  • 製造業90社(7.0%)

出典:JETROビジネス短信「約1,300社の日系企業が事業を継続、サービス業が最多(カンボジア) 2022年5月11日

カンボジアに進出した日系企業には、次のような実例があります。

  • イオン(サービス業):大型商業施設イオンモールをプノンペンに3店舗オープン。ランドマークとして注目を集める
  • TANICHU ASSETMENT CO.,LTD(建設・不動産業):タニチュウアセットメント。カンボジア国内最高級のコンドミニアム「J-Tower」シリーズを開発・販売し、海外富裕層・国内高所得者の人気を集める
  • トヨタ(製造業):自社製品の組み立て工場をカンボジアの経済特区に設立。カンボジアの産業技術の発展に貢献する

JETROの調査によれば、カンボジアに進出した日系企業のうち約半数は営業利益について「改善」と回答しており、「悪化」と回答した企業は1割以下でした

※カッコ内は有効回答数で、2024年は2023年時点での予測値
出典:JETRO「2023年度海外進出日系企業実態調査」

東南アジア諸国に進出した日系企業が営業成績を「改善」と回答した割合はインドネシア・ラオスの順に多く、次いでカンボジアでした。

カンボジアで会社を設立するメリット5選

海外企業がカンボジアに進出する際には多くのメリットがあり、進出を促す要因になっています。
ここでは、海外企業がカンボジアに進出するメリットを5つに分けて解説します。

若年層が多く将来的な労働力が豊富

カンボジアの人口構成は以下のグラフが示すように、生産年齢人口(15〜64歳)の割合が非常に多いです。

出典:PopulationPyramid.net「世界の人口ピラミッド カンボジア2024年」

さらに若年層(15〜34歳)も大きな割合を占めており、国民の平均年齢は27歳といわれていることから、カンボジアでは長いスパンで豊富な労働力が期待できます
若年層の多いカンボジアの人口構成は、GDP成長率の上昇とも深い関係があります。

政府が外資の誘致に積極的

カンボジアではフン・マネット首相が外国と活発に経済交流する指針を示しており、政府主導のもとで外資を積極的に誘致しています。
カンボジア周辺国とも共同で経済特区構想が進行中で、カンボジアの経済特区内では海外企業に以下のような優遇措置を適用しています。

  • 資材・原材料・生産設備にかかる付加価値税を免税(製造業が対象)
  • 経済特区内の企業間での物資調達にかかる付加価値税を免税(製造業が対象)
  • 省庁と連携して経済特区内のワンストップサービスを導入

日系企業専用の経済特区構想も進行しているため、今後も日系企業の進出が増えていくことが予想されています

海外企業の資本金のみで会社を設立可能

カンボジアでは、外国企業が出資比率100%で会社を設立することが可能です。
カンボジア国内の資本を必要とせずに会社を設立できるため、スムーズに会社を設立しやすいというメリットがあります。
後述するように、カンボジアで設立する会社形態は「私的有限会社」または「公開有限会社」のいずれかです。

有限会社の設立には、カンボジア資本が100%の内国法人または海外とカンボジアで資本を出資する合弁法人もあります。
会社の設立自体は海外企業の資本金のみで完結できますが、土地を取得したい場合はカンボジア国内の資本も必要となるので要注意です
カンボジアで土地を取得する方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

法人税が20%と日本よりも少額

2025年現在の日本国内の法人税は23.2%ですが、カンボジアの法人税は20%です。
日本よりも法人税の比率が少ないため、年商(事業売上)が大きい企業ほど利益を確保しやすくなります

例えば年商が10億円の企業ですと、日本では法人税が2億3,200万円ですが、カンボジアでは2億円です。
税額が少ないため売り上げが多いほど節税しやすく、より潤沢な資金での事業運用が期待できます。
なお、カンボジアでは会社の決算を1ヶ月ごとに行わなくてはならないので要注意です。

ドル建てで資金を運用可能

カンボジアでは国内の大半の地域で米ドルが流通しており、実質的な基軸通貨になっています。
事業上の取引でも米ドルを使用するため、米ドルでの資産を保有が可能で、為替リスク対策に繋がりやすいです

また、カンボジアでは銀行預金も米ドルで保管でき、海外送金に制限がありません。
汎用性の高い米ドルを制限なく海外に送金できるため、スムーズかつスピード感のある資金繰りが可能です。

カンボジアの会社設立を設立する際のデメリット3選

カンボジアで会社を設立する際には、デメリットや注意点があります。
ここでは、カンボジアで会社を設立する際のデメリット・注意点を3つ説明します。

申請書類に日本語が使用不能

カンボジアでの会社設立や銀行口座開設に必要な申請書類は、クメール語または英語で表記されている場合が多いです。
申請書類には重要事項が多く記載されていますが、日本語を使用できない場合、解読や必要事項の記載に戸惑ってしまうかもしれません。
特に、会社登記に関する専門的な用語については、ある程度の語学力を有していても理解しづらい可能性があります

カンボジアで会社を設立する際の申請書類は、語学力に長けており専門的な知識を持っている弁護士や税理士のサポートを利用するのがおすすめです
弊社では、企業のカンボジア進出にあたって、弁護士や税理士の紹介を行っております。

周辺国よりも電気代が高額

カンボジアでは民間企業が発電した電気を国営企業が送電していますが、自国の発電量だけでは必要な電力を賄えていません。
カンボジア国内で必要な電力の多くをタイやベトナムからの輸入に頼っており、輸入コストが上乗せされているぶん、電気代が高額になりやすいです。

また、全国的な送電網の整備が行き届いておらず、停電も発生しがちです。
事業を行う上で、電力の供給が不安定で高額な点はネックになりやすいでしょう。

カンボジア人と日本人とで異なる国民性

カンボジア人には文化的背景や慣習の違いから、以下のように日本人にとってはルーズに感じやすい性質がみられます。

  • 遅刻の頻度が多い(平均30~1時間ほど)
  • 短期間での辞職に抵抗が少ない(より良い条件を選びやすく1ヶ月程度で転職する場合もある)
  • 正当性の低い理由で遅刻や欠勤をしやすい(同じ親族の逝去のために欠勤するなど正当な理由として受け入れがたい場合がある)

当然、すべてのカンボジア人に該当するものではありませんが、荒木自身がカンボジア人を雇用する上で複数回体感してきた特徴でもあります。
カンボジア人と日本人を同時に雇用する場合、慣習や価値観の違いから両者に軋轢が生じてしまう可能性があるので要注意です。

カンボジアでの法人形態は私的有限会社がおすすめ

海外企業がカンボジアで会社を設立する際の企業形態は、有限会社が一般的です。
有限会社は仮に会社が倒産しても責任範囲は出資資本の上限にとどまり、それ以上の債務を負う必要はありません。(個人事業主は例外なので要注意)

有限会社はさらに「私的有限責任会社」と「公的有限責任会社」に分類されますが、株式を証券所などに広く一般公開するかどうかの違いがあります。
公的有限会社が株式を一般公開するのに対し、私的有限会社は株式を非公開にしたままで事業を営めます。
私的有限会社は第三者による介入を防ぎやすく、一人会社も設立できるため、カンボジア進出にあたっておすすめの企業形態です。

カンボジアでの会社設立方法は5通り

カンボジアで会社を設立する際の企業形態は、大きく5つに分けられます。
それぞれの企業形態について、詳しく解説します。

現地法人の設立 | 海外企業の多くに選択されている方法

現地法人を設立する際の企業形態は私的有限責任会社となり、カンボジア国内に設置する会社は本国の子会社であるケースが主流です。
現地法人の設立には、下の表のような条件や特徴があります。

商号固有の商号を使用可能だが、既存企業の類似称号は認可されない可能性があるので注意が必要
資本金最低1,000株で400万リエル(リエル1株が4,000リエル) ドル換算で約1,000ドル
所在地カンボジア国内の住所を登記
取締役私的有限会社は1名、公開有限会社は3名以上の自然人で国籍・居住地は不問
原則として取締役会議を3ヶ月に1回以上実施する必要あり
責任範囲有限(債務は各出資者の資本金の範囲内)
納税法人税・源泉徴収税・個人所得税・付加価値税が課税対象

表中の自然人とは、権利・義務の主体となる個人(人間)のことで、法人との区別のために用いられます。
付加価値税とは日本の消費税と同様の性質を持つもので、物やサービスに対して課される税金です。

現地法人は業種・業態の自由度が高く、倒産時のリスクも少ないことから、海外企業の多くが採り入れている企業形態です。

パートナーシップの構築 | 医者・士業などに適した方法

パートナーシップは複数名の契約によって設立される企業形態で、以下のように一般パートナーシップまたは限定パートナーシップのいずれかです。

  • 一般パートナーシップ:2名以上の自然人または企業の契約によって成立する。各パートナーは共同出資者として利益を共有しともに事業を運用するほか、債務についても無限に責任を負う。契約は口頭または書面で締結できる
  • 限定パートナーシップ:1名の一般パートナー+複数の限定パートナーまたは複数の一般パートナー+1名の限定パートナーで成立する。一般パートナーは代表権を得て事業を運用し、限定パートナーは利益を共有できるが出資金の範囲内で債務の責任を負う

パートナーシップが適用される業種は医者・弁護士・税理士などに限定されており、実際にパートナーシップで設立された企業は少数にとどまっています。

支店の設立 | 現地法人と同等の権限で活動可能

カンボジアで支店を設立する場合、支店は独立した法人として扱われず、債務責任は親会社に帰属します。
カンボジアの法令で禁止された行為でなければ、ほかの企業と同じく物品の製造・販売・加工やサービスの提供が認められます。
支店の特徴は以下の通りです。

商号親会社と同一の商号にする必要があり、商号の前に「Branch」という表記が必要
資本金不要
所在地カンボジア国内の住所を登記
取締役不要(親会社の決定に従う)
責任範囲債務責任がなく親会社に帰属する
納税法人税・源泉徴収税・個人所得税・付加価値税が課税対象

現地法人と同等の事業活動が可能ですが、商号に関する制約があるほか取締役・責任範囲などは親会社にあるため、意思決定に関する権限は限定的です。

外国人駐在所 | カンボジア国内での営業活動は不可

外国人駐在所は、主に親会社との業務連絡や市場調査などを目的として設立します。
外国人駐在所では商品の販売・製造・加工やサービスの提供といった営業活動は認められておらず、業務の内容が限定されます。
外国人駐在所の特徴は以下の通りです。

称号親会社と同一にする必要があり、親会社の称号の前に「Representative Office」の表記が必要
所在地カンボジア国内の住所を登記
業務連絡業務・市場調査・宣伝活動のみ(直接の営業活動は不可)
納税事業税・源泉徴収税・個人所得税(法人税は免除)

駐在員に給与を支払うため、給与に対する税金が発生しますが、業務内容の性質から法人税の課税対象にはなりません
現地従業員との間には雇用契約・不動産の賃貸借・水道光熱費に関する契約のみを締結できますが、そのほかの契約は不可能です。

個人事業主 | 法人よりも設立手続きは簡便

カンボジアでは、個人事業主での営利活動が認められています。
個人事業主としての開業は、法人よりも手続きが簡便で開業のための費用も少ないのが特徴です。
意思決定は事業主に委ねられているため自由度の高い活動が可能ですが、1社につき1事業と制限があります。

また、債務については事業主本人が無制限に責任を負うため、債務の度合いによっては個人資産を失う可能性があります。

カンボジアで会社設立に必要な費用

カンボジアでは会社設立にあたって各省庁に届け出をしますが、届け出・手続き時に一定の費用が発生します。
カンボジアで会社を設立する際に発生する主な費用は以下の通りです。

費用項目金額(ドル)管轄省庁・管轄機関
資本金1,000~
商号予約6.25商業省
商号登録252.5商業省
納税者登録100租税総局
パテント税登録50~375租税総局
事業所開設申告30労働職業訓練省
会社台帳登録20労働職業訓練省
従業員給与台帳登録20労働職業訓練省
銀行口座証明書10銀行・租税総局
合計1,163.75~1,488.75
※上記費用は目安でカンボジア法制・国際情勢などで変更になる場合があります

それぞれの費用の内容は以下の通りです。

  • 商号予約費用:会社名となる商号を申請するための予約費用
  • 商号登録費用:商号を商業省に申請し、登録するための費用
  • 納税者登録費用:事業を行う上で発生する税金を支払うための登録費用
  • パテント税登録費用:事業税ともいわれるもので、事業規模によって小:約50ドル・中:約150ドル・大:約375ドルが発生
  • 事業所開設申告費用:カンボジアで外国人が就労するためのワークパミット(労働許可証)を取得するための費用
  • 会社台帳登録費用:労働職業訓練省からの監査に用いる台帳のための費用
  • 従業員給与台帳登録費用:従業員の給与を記録する台帳のための費用
  • 預金口座証明証:租税総局の税務登録に必要な銀行口座の残高証明書を取得するための費用

1ドル=150円の場合、約17〜22万円がカンボジアの会社設立手続きにかかる費用の目安です
省庁に会社設立を届け出る費用以外には、オフィス賃貸または購入費や代表者および従業員の住宅・OA機器や什器類の調達費用などが必要になると考えられます。

弊社では、海外に進出する企業向けに、不動産の仲介やオフィス用品の手配などの総合的なサポートをご提供しております

カンボジアの会社設立手続きをステップごとに確認

実際にカンボジアで会社を設立するための具体的な手順を段階別に解説します。
手続きで交付される書類については、以下のチェックリストをご活用ください。

発行元の省庁書類名チェック
商業省

設立証明書⬜︎
商業登録情報⬜︎
租税総局パテント税証明書⬜︎
VAT登録証書⬜︎
税務登録IDカード⬜︎
税務申告の通知書面⬜︎
労働職業訓練省事業所開設申告の承諾書⬜︎
出典: 日本貿易振興機構プノンペン事務所「カンボジア会社設立マニュアル 2021年2月(改訂版)」

オフィス用物件の確保・カンボジア銀行の口座証明書の発行・各省庁での申請など、すべての手続きが完了するまでの期間は、約1〜2ヶ月を想定しておくとよいでしょう。
弊社ではオフィス物件を仲介するほか、カンボジアの会社設立に豊富な知見のある弁護士・税理士のご紹介も可能です

STEP1 | オフィス物件の選定

カンボジア進出にあたってオフィスを開設する予定があれば、まずは物件を確保しておいてもよいでしょう。
カンボジアで現地法人名(商号)を登記する際に、カンボジア国内の所在地が必要になるため、前もって物件を確保しておくと申請がスムーズになりやすいです。

カンボジアでオフィス物件を選定する際、現地で候補物件を視察するのがベストですが、仕事の合間を縫っての現地渡航は難しいかもしれません。
現地視察が難しい場合はオンラインで物件を契約するほか、便宜的にバーチャルオフィスの住所を登記するという選択肢も考えられます。
弊社ではオフィス物件の現地視察・オンライン内見の両方を承っており、契約手続きについてもオンライン・オフラインともに対応可能です

STEP2 | 現地での商号を決定

なるべく早い段階で、事業を展開する際の看板となる現地での商号(法人名)を考えておきましょう。
既存の法人と類似した名称は認可されない場合があるので注意が必要です

そのほか、現地での資本額やオフィス所在地・業務内容なども決定しておきましょう。
現地での法人名が決定したら、カンボジアの商業省ウェブサイトに以下の必要事項を記載し、法人名が使用可能かどうかを照会します。

  • 事業目的・事業活動 (5つを上限とする)
  • 登録住所(カンボジア国内の会社住所)
  • オフィスの月額賃料(賃借の場合)
  • 連絡先情報(会社のemailアドレス・電話番号)
  • 株式の種類・資本金額の情報(現地法人の場合)
  • 取締役または代表者の情報(氏名・カンボジア国内の住所・email・電話番号およびパスポートなど)
  • 株主および登録株主代表者についての情報(支店の場合は親会社の情報)

出典: 日本貿易振興機構プノンペン事務所「カンボジア会社設立マニュアル 2021年2月(改訂版)」

商号に問題がなければ予約が成立したのち、予約費用である6.25ドルが発生します。
商号の照会から予約の成立までは3〜7日間程度で完了し、予約の成立した商号は約3ヶ月間有効です。
なお、カンボジアでは会社設立に関する制度・法案が改正され、各種手続きで発生する費用は手続き完了後に一括して支払えるようになりました

STEP3 | 商業省に提出するための必要書類を用意

商業省で商号の予約が成立したのちに、商号の申請に必要な以下の書類を提出します。

  • 登録住所地の登記または賃貸借契約書
  • 英語表記の定款(支店・駐在員事務所は親会社のもの)
  • 取締役と株主全員のパスポートまたはクメールIDカード
  • 取締役と株主全員の顔写 (4×6cmサイズ、3ヶ月以内に撮影したもので背景は白)
  • 取締役と株主代表者の就任承諾書
  • 法人または親会社の登録証書(英語表記の履歴事項全部証明書)
  • 法人または親会社設立の決議書(通常は取締役会議事録)

出典: 日本貿易振興機構プノンペン事務所「カンボジア会社設立マニュアル 2021年2月(改訂版)」

定款などの書類は日本語では受理されず、英語に翻訳して公証役場などで宣誓供述する必要があるので要注意です。
英語での書類作成に自信がなければ、海外法人の設立に詳しい弁護士に書類作成を委任するのもおすすめです
弊社では、カンボジアでの会社設立を扱う弁護士を紹介しております。

STEP4 | 商業省ウェブサイトで商号を取得

必要書類が揃ったら商業省に書類データをメール等で送付し、商業省による書類確認が行われたのちに商号が登録されます
商業省より商号を登録完了したメールが送付され、労働省にも申請した商号が通達されます。
商号の取得とともに登録費用が発生し、金額は222.5ドルです。
商業省に書類を提出し、商号の登録が完了するまでの期間は約2週間〜1ヶ月です。

STEP5 | 租税総局で税務登録

商業省で商号を取得したのち、租税総局で納税に関する手続きを行いますが、商号の登録から15日以内に手続きを完了する必要があるので要注意です。
租税総局の手続きでは、以下のような情報提供が求められます。

  • 会計年度
  • 従業員情報(想定採用人数・想定総報酬額)
  • 事業所の看板(既に設置している場合は画像を提出)
  • 想定する売上金額
  • パテント登録上の名義人
  • 所在地不動産の固定資産情報

出典: 日本貿易振興機構プノンペン事務所「カンボジア会社設立マニュアル 2021年2月(改訂版)」

租税総局では銀行口座残高証明書を提出し、納税者登録費用として100ドルが発生します。
また、事業規模に応じて以下のパテント税(事業登録税)も発生します。

  • 小規模事業:約50ドル
  • 中規模事業:約150ドル
  • 大規模事業:約375ドル

租税総局での手続きは代表者本人が窓口で申請し、顔写真や指紋を提出するほか、サインや拇印が必要なので注意しましょう。
カンボジアでは正式書類のサインには青ペンを用います。

STEP6 | 登記証書・納税書の発行

租税総局での手続きが完了すると、商業省より設立証明書・定款・社印が発行されます。
租税総局からは、税務申告書・税務登録IDカード・パテント証明書・VAT登録証明書が発行されます。
VATは付加価値税ともいわれるもので、日本での消費税にあたる税金です。
租税総局での手続き期間の目安は約2週間〜1ヶ月です

STEP7 | 法人口座を租税総局に登録

租税総局での税務登録から2週間以内に事業運用のための銀行口座を開設し、銀行口座証明書を租税総局に提出する必要があります
手続きを怠ると税務登録が無効になるため、忘れずに口座を開設しましょう。
カンボジアの銀行は非居住者による口座開設が可能で、オンラインや郵送のみで口座開設手続きを完了できるケースも多いので、渡航前の口座開設も効率的です。

カンボジアの銀行口座開設は事業を行う上で必要になりますが、預金金利が日本よりも高いので、資金運用の観点からも大きなメリットがあります
弊社では物件視察と口座開設をセットにした現地ツアーの開催のほか、銀行口座開設の単独サポートも承っております。
カンボジアでおすすめの銀行については、こちらの記事で詳しく解説しています。

STEP8 | 労働職業訓練省で雇用に関する手続きを完了

労働職業訓練省では、就労や従業員雇用に関する以下の手続きを行います。

  • 事業所開設申告:事業所の開設や従業員雇用のための申請
  • 会社台帳登録:労働省からの監査に用いる台帳の登録
  • 従業員給与台帳登録:従業員の給与額を記載するための台帳の登録

事業所開設申告では約30ドル、会社台帳登録・従業員給与台帳登録にはそれぞれ約20ドルが発生します。
カンボジアでは会社設立手続きの簡略化のために新システムを導入し、ある程度の省庁間の連携が実現しましたが、会社台帳登録・従業員給与台帳登録は別途手続きが必要です

STEP9 | 従業員を雇用

労働職業訓練省での申請が完了すると、従業員の雇用が可能になります。
労働職業訓練省では、想定する雇用人数や所定労働時間、週休の情報を求められます。
日本と同様、カンボジアでも以下のように労働基準法が制定されているため、法令を遵守するように心がけましょう。

  • 労働時間:1日8時間以内(週48時間以内)
  • 休日:原則として日曜日(週6日を超える労働は不可)
  • 有給休暇:年18日(3年ごとに1日追加)
  • 最低賃金:1ヶ月170ドル(縫製業など)
  • 社会保険:会社側が全額負担し、給与額に応じた保険料を社会保険基金に納入

外国人とカンボジア人の従業員比率は1:9以内にする必要がありますが、労働職業訓練省の許可を得ている場合は、例外が認められます。
外国人の就労にはワークパミット(労働許可証)が必要になるので要注意です。
商業省・租税総局・労働職業訓練省での手続きが完了すれば、無事に会社を設立できます。

カンボジアでの会社設立は業種によってライセンスが必要

カンボジアで会社を設立する際、業種によっては以下のようにライセンスの取得や条件が必要になります。

業種監督省庁備考
飲食店観光省衛生証明書、消防・消火証明書が必要
ホテル・ゲストハウス観光省消防・消火証明書が必要
旅行代理店観光省保証金の支払いが必要
不動産サービス業経済財政省無犯罪証明書の提出が必要
保険代理店
ブローカー業
経済財政省無犯罪証明書の提出が必要
通関業関税・消費税総局通関に関する専門家が必要
運送業公共事業運輸省トラックについても登録が必要
診療所・病院保健省代表者は要カンボジア国籍
実習生の海外送出事業労働省51%以上の株主兼代表者は要カンボジア国籍
保証金の支払いが必要
教育機関教育・青少年・スポーツ省審査あり
※一部の業種を抜粋
出典:日本貿易振興機構プノンペン事務所「カンボジア会社設立マニュアル 2021年2月(改訂版)」

例えば、不動産業では過去に犯罪行為がないという証明を経済財政省に届け出ることが開業の条件に指定されています。
条件に該当せず、無許可のままで事業を行うと、処罰の対象になる恐れがあるので要注意です。

カンボジアのオフィス価格相場をパターン別にチェック

カンボジアで会社を設立するには、事業の拠点となるオフィスの確保も重要です。
カンボジアで事業を営む際は、都市機能が発展しており、オフィス物件数が豊富なプノンペン周辺がおすすめです
ここでは、賃貸・購入・個人事業主の3パターンに分けて、プノンペン周辺のオフィスの価格相場を紹介します。

賃貸 | 一般的なオフィスは約10~20万円

プノンペン周辺でオフィスを借りる場合、賃料の目安は月額500〜600ドル(1ドル=150円で7万5,000〜9万円)です。
50㎡程度のオフィススペースにトイレが付いており、エアコンは天井に埋め込まれたタイプの物件が多くあります
官公庁や商業施設へのアクセスが近いオフィスが点在しています。

街中の貸店舗の価格相場は、50㎡程度の物件で月額1,000〜2,000ドル(1ドル=150円で15万〜30万円)程度です。
ランドマーク的な高層ビル内にあるテナントはより多くの集客力が期待できる反面、入居のための競争率が激化しやすく、賃料も高くなりやすいでしょう。

貸倉庫の価格相場は2,000〜3,000ドル(1ドル=150円で30万〜45万円)と他タイプのオフィス物件よりも高額ですが、600〜1,000㎡と非常に広いのが特徴です

購入 | オフィススペース+トイレ付き物件が1,000~2,000万円台

プノンペンで50㎡程度の一般的な物件は、円換算1,000〜2,000万円台で購入できるケースが多いです。
オフィススペースにトイレ・シャワールームが付帯した物件などもあり、事務所以外にも店舗としても利用が可能です

プノンペン市内には約30〜40階建ての高層オフィスビルが複数あり、最新システムを導入したオフィスや店舗物件もあります。
高層ビル内のオフィス・店舗の価格相場は一般的な物件よりも高額になりやすいですが、オフィス機能の向上や高い集客力が期待できます。

個人事業主 | コンドミニアムをオフィス利用する場合は選択肢が多数

近年はライフスタイル・価値観の多様化や通信機能の向上に伴って、会社組織に属さず自由に働きやすい個人事業主やフリーランスを選ぶ方も増えています。
カンボジアで個人事業を営む際は、開業手続きが簡便なほか、アパート・コンドミニアムを自宅兼オフィスとして利用するといった選択肢もあります。
居住用物件はオフィス用物件よりも多く、予算や目的に合わせて物件を選びやすいのもメリットです

プノンペンのコンドミニアムの月額賃料は300〜1,000ドルが相場です。
中古物件であれば、高級コンドミニアムが1,000万円台から購入可能です。
個人事業主として登記する際に自宅住所を用いたくない方は、カンボジア国内のバーチャルオフィスの住所を利用するとよいでしょう。
ただし、コンドミニアムをオフィス利用する場合は、バーチャルオフィスの利用も含めて仲介業者や物件オーナーに承諾を得ておいたほうが安全です

オフィスを契約する際の必要書類

オフィスを法人名義で契約する際は、以下の書類が必要です。

  • 代表者のパスポート
  • パテント税証明書
  • 設立証明書

会社設立手続きに先立ってオフィスを契約する場合、設立証明書がないので一旦は個人名義での契約となります。
個人名義でオフィスを契約した場合、登記手続きの完了後に改めて法人名義で契約しなおす必要があるので要注意です。

アンナアドバイザーズは企業の海外進出をトータルコーディネート

弊社は日本とカンボジアの両方にオフィスを設置しており、個人のお客様の資産形成サポートのほか、企業の海外進出のトータルコーディネートも承っております
弊社サービスの詳細について、詳しく説明させていただきます。

オフィス | 賃貸・売買ともに多数の仲介実績あり

弊社ではカンボジアを中心に不動産物件の賃貸・売買を多数仲介しております。
居住用物件のほか、オフィス物件も積極的に扱っており、貴社のご要望に合わせた物件を仲介可能です。
物件の仲介に加え、必要に応じて内装工事の手配やOA機器・什器類の調達も承れます

少人数でのオフィス物件・居住用物件の現地視察に随時対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
ご多忙で現地に渡航する時間が取りづらい方には、オンラインでの物件契約も承っております。

銀行口座 | 法人口座の開設も日本語で万全サポート

カンボジアの会社設立には現地の法人口座が必要ですが、金利が高く資産形成の観点からも銀行口座の開設をおすすめしております。
カンボジアの銀行口座は非居住者でも開設可能で、国外からでも手続きが完了できるなど多くのメリットがあります。

現地法人の設立手続きに先立って銀行口座を開設しておけば、その後のスケジュールに余裕が生じやすくなるでしょう。
一部の銀行窓口は日本語に非対応ですが、弊社ではスタッフがお客様と銀行員に介在し、日本語と英語を用いてサポートいたします。

弊社では個人・法人ともにカンボジアの銀行口座開設のサポートを承っており、個人用口座・法人用口座の同時開設が可能です
口座開設後のアフターサポートもご提供しており、お困りごとには日本人スタッフが応答いたします。
不動産視察と銀行口座開設をセットにした現地ツアーも積極的に開催しておりますので、ぜひご参加ください。

手続き | カンボジアでの会社設立を一貫してサポート

弊社ではプノンペンの自社オフィスを開設した経験をもとに、企業のカンボジア進出を総合的にサポートしております。
ご希望に合わせて、事業の拠点となるオフィスや代表者・従業員の自宅を仲介可能です。
オフィスのOA機器・什器などの調達以外にも、オフィス・店舗用の内装工事の手配にも対応いたします。

初めてのカンボジア進出では、会社設立手続きに不安があるかもしれませんが、登記手続きに詳しい弁護士をご紹介可能です。
カンボジアでは、企業が毎月決算を行う必要がありますが、煩雑な経理業務を解消するための税理士もご紹介しております。

カンボジアの会社設立を代行する業者は複数ありますが、不動産の仲介や内装工事・銀行口座開設・登記手続きなどを包括してサポートできるのは弊社ならではの強みです

まとめ

カンボジアは経済状態が良好で、海外から進出する企業が増えています。
カンボジアで会社を設立する際は、株式に第三者が介入せず債務リスクの少ない私的有限会社を選ぶのがおすすめです。
会社登記手続きにかかる期間の目安は約1ヶ月で、各省庁での手続きを忘れないように注意しましょう。
定款など、一部の書類は英語表記にする必要があるので要注意です。
早い段階で事業の拠点となるオフィスや、現地居住のための住宅を確保しておくことも重要です。

弊社ではオフィス・居宅の仲介のほか、内装工事の手配・会社登記や決算サポートのための弁護士および税理士の紹介・銀行口座の開設を承っております
カンボジア進出のトータルコーディネートは、ぜひ弊社におまかせください。

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荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

代表取締役 / 宅地建物取引士 / 宅地建物取引業 東京都知事免許(2)第99967号
所属団体:一般社団法人RE AGENT 理事長 / 一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC) / 公益社団法人全日本不動産協会
1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。
著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
   はじめての海外不動産投資