執筆者:荒木 杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
海外不動産投資に興味がある方の中には、カンボジアのコンドミニアムに投資すると儲かる、利回りが二桁に達することもあるなど、カンボジア不動産投資を称賛する声をきいたことがある方も多いでしょう。
しかし、実は失敗事例も少なくありません。
そこで本記事では、実際にあった失敗事例と失敗を回避するコツについて解説します。
カンボジア不動産投資に興味がある方や、海外不動産で失敗したくない方はぜひ最後までお読みください。
カンボジア不動産投資とは?特徴について
カンボジアは経済成長による影響で物価が上昇し、それに伴い不動産市場も賑わっており不動産価格も値上がりしています。
そのため投資家からも注目を集めており、キャピタルゲインを期待できることが特徴です。
さらに、賃料が入金されることによるインカムゲインも期待できます。
カンボジアでは現地通貨として米ドルが流通しており、不動産の家賃収入を米ドルで受け取れます。
通貨として米ドルは信頼性が高いので、為替リスクを抑えながら投資できることが魅力です。
また、カンボジアではプレビルド方式が採用されており、不動産を安く購入できるのも特徴のひとつです。
プレビルド方式は、コンドミニアムを竣工する前に購入する方法で、金銭面での負担を軽減できます。
カンボジア不動産投資で実際にあった失敗事例10選
魅力的な部分も多いカンボジア不動産投資ですが、絶対に成功するわけではありません。
大きな失敗につながらないように、カンボジア不動産投資で実際にあった失敗事例をあらかじめ確認しましょう。
(1) 情報不足のため、相場より高い金額で買ってしまった
カンボジア不動産投資では、購入する不動産への情報が不足していたので、相場より高い金額で買ってしまったという失敗があります。
不動産仲介会社によっては、外国人に対して相場よりも高い金額で物件を販売するケースがあるため売買の際は注意しなければいけません。
購入価格が相場より高いことは、日本人価格と言われるほどよくある失敗例です。
カンボジア不動産投資をする際に無駄に費用をかけたくない方は、エリアや築年数などの条件が似ている物件を数件比べて、物件価格の相場を把握しておくとよいでしょう。
(2) 手付け金を支払ったあとに建設が止まってしまった
手付金を支払ったあとに、建設が止まってしまったという失敗事例もあります。
カンボジアの不動産業界は未熟であるため、法規制が十分ではありません。
中小規模のデベロッパーの場合、資金繰りの悪化などで進捗が乱れ、工事が途中で中止されてしまい、物件の引き渡しがされない可能性があります。
しかし、工事が中止されたからといって手付金や頭金が返ってくることはないため、注意が必要です。
(3) 供託制度がないため、不動産会社とトラブってもお金が返ってこなかった
カンボジアは供託制度がないため、不動産会社とトラブルになってもお金が返ってこなかったという失敗事例があります。
供託制度は本来、不動産会社が供託所へ事前に供託金を支払うことで何らかの問題が発生した場合に購入者がお金を受け取れる制度です。
しかし、カンボジアは不動産取引に関連した法整備が整っていない状態であるため供託制度が存在しないことがデメリットでしょう。
供託制度がないことで、全てのお金が返ってこないというトラブルに巻き込まれる可能性があります。
(4) お金を払ったあとに、不動産会社が消えていた
お金の支払いをおこなったあとに、不動産会社が消えてしまうというケースもあります。
カンボジアの経済は右肩上がりであり、不動産価格も上昇しているため、魅力的な投資先だといえます。
しかし、詐欺をおこなう方がいるのも事実です。
収益が高く儲かると魅力的な話を持ちかけられ、お金を支払ったあと不動産会社と連絡が取れなくなったというケースは少なくありません。
(5) 面積表記の知識がなく、思っていたより狭い物件を買ってしまった
面積表記の知識がなかったために、思っていたよりも狭い物件を購入してしまうケースがあります。
理由は、カンボジア不動産の面積表記がグロス面積とネット面積の2種類あることです。
グロス面積は、共用廊下などを含めた建物全体の延べ床面積を戸数で割り戻して算出した面積のことです。
一方ネット面積は、住戸ごとに計測した面積を意味しています。
そのため、住戸の正確な面積を把握する際はグロス面積ではなく、ネット面積を用います。
(6) 外国人が住んでいないエリアの物件を購入し、なかなか入居者が決まらなかった
外国人が住んでいないエリアの物件を購入してしまい、なかなか入居者が決まらないというケースがあります。
仮に外国人向けのコンドミニアムを購入しても、入居者がいなければ投資として成り立ちません。
とくに首都プノンペンはコンドミニアムの建設が相次いでいるため、入居者が確実に入るのかあらかじめシミュレーションをおこなっておく必要があります。
(7) ハードタイトルという登記済権利証を受け取れなかった
ハードタイトルという登記済権利証を受け取れなかったという失敗事例もあります。
日本の不動産登記とは異なり、カンボジアの登記済権利証はソフトタイトルとハードタイトルの2種類あります。
ソフトタイトルは、不動産取引があったことのみを証明する書類であり、物件所有権の証明にはなりません。
そのため、ハードタイトルがない場合、物件の所有権を法的に主張することはできません。
(8) 購入後のアフターサポートがなかなか決まらなかった
購入後のアフターサポートがなかなか決まらないケースもあります。
日本の不動産仲介会社のサポートは充実しているため、日本と同様のサポートを受けられる感覚でいるとサポートがなくて困惑することもあるでしょう。
現状、カンボジアでは購入から購入後のサポートまですべてサポートしてくれる仲介業者は多くありません。
そのため、購入後のアフターサポートがなかなか決まらず、取引に影響が出ることもあります。
(9) 現地の管理会社に管理を任せていたら、管理がずさんだった
現地の管理会社に賃貸管理や建物の管理などをまかせていたが、管理がずさんだったという失敗事例も存在します。
カンボジアの物件のなかには、完成してから数年しか経っていないのに劣化の激しい物件もあります。
物件の購入時にメンテナンスの頻度や報告の有無を確認しておかなければ、購入した物件が数年後にはボロボロになっていることもあるでしょう。
(10) 高級コンドミニアムを購入したものの、なかなか売却ができなかった
高級コンドミニアムを購入したものの、売却時になかなか売れず困ってしまったというケースもあります。
不動産を売却する際は買い手を見つけなければいけませんが、自身で買い手を見つけるのは簡単ではありません。
カンボジア現地の買い手と幅広いネットワークを持っている仲介会社を利用しなければ、日本人の限られたマーケットのなかだけでは限界があるでしょう。
よって、出口戦略も考え、売却までをイメージしながら物件の購入を検討するとよいでしょう。
また、なかなか売れないからといって、安易に売却価格を下げないように注意が必要です。
カンボジア不動産投資の失敗を回避するコツ
実際に失敗事例を確認すると、カンボジア不動産投資に対して不安を感じる方もいるでしょう。
実は、カンボジア不動産投資には失敗を回避するコツが存在します。
失敗をしたくない方は、失敗を回避するコツを事前に把握しておきましょう。
(1) カンボジアに関する正しい情報を入手する
カンボジアに関する正しい情報を入手しましょう。
資産運用として魅力的なカンボジア不動産投資ですが、正しい情報を入手していなければ大きく失敗する可能性があります。
たとえば、物件の価格推移や実際の賃貸収入、同じエリアの現在の空室数、居住者の見込みなどです。
一方で正しい情報を把握していれば、甘い言葉に騙されたり、想像とは異なると後悔したりすることもなくなるでしょう。
基本的に情報は、日本の各省庁、機関、団体などが公開している資料や、民間企業が公表しているレポートなどを参考にするとよいでしょう。
該当物件が投資対象として適切かどうかを判断するためには、正しい情報を入手する必要があります。
(2) セミナーなどに参加する
自分自身がセミナーなどに参加するのも失敗を回避するコツのひとつです。
カンボジア不動産投資に関連する法律や、今後の経済動向などを学べるため、大きな失敗を避けることにつながります。
とくに、海外投資がはじめての方はセミナーに参加するのがオススメです。
また、同じような目的を持っている方と接する機会にもなり、心配ごとを相談したり情報交換したりできるでしょう。
(3) 信頼できる不動産会社に依頼する
カンボジア不動産投資で失敗したくなければ、信頼できる不動産会社に依頼しましょう。
信頼できる仲介会社から購入すれば、カンボジア不動産投資のリスクを抑えられます。
安心して投資に取り組みたい方は、インターネット上の口コミや現地での販売実績、対応の誠実さなどをあらかじめ確認し、信頼できる会社を見つけましょう。
(4) プノンペンなど賃貸ニーズが高いエリアに限定する
カンボジアの首都であるプノンペンなど賃貸ニーズの高いエリアに限定すれば、大きな失敗を回避できる確率があがります。
一般的に不動産を選ぶ際は、立地も大切な要素のひとつです。
たとえばプノンペンは在住している外国人も多く、賃貸需要が高いため入居者を見つけやすい傾向にあります。
また、物件の価値も下がりにくいでしょう。
もちろん、賃貸ニーズの高いエリアのなかにもそれぞれ特徴があるため、成功する確率を高めたい方はエリアごとの特徴も考慮しておきましょう。
(5)大手ディベロッパーなどの物件を選ぶ
大手ディベロッパーなどの物件を選べば、失敗を回避できる可能性が高まります。
大手ディベロッパーの不動産を購入すれば、プレビルド方式によるリスクや建設中止になるリスクを軽減可能です。
安全に投資したい方は、信用できる大手ディベロッパーの物件を選びましょう。
カンボジアは信頼できる業者が少ないため、信頼できる業者を紹介してくれる不動産仲介会社を見つけるのがポイントです。
また、大手ディベロッパーには経験やノウハウが蓄積されていることが多いため、経験やノウハウの少ない個人の方にはとくにオススメです。
(6) 現地視察ツアーに参加する
現地視察ツアーに参加するのも、失敗を回避するコツの一つです。
現地に行くことで都市の状況や賃貸需要があるエリアなのかを直接確認できるため、カンボジア不動産への理解がより深まり失敗を回避することにつながるでしょう。
また、現地のカンボジア人に直接話を聞けば、よりリアルな状況がわかるでしょう。
あらかじめ確認したいことをピックアップし、参加するのがおすすめです。
(7) 保証利回りなど利益率を事前に確保させる
カンボジア不動産投資の失敗を回避したいのであれば、保証利回りなど利益率を事前に確保しましょう。
カンボジア不動産投資はメリットも多いですが、リスクも存在します。
そのため、保証利回りなどの利益率をあらかじめ確保し、リスクを軽減する対策をおこなうことも重要です。
問題点などとあわせて購入前に確認しておきましょう。
まとめ
カンボジア不動産投資は現地の不動産価格の上昇もあり、キャピタルゲインを期待でき、資産形成をするうえで非常に魅力的な投資先にみえます。
しかし、海外では日本の常識が通用しない場面も多く、失敗したという声もあるため安易な物件購入は避けたほうがよいでしょう。
カンボジア不動産投資で安定したリターンを得たい方や資産を築きたい方は、実際にあった失敗事例や失敗を回避するコツを参考にし、慎重に物件を選びましょう。
荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
代表取締役 / 宅地建物取引士 / 宅地建物取引業 東京都知事免許(2)第99967号
所属団体:一般社団法人RE AGENT 理事長 / 一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC) / 公益社団法人全日本不動産協会
1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。
著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
はじめての海外不動産投資