不動産投資とは?初心者が知っておくべきメリット・リスクなどを解説

執筆者:荒木 杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

近年、不労所得を得たいや老後資金の準備のために、マンション投資やアパート経営といった不動産投資を始める人が増えています。
ただし、興味があっても、「リスクがあるから不安」「始め方がわからない」などの理由で、なかなか行動に移せない人も多いでしょう。

この記事では、これから不動産投資を開始する人が安心してスタートを切れるように、不動産投資の仕組みやメリット・デメリットなどについて、詳しく解説します。

不動産投資とは

不動産投資とは、利益を得る目的で不動産を購入し、家賃収入や売却益を狙う投資手法です。
値動きが激しい株式や投資信託などと比べてリスクが抑えられることから、不動産投資は一般的に「ミドルリスク・ミドルリターンな投資手法」と考えられています
投資用物件の種類は、一棟アパート・分譲のワンルームマンション・一戸建てなど、さまざまな選択肢があります。

「不動産投資は資産家がするもの」というイメージを持っている人もいるかもしれません。
しかし、2019年に国土交通省が実施した賃貸住宅に関するアンケートでは、「物件オーナーの4割は会社員」という結果が出ています。
このことから、本業のあるサラリーマンが、副収入を得るために不動産投資家になるのは珍しくないことがわかります。

不動産投資の収益仕組みは2つ

不動産投資によって得られる収益には、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2種類があります。
それぞれについて、以下で説明します。

家賃収入によるインカムゲイン

インカムゲインとは、第三者に物件を貸すかわりに、家賃を受け取ることで得られる利益です。
入居者がいれば定期的に収入を得られる上、株価などと違って家賃は価格の変動があまりないことから、安定的な収入源といえます。

売却益によるキャピタルゲイン

キャピタルゲインとは、不動産が購入価格よりも値上がりしたタイミングで売却することで得られる利益です。
将来的に、土地の資産価値が上がりそうなエリアを想定して不動産を購入することで、売却時にキャピタルゲインを狙えます。

不動産投資のメリット

不動産投資をするメリットとしては、以下の5つが挙げられます。

他人資本から投資ができる

不動産投資を個人で行う場合、銀行からの融資=他人の資本を利用するケースがほとんどです。
手元の物件購入費用(自己資金)が少ない場合でも、購入予定の不動産を担保にして、金融機関からお金を借り入れることが可能です。
そのため、レバレッジをきかせて、自己資金よりも大きな額の不動産を手にすることができます

「多額の借金をするのは怖い」と思うかもしれませんが、借りたお金は家賃収入から返済することができます。
ローンを完済したあとは、家賃が丸ごと自分の収入になるため、早く完済しようとボーナスなどで繰上返済をする人も多いです。

相続税などの節税効果がある

不動産を所有することで、相続対策などの税負担を軽減する効果が期待できます。
例えば不動産を相続する場合、時価の70%程度である固定資産税評価額に対して相続税がかかります。
そのため、基本的に現金よりも不動産を相続した方が、相続税を抑えられる可能性が高くなるのです。

また、収益物件の減価償却制度を活用するなどして、不動産所得を赤字で計上した年度の確定申告では、給与所得との損益通算により、所得税・住民税の節税対策が可能です。

インフレ対策になる

不動産投資は、インフレのリスクに備えることができます。
インフレとは現金の価値が下がり、反対に物価が上がることを指します。
その際、実物資産である不動産の価格も物価とともに上昇するため、不動産を所有することで、資産の目減りを防ぐことにつながるのです。

団体信用生命保険により保険代わりになる

不動産投資のローンを組む時に加入する「団体信用生命保険(団信)」で、もしもの時に家族を守ることができます。
団信とは、契約者が死亡したり、高度障害状態になったりした場合に、ローンの残債がゼロになる生命保険です
当然不動産は手元に残るので、家族は不動産を売却して利益を得るか、保有し続けて家賃収入を得ることができます。

資産がゼロになることはない

不動産投資は、仮に運用がうまくいかない場合でも、その資産がゼロになることはありません。
会社が倒産すると価値がなくなる株式とは違い、実物資産である不動産は、たとえ不景気になっても資産として残ります。

不動産投資のデメリット

不動産投資を始めるには、注意点などのマイナス面についてもよく理解しておく必要があります。
不動産投資で考慮すべきデメリットやリスクとしては、以下の4つが挙げられます。

空室リスク

購入したアパートやマンションが空室になり、家賃が入らないリスクです。
入居者がつかず空室期間が長引くと、実質利回りが低下して融資の返済計画に狂いが生じるなど、賃貸経営が成り立たなくなってしまいます。
もし長期間空室が続く場合には、入居条件を緩和する・賃貸業者に丸投げせずにオーナー自身も賃貸募集するなど、何かしら対処が必要になります。

また物件購入前に、同じ地域にある競合物件の入居者募集状況などを調査し、賃貸需要があるかを確認してから購入するのも大事なポイントです

家賃減少リスク

地価の下落や物件の老朽化などにより、家賃が値下がりするリスクです。
都心部など地価の下がりにくい好立地の投資物件や、信頼できる賃貸管理会社の家賃保証付き物件を購入することが、リスク回避に繋がります
また購入後も、経年劣化が進んだ際は適切なメンテナンスを実施し、必要に応じてリノベーションを検討するなど、資産価値の維持に努めることも重要です。

なお、経済状況によっては、逆に物件周辺の地価が上昇し、家賃を上げることができる可能性もあります。

地震、火災などの天災リスク

地震や台風といった自然災害により、不動産が被害を受けるリスクです。
例えば、地震を発端とした火災で建物が全焼した場合、建物の損傷については、火災保険や地震保険によって、補償額の上限まではカバーすることができます
しかし、人が居住できなくなることにより、家賃収入が得られなくなるリスクも考えられます。

金利上昇リスク

変動金利でローンを組んだ場合に、返済中に利息が上がるリスクです。
変動金利のローンは、その時の金利政策により、利息が上下する場合があります
もし金利が上がった場合、月々の返済額が予定よりも増加し、当初の資金計画が崩れてしまう可能性もあります。

不動産投資に向いている人

不動産投資をおすすめしたいのは、以下の3つに当てはまる人です。

不動産投資ローンを組むための条件を満たしている人

不動産投資を始めるためには、金融機関の融資の審査を通過し、投資資金を借り入れることが必要です。
以下の条件を満たす人であれば、融資を受けられる可能性が高いといえます。

  • 年収500万円以上の人
  • 大手企業勤務や医師など、社会的に信用力のある仕事に就いている人
  • 貯蓄がある人
  • 勤続年数が3年以上の人

長期的に、安定した資産運用をしたい人

不動産投資は、毎月決まった額の賃料収入を得られるため、安定収入を得たい人に向いています。
また、不動産価格は頻繁に変動するものではなく、不動産投資には長期的な視点が求められます。
そのため、短期間で大きな売却益を得たいと考える人や、すぐに現金化が可能な流動性のある資産を持ちたい場合には、不動産投資は向いていないでしょう

情報収集や勉強を継続してできる人

不動産投資を成功させるには、不動産会社に任せきりではなく、自分でも情報収集や運用ノウハウの勉強をする必要があります。
宅建業法などの専門知識をつけたり、最新の不動産市場を知るためのアンテナを張ったりすることで、賃貸管理会社との連携や投資の判断力を強化し、資産形成の成功に繋げることができます。

不動産投資にかかる初期費用

不動産投資をする際、最初にかかる費用の金額はケースバイケースですが、一般的に物件価格の8%〜10%程度が目安といわれています(頭金を除く)。
例えば、物件価格が3000万円だった場合は、初期費用を240万円〜300万円程度用意しておきましょう。
初期費用の具体的な内訳は、以下の通りです。

  • ローンの事務手数料…定率制(借入額の1%〜3%)または定額制(3万円程度)
  • ローンの保証料…一括(2%程度)または返済時の金利を上乗せ(0.2%〜0.3%程度)
  • 仲介手数料…最大で物件価格の3%+6万円(売主から直接購入する場合は不要)
  • 登録免許税…新築物件(所有権保存登記)は4%、中古物件(所有権移転登記)は2%
  • 印紙税…金銭消費貸借契約書と不動産売買契約書に添付が必要(契約書の金額により異なり、2万円〜6万円が多い)
  • 固定資産税…固定資産税評価額の1.4%(引き渡し日以降の金額を買主が負担)
  • 都市計画税…固定資産税評価額の0.3%が上限(引き渡し日以降の金額を買主が負担)

なお、融資をフルローンで組むかどうかによって、用意する現金が変わってくるため、自己資金が少ない場合などは、事前に不動産会社や銀行に相談しましょう。

まとめ

今回は、不動産投資初心者が最初に知っておくべきリスクや、不動産投資に向いている人の特徴などについて解説しました。
不動産投資は、長期的な視点を持ち、安定した収入を得たい人に最適な投資手法です。
ミドルリスク・ミドルリターンで、他の投資方法にはない魅力がある不動産投資ですが、資産価値が下がる可能性もあることを把握したうえで、慎重に物件選びや不動産業者の選定を行うことが大切です。

まずは不動産経営についての勉強や、投資用不動産の物件情報を見て投資のシミュレーションをしてみるなど、できることから始めてみましょう。

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荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

代表取締役 / 宅地建物取引士 / 宅地建物取引業 東京都知事免許(2)第99967号
所属団体:一般社団法人RE AGENT 理事長 / 一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC) / 公益社団法人全日本不動産協会
1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。
著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
   はじめての海外不動産投資