執筆者:荒木 杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
近年、魅力的な投資対象として注目を集めている海外不動産投資。
そこには日本の不動産を取得する際とは違ったリスクが潜んでおり、信頼できる不動産会社選びが不可欠です。
この記事では、海外不動産投資のリスクや物件の購入方法といった基礎知識に加え、投資先としておすすめの国や信頼できる不動産会社の選び方などについて詳しく解説します。
海外不動産投資が注目されている4つの理由
海外不動産投資が注目されている理由としては、以下の4つが挙げられます。
不動産価格が上昇しているため売却益を狙いやすい
経済成長が見込める国の不動産を購入することで、将来的に不動産価格の上昇によるキャピタルゲイン(売却益)が期待できます。
例えば東南アジアの新興国であるカンボジア・マレーシアなどは、GDP成長率が高く、今後も経済の発展が続くと見られています。
人口増加している国では安定した家賃収入を得られる
東南アジア諸国などに多い人口増加している国では、住宅需要も高いため空室リスクが低いといえます。
そのため、安定したインカムゲイン(家賃収入)を得られる可能性が高くなります。
日本と比較して比較的利回りが高い国が多い
30年前から所得に変化のない日本とは異なり、海外では先進国・新興国ともに所得水準が上昇している国が多いです。
所得に合わせて賃料も上昇しているため、日本よりも利回りの高い物件を購入できる可能性が高いでしょう。
分散投資しているためリスク回避ができる
金融商品や日本の不動産への投資だけでなく、海外の不動産投資を資産形成のポートフォリオに組み込むことで、資産分散によるリスクヘッジにもつながります。
また、日本経済の先行きへの不安から、日本だけでなく海外にも資産を保有したいというニーズも高まっています。
海外不動産投資をする時のリスク、デメリット
海外不動産投資をする際に把握しておくべきリスクやデメリットとしては、以下の8つが挙げられます。
正確な情報収集が難しい
海外不動産投資は、距離や言語などの物理的な問題で、現地の情報収集のハードルが高いです。
また信憑性の低い情報が出回っている危険性もあるため、信頼できる情報源を確保することが非常に重要です。
キャピタルゲイン(売却益)を得られないリスク
不動産価格が上昇している国であっても、キャピタルゲインを得られない可能性もあります。
例えば不動産バブルの崩壊やリーマンショックのような予期せぬ事態によって、不動産価格が下落してしまった場合、購入時に想定した価格での売却が難しくなるかもしれません。
インカムゲイン(家賃収入)が得られないリスク
人口増加率の高い国でも、安定したインカムゲインを得られない場合があります。
国全体の人口が増えていても、すべての都市やエリアで人口増加しているとは限らないからです。
海外不動産を購入する際は、国だけでなくその地域の不動産市況もチェックすることが大切です。
海外不動産投資のため融資が難しい
海外不動産を購入する際、ほとんどの場合は銀行の提示する条件を満たせず、住宅ローンを組むことができないのが現状です。
仮に組めたとしても、金利が高いなど融資条件が悪いケースが多いため、どのみち金融機関からの融資を頼らず自己資金で購入することになるでしょう。
為替変動による損失が出るリスク
海外不動産投資には為替リスクがあります。
不動産売却時の為替レートが購入時よりも悪かった場合に差損が生じ、金額の大きい不動産売買では損失額が想定より膨らんでしまう可能性も考えられます。
海外に不動産があるため管理の手間がかかる
日本国内にいる日本人の投資家が、購入後の海外の不動産物件を自分で賃貸管理するのは非常に困難です。
そのため、入居者募集などの物件管理を安心して任せられる不動産管理会社を選定する必要があります。
アメリカ不動産など節税ができなくなった
以前存在していた節税スキームが、税制改定により使えなくなったこともデメリットといえます。
2021年の税制改正までは、アメリカ不動産投資などで減価償却を利用した節税効果のある投資法が存在しましたが、現在は規制されて使えなくなっています。
東南アジアの不動産はカントリーリスクが大きい
東南アジアなどの新興国で不動産投資を行う場合は、国の政治や法律が不安定な場合が多いため注意が必要です。
例えば、突然法律が変わって投資物件を売却せざるを得なくなったり、それまでかからなかった税金がかかるようになったりするなど、日本では考えられない改正が行われるケースがあると認識しておきましょう。
海外不動産の購入方法
海外不動産を購入するには、現地の不動産を通じて直接購入する方法と、日本にある不動産会社を経由して購入する方法の2つのパターンがあります。
それぞれの方法について、詳細に解説していきます。
現地の不動産会社を通じて直接購入
現地の不動産会社から、現地訪問またはオンラインで投資物件を紹介してもらい、購入する方法です。
日本の不動産業者が取り扱っていない物件を紹介してもらえるなどの魅力もありますが、文化の違いや言葉の壁などで取引がスムーズに進まない可能性があります。
海外不動産投資の経験や知識が少ない場合は、避けた方が無難かもしれません。
日本にある不動産会社を経由して購入
海外に拠点やコネクションを持つ日本の不動産会社から購入する方法です。
日本人または日本語を話せる外国籍のスタッフが対応してくれるため、コミュニケーションが取りやすく安心感があります。
海外不動産投資でおすすめしたい国5選
不動産投資対象としておすすめの国は以下の5つです。
それぞれの国の特徴を解説していきます。
カンボジア
近年、目覚ましい経済発展を遂げているカンボジアは、今後更なる人口増加と不動産価格の上昇が見込まれる国です。
キャピタルゲインが期待できる上、10%以上の高利回り物件が数多く存在します。
東南アジアの国の中で、唯一米ドルをそのまま所有することができる国です。
海外への送金制限もないため、非常にメリットが多い国と言えます。
アメリカ
世界屈指の先進国であるアメリカは、不動産に関する法律が整備されており、リスクを抑えて海外不動産投資をしたい人にお勧めです。
住居の需要が安定しており、米ドル建ての資産が保有できることから、初心者向けの投資対象としても人気です。
また、意外にも外国人の土地購入が可能なことも、アメリカ不動産投資の魅力の1つです。
マレーシア
不動産投資が盛んなマレーシアは、2022年の経済成長率が8.7%と驚異的な数値を記録した国です。
投資目的としてだけでなく、実際に移住目的での不動産購入を希望する外国人も多く、今後も首都クアラルンプールを中心に経済発展が期待できます。
フィリピン
若者の多い国フィリピンの年齢中央値は、2022年時点で24.7歳です。
人口も増加傾向にあることから、今後更に発展していく将来性を大いに感じられます。
物件価格の安い今のうちに、不動産投資をしておくのも面白いでしょう。
タイ
タイには日本人をはじめ外国人が多く住んでいる上、賃金が上昇していることから将来的に現地人の賃貸需要も期待できるようになるでしょう。
ただし、メインの不動産投資先であるバンコクでは物価上昇が進んでいるため、物件購入を検討している人は早めに行動した方が良いかもしれません。
海外不動産投資に適している人の特徴は?
海外の不動産投資に適している人の特徴として、以下の6点が挙げられます。
順番に見ていきましょう。
キャッシュで海外不動産を購入できる人
海外不動産投資では金融機関の条件が厳しく、融資を受けられない可能性が非常に高いです。
そのため、不動産の購入価格と諸費用を、全額自己資本(キャッシュ)で支払える財力が必要不可欠といえるでしょう。
キャピタルゲインを重視している人
海外不動産は、キャピタルゲインを狙いたい人にはうってつけの投資対象といえます。
特に東南アジアなどの新興国の場合、今後も経済成長が続く見通しである国が多いため、売却時の不動産価格の値上がりが期待できます。
海外不動産で分散投資をしたい人
資産や投資先を複数に分け、リスク分散をはかることは資産運用の基本です。
経済的リスクを抱えた日本の不動産や金融商品だけでなく、成長している海外不動産にも投資することは、むしろ自然なこととも考えられます。
海外不動産を購入して永住権を得たい人
その国の永住権を得るために海外不動産を購入するケースもあります。
国によっては不動産の購入が永住権を得る条件となっている場合があるためです。
同時に移住も必須条件としている可能性もあるため、事前に確認した上で慎重に検討しましょう。
相続税が非課税の国で節税対策を考えている人
相続税・贈与税のない国に移住を考えている人が海外不動産を購入するパターンです。
現地への移住が条件になるため投資とは少し違いますが、相続した資産を保全するという観点から、節税対策として移住するというのも選択肢の一つでしょう。
海外不動産を通じてドル資産を持ちたい人
基軸通貨である米ドル建ての資産を持ちたい人に、海外不動産投資はお勧めです。
米ドルで不動産の投資・運用ができる代表的な国は、自国通貨であるアメリカのほかに、東南アジアのカンボジアが挙げられます。
(※カンボジアでは自国通貨の信頼性が低いため、米ドルが流通しています。)
米ドル建ての資産を持ちたいと考えている人は、投資先として検討してみるとよいでしょう。
信頼できる不動産会社の選び方
海外不動産投資の要となる不動産会社の選び方について、特に重要な以下の3つについて解説します。
気になる不動産会社を見つけたら、まずは個別相談やセミナーに参加し、信頼のおける会社かどうかを直接確認することが大切です。
販売実績が豊富である
その国での販売実績が豊富な不動産業者かどうかは重要なポイントです。
文化の違いや言葉の壁のある海外の不動産投資では、トラブルを回避するためにも、実績を積んで取引を熟知している業者との連携が必須です。
日本にも現地にも事務所がある
不動産会社は、日本にも現地にも拠点のある会社を選ぶのがベストです。
日本語でサポートしてくれる日本の拠点と、物件の状況をいち早く知らせてくれる現地の拠点の両方を持ち合わせた会社を選ぶことで、安心して不動産取引が進められます。
現地の情報にも精通している
現地の不動産情報やルールに精通している業者を選ぶことも大切です。
海外不動産を購入する際には、その国ならではの法律や制度が存在する場面が多くあります。
特に外国人の購入となると、専門知識を持った業者のアドバイスが必要不可欠です。
少しでも不安な点があった場合は、他の不動産会社にも問い合わせてみるとよいかもしれません。
まとめ
利益重視の収益物件として、また資産形成のポートフォリオの1つとして魅力的な海外不動産投資。
イメージ通りの成功に近づけるためには、高いリターンに潜むリスクを正しく理解し、予測することが大切です。
また、現地の不動産市場について、十分な知識と経験を持った不動産仲介会社を見つけることも重要です。
綿密な連携と適切なサポートを受けることができれば、安心感を持って投資・運用することが叶うでしょう。
荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
代表取締役 / 宅地建物取引士 / 宅地建物取引業 東京都知事免許(2)第99967号
所属団体:一般社団法人RE AGENT 理事長 / 一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC) / 公益社団法人全日本不動産協会
1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。
著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
はじめての海外不動産投資