ちゃんと知ってる?為替の基礎知識を学ぼう -円安の背景と見通し-

執筆者:荒木 杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

円安・ドル高の進行が連日ニュースで騒がれています。みなさんも最近目にしたり、耳にしたりしていると思います。
ニューヨーク外国為替市場の円相場は対ドルで下落し、一時1ドル=150円台を付けました。
この為替市場は不動産投資をするうえで深く関係してきます

為替の基礎知識をしっかり学び、不動産投資への影響に備えていきましょう

そもそも為替って何?

為替(英: foreign exchange、略称: FX)は、異なる通貨同士の交換レートや通貨市場を指す用語です。
簡単に言えば、国際的な通貨の交換を取り扱う市場と、その市場で行われる通貨同士の交換行為のことを指します

為替市場は国際的な金融市場の一部であり、世界経済に大きな影響を与える重要な要素です。多くの人々が投資やビジネス取引において為替市場を監視し、分析し、参加しています。

以下は為替に関する基本的な要点です。

  • 通貨市場(Forex市場)
    為替取引は、世界中の金融機関、企業、投資家などが参加する巨大な市場で行われます。これは24時間営業で、週末を除いてほぼ連続して取引が行われます。
  • 通貨ペア
    為替取引は、通常、2つの通貨の組み合わせで行われます。例えば、米ドル(USD)と日本円(JPY)の組み合わせは「USD/JPY」と表記され、この通貨ペアのレートが取引されます。通貨ペアごとに、1つの通貨をもう一方の通貨で購入または売却することになります。
  • 為替レート
    為替レートは、1つの通貨を別の通貨で表した比率です。例えば、USD/JPYが110.00の場合、1米ドルは110日本円に等しいということになります。
  • 為替取引の目的
    為替市場での取引は、さまざまな目的で行われます。企業は国際取引に関連して通貨を交換し、リスクを管理します。投資家は為替市場で利益を追求し、通貨の変動を予測して取引を行います。また、中央銀行も為替市場で介入し、通貨価値を安定させるために取引を行うことがあります。
  • 為替レートの変動
    為替レートは多くの要因に影響を受け、日々変動します。経済指標、政治的な出来事、金利の変化、市場心理などが影響を与えます。これらの要因により、通貨の価値は上昇または下落することがあります。

円安・ドル高とは?

円安・ドル高(Yen depreciation and Dollar appreciation)は、日本の通貨である円(JPY)の価値が下落し、アメリカの通貨であるドル(USD)の価値が上昇する為替市場の状態を指します
これは、1米ドルを購入するためにより多くの日本円が必要とされる状況を意味します。

円安・ドル高の状況は、日本の輸出産業にとってはメリットがあるかもしれませんが、輸入品価格の上昇やインフレ圧力の増加といった懸念も引き起こすことがあります
この状況は為替市場の参加者にとって重要な要素であり、国際的な経済動向に対する注意深い監視が必要です。

円安・ドル高の状況が生じる主な要因は以下のようなものがあります。

  • 金利差
    アメリカの中央銀行である連邦準備制度(Fed)が、日本の中央銀行である日本銀行よりも高金利政策を採用している場合、アメリカでの投資が魅力的になり、ドルへの需要が高まります。これにより、円に対するドルの価値が上昇します。
  • 経済指標
    アメリカの経済が強く、日本の経済が相対的に弱い場合、アメリカドルは魅力的な通貨とされ、円の価値は下落します。経済成績や指標の違いは、通貨の価値に大きな影響を与えることがあります。
  • 外国為替介入
    中央銀行や政府が外国為替市場に介入し、自国通貨の価値を下げることを試みる場合、これが円安・ドル高の原因となります。通常、中央銀行は通貨を売却して供給を増やし、需要を減少させることで通貨の価値を下げます。
  • 地政学的なリスク
    政治的な不安定性や地政学的なリスクが高まると、安全資産と見なされるアメリカドルへの需要が増加し、円の価値が下落することがあります。

円安のメリット

円安は、日本の経済にいくつかのメリットをもたらす可能性があります。
以下はその主なメリットです。

  • 輸出産業の競争力向上
    円安により、日本の輸出品が国際市場で価格競争力を強化します。外国の消費者や企業は、円安によって日本からの製品やサービスが安くなるため、それらを購入しやすくなります。これは、日本の輸出業界にとって大きな利点です。
  • 輸出企業の収益向上
    円安は、日本の輸出企業にとって収益を向上させる可能性があります。外国での売上高が増加し、収益が増えることで、企業の成績が向上するでしょう。
  • 雇用の安定化
    輸出企業の収益が向上すると、雇用の安定化や増加が期待されます。企業が好調な経済状況にある場合、新たな雇用機会を提供しやすくなります。
  • 観光業の活況
    円安は、日本を観光地として魅力的にし、外国からの観光客を増加させる可能性があります。外国人観光客は、円安によって日本での旅行や買い物がコストパフォーマンスが良くなると感じることがあります。
  • インフレ圧力の緩和
    円安は、輸入品の価格上昇を通じて一定程度のインフレ圧力を緩和する可能性があります。これは、デフレーションの問題に対処し、消費を刺激する助けになるかもしれません。

ただし、円安にはいくつかの潜在的なデメリットやリスクも存在します。
例えば、輸入品の価格上昇、国内消費者への負担増加、国際的な通貨摩擦、外国債務の増加などが挙げられます。

したがって、円安政策の利点とリスクを慎重にバランスさせながら、政府や中央銀行は通貨の価値を調整する決定を行います

円安のデメリット

円安にはいくつかのデメリットやリスクが存在します。
以下はその主な要点です。

  • インフレ圧力
    円安は、輸入品の価格上昇をもたらす可能性があります。外国からの商品や原材料が高くなることで、国内の消費者にとってコストがかかり、インフレ圧力が高まることがあります。これは、物価上昇による生活費の増加として感じられます。
  • 国内購買力の低下
    円安は、日本国内での外国旅行や海外の商品購入が高くつくことを意味します。したがって、国内の個人消費者にとって、海外での買い物や旅行が負担になる可能性があります。
  • エネルギー価格上昇
    日本はエネルギー資源を主に輸入しており、円安は石油や天然ガスなどのエネルギー価格を上昇させることがあります。これは、エネルギー依存度の高い国にとってエネルギーコストの増加を意味します。
  • 資産価格への影響
    円安は株式市場や不動産市場などの資産価格に影響を与える可能性があります。一部の投資家は、円安を受けて資産を購入し、価格を押し上げることがありますが、市場の過度の変動も発生する可能性があります。
  • 国際的な摩擦
    円安は国際的な通貨摩擦を引き起こすことがあります。他国との貿易において、競争相手からの非難や貿易紛争のリスクが高まることがあります。
  • 外国債務の増加
    円安は、外国通貨建てでの債務を抱える企業や政府にとって、債務の返済負担を増加させる可能性があります。外国通貨の債務が円安によって増加すると、返済額が増加し、財政的なプレッシャーがかかります。

これらのデメリットやリスクは、円安政策が経済にどのような影響を及ぼすかを考慮する際に考慮されるべき要因です。
政府や中央銀行は、通貨価値を調整する際に、これらの要素をバランスさせながら政策を策定する必要があります。

円安進行の背景と見通し

円安が進行する背景と将来の見通しは、多くの要因に影響を受けるため、一般的には予測が難しいです。
ただし、円安の背後に影響を与える一般的な要因と、将来の可能性についていくつかのポイントを紹介します。

円安の背後に影響を与える主な要因

  • 金融政策
    中央銀行の金融政策は通貨価値に大きな影響を与えます。金利を引き下げたり、通貨を市場に供給したりすることで、中央銀行は通貨価値を調整しようとします。したがって、アメリカの連邦準備制度(Fed)や日本の日本銀行の金融政策は、円安・ドル高の動きに影響を与えます。
  • 経済指標と経済成績
    経済の健康状態や成長率、雇用データ、インフレーション率などの経済指標は、通貨価値に影響を与えます。経済が強調され、成長が見込まれる国の通貨は強く、経済の不安定さや低成長は通貨価値を下げる可能性があります。
  • 地政学的なリスク
    政治的な不安定性や地政学的なリスクが高まると、安全なヘッジ資産と見なされる通貨に対する需要が高まる可能性があります。アメリカドルはしばしばこのような状況で避難所通貨としての需要が高まることがあります。

将来の見通し

円安の将来の見通しは、上記の要因だけでなく、国際的な経済状況、通貨政策の変化、貿易関係の発展などにも影響されます。
以下はいくつかの可能性ですが、予測には不確実性が伴います。

  • 金融政策の変化
    アメリカや日本の中央銀行が金融政策を変更する可能性があります。たとえば、アメリカが利上げサイクルを開始した場合、ドル高・円安の動きが強化される可能性があります。
  • 経済成績
    日本とアメリカの経済成績は、通貨価値に大きな影響を与えます。経済の健全性がどのように推移するかに注目する必要があります。
  • 国際的な貿易関係
    日本と他国との貿易関係、特にアメリカとの関係が円安に影響を与える可能性があります。貿易摩擦や貿易協定の変更は、通貨価値に影響を及ぼす可能性があります。

円安の見通しは常に変動するため、投資家や企業、政府は市場動向を注意深く監視し、リスクを管理するための適切な戦略を策定する必要があります。

一覧に戻る

記事をシェア:

荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

宅地建物取引士 / 1984年生まれ、東京都出身。
大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。
2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。

著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
   はじめての海外不動産投資