カンボジアに進出する企業が多数!企業進出の現状からみる不動産投資

執筆者:荒木 杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

現在、カンボジアはほぼ毎年にわたって経済成長率が前年を上回っており、投資家からも注目を集めています。
今回は、日系企業をはじめとして、カンボジアにビジネスで進出する企業の観点を中心に、当国の経済事情を解説します。

最後までお付き合いいただければ、カンボジア国内市場がいかに投資に適した環境かをご理解いただけるでしょう

企業がカンボジアに進出するメリット3選

ここでは、企業がカンボジアに進出する際のメリットを詳しく解説します。
カンボジアの経済発展がなぜ順調かを理解でき、投資家が参入するメリットとも密接な関わりがあることに気づくかと思います。

南部経済回廊の中心的な位置にあるという地理的要因

「南部経済回廊」とは、カンボジアを含むインドシナ半島を通る巨大な幹線道路です。
通関を簡略化し、国家間の交通や物流をより活性化するために建設されました。

タイとベトナムには多くの日系企業が進出しており、両国の間に位置するカンボジアも、地理的な要因から企業にとって重要性が高まっています

若年層が多く労働力が豊富

カンボジア国内の年齢別人口構成には非常に特徴があり、国民の約70%が30歳以下です。

国民の大半が若年層であることから、将来にわたって豊富な労働力が期待できます。
少子高齢化による後退が予想される日本とは対照的であり、人的資源への高い期待感が企業の進出を促しています

長いスパンでの労働力の確保が見込める点で、投資の観点からも期待感が高まっているのです。

カンボジア政府が外資の誘致に積極的

カンボジアでは、フン・マネット政権が発足以来、外資の誘致により積極的な政策が採られています。
現政権が掲げる投資政策には主に以下のようなものがあります。

  • 経済特区を設置し、国内に進出した企業に税制上の優遇措置を採る
  • 海外の居住者がカンボジア国内に銀行口座を保有し、国外へ自由に資金を送金することを法制により保証する

特に経済特区に関しては日本企業専用の区画を設立する構想があるほか、周辺国を誘致した構想も発表されており、企業にとって大きな追い風となっています。

企業がカンボジアに進出する際に考えられる3つのデメリット

企業がカンボジアに進出する際に、いくつかのデメリットも考えられます。
ここでは、企業がカンボジアに進出する際のデメリットを3つご紹介しましょう。

ASEAN諸国のなかでは市場が小規模

カンボジアは国内人口が1,690万人で、1人あたりGDPは1,920米ドルとなっています。(外務省公表データによる
この数値はASEAN諸国のなかでは、決して大きい数値とはいえません。
試しに、カンボジアと近隣国のタイ・ベトナムを比較してみましょう。

 人口1人あたりGDP
カンボジア1,690万人1,920米ドル
タイ6,609万人7,331.5米ドル
ベトナム1億30万人4,285米ドル
いずれも外務省の基礎データを参照

企業が進出する場合、周辺国の方が魅力的に映ってしまうのは仕方ないのかもしれません。
ただし、ここ10年ほどのカンボジアはGDP成長率が約5〜7%もの成長を続けており、数値以上のポテンシャルがあるのも事実です。

現地従業員を採用する際のコストが高い傾向

カンボジアの特徴的な人口構成は、1979年代のポル・ポト政権による虐殺が原因で、犠牲者は約170万人にも上るといわれています。

参照:(財)統計情報研究開発センター発行「ESTRELA」平成18年9月号掲載 カンボジアの人口ピラミッド

多くの国民が犠牲になったことに加えて、伝統文化や高度な技術の担い手が減少したと指摘されているのも事実です。

カンボジアは現在も人口の約70%が農業に従事しており、国全体の産業は未発達な部分があります
現地で従業員を雇用する場合、教育にかかるコストは決して小さなものではないでしょう。

周辺国に比べてインフラが脆弱

カンボジアの都市部では水道設備などのインフラ整備が進む一方で、農村部ではまだインフラが充分に整備されていません。
カンボジアでは国営の電気公社が送電・配電を担当し、発電はおもに民間企業に委ねられています
国内の電力需給量自体が大きくなく、全国的な送電網が整備されていないのに加え、発電所自体もそれほど大規模ではありません。
国内電力の多くをタイやベトナムからの輸入に頼っているのが現状で、電力を輸入できる国境付近の方が料金も安価です。

電力供給に不安があり、電気料金に地域格差がある点から、企業が進出する際にインフラがネックになるといわれています。

カンボジアに進出している日系企業は1,200社以上

JETROの調査によれば、2014年1月以降に進出し、2022年3月16日時点で事業を継続しているカンボジア進出日系企業数は1,290社です。
以下は進出企業の業種別割合です。

  • サービス業614社(47.6%)
  • 貿易業250社(19.4%)
  • 建設・不動産業152社(11.8%)
  • 製造業90社(7.0%)

参照:JETROビジネス短信 2022年5月11日

同じくJETROの調べによると、カンボジアに進出した企業のうち、約4割の営業利益が黒字で維持も含めると7割にも上ります

参照:JETRO「海外進出日系企業実態調査 | アジア・オセアニア編」

また、日本からカンボジアに進出した企業間で「カンボジア日本人商工会」というコミュニティが結成されています。
日系企業同士のコミュニティで交流や情報共有がなされており、カンボジア進出の足がかりになっているといえそうです。

カンボジアに進出中の日系有名企業3選

カンボジアには、多くの日系企業が進出しているとご説明しました。
ここでは、不動産投資にも関係の深い、カンボジアに進出した日系企業を3社ご紹介します。

建設業・小売業 | イオンモールがプノンペン周辺に3店舗出店

株式会社イオンモールは国内外に大規模なデパートを出店しています。
カンボジアではプノンペンを中心に出店が続いており、順調な業績を受けて、2023年には国内最大規模となる3号店が開店しました。
イオンモールの開店はJETRO(日本貿易振興機構)による2023年4月21日付のビジネス短信でも取り上げられています。

イオンモールの活況から、周辺エリアには高級コンドミニアムが建ち並ぶなど、不動産開発にも好影響をもたらしています

金融業 | 三井住友銀行はカンボジア国内大手銀行の筆頭株主

アクレダ銀行はカンボジア国内の銀行でも大手の部類に属しており、国内に1,418台のATMを保有しています。(2024年7月現在)
アクレダ銀行は顧客のニーズに合わせて定期預金のプランを複数設定するなど、きめ細かなサービスで人気です。

アクレダ銀行の筆頭株主は三井住友銀行であるほか、オリックスも株を保有しています
アクレダ銀行のように日系企業が筆頭株主の銀行が国内全土に展開しており、金融業でもカンボジアと日本は緊密な関係です。

なお、カンボジアの銀行は非居住者でも口座の開設ができるため、投資家にとっても大きなメリットがあります
弊社でも、カンボジア不動産投資と銀行預金をセットにしての資産形成を推奨しております。

製造業 | カンボジア国内でトヨタ自動車の組み立て工場が稼働

豊田通商は2022年にカンボジア国内に車両組立事業会社Toyota Tsusho Manufacturing (Cambodia) Co., Ltd.(豊田通商マニュファクチャリング(カンボジア)、以下:TTMC)を設立しました。
事業所はプノンペン経済特区に位置しており、トヨタの車両を現地で組み立てます

カンボジア政府と豊田通商が締結した「自動車産業の発展に向けた協業に関するMOU」に基づくものです。締結式にはフン・センカンボジア王国首相と岸田文雄総理大臣も列席しており、両国の政府からの期待も高いことがうかがえます。

カンボジアでは官民一体となった経済特区が設立されており、今後も物流センターなど不動産関連の活発な投資が期待できます

カンボジアでの不動産投資のメリット3選

カンボジアは企業からの注目を集めていますが、不動産投資の分野においても多くのメリットがあります
ここでは、カンボジア不動産投資のメリットを大きく3つに分けて解説します。

プノンペン周辺の物件の利回りは約10%

カンボジアはGDP成長率がほぼ毎年にわたって上昇しており、プノンペンを中心に不動産物件の開発・仲介もさかんになっています。

プノンペン周辺には、富裕層や外国人に向けた高級コンドミニアムも多く出回っています。
プノンペン周辺のコンドミニアムは入居者が高く、年間の想定利回りは平均7〜10%ほどです

また、ホテルや物流センターなど、事業用物件への投資も活発に行われています。
物件の選択肢が豊富なことも、カンボジア不動産投資の魅力といえます。

米ドルでの資産の保有が可能

カンボジアでは、都市部を中心に米ドルが流通しており実質的に当国の基軸通貨になっています。
国内の多くの地域で米ドルが流通している事情から、外国人が米ドルで資産を保有することも認められています

東南アジアの多くの国では、自国通貨のみでしか資産の保有ができない点とは対照的です。
米ドルで資産を保有できるため、為替リスクを回避しやすいというメリットがあります。

銀行の定期預金の金利が高水準

カンボジアの銀行は、特に定期預金の金利が非常に高いという特徴があります。
カンボジア国内の主な銀行の定期預金の金利は以下の通りです。

 フィリップ
銀行
Jトラスト
ロイヤル
銀行
アクレダ
銀行
ABA
銀行
カナディア
銀行
サタパナ
銀行
プノンペン
商業銀行
定期預金金利
(プラン・期間により変動)
3.00~7.50%5.00%2.30~6.25%2.25~6.00%1.50~6.50%2.75~5.75%2.00~5.60%
※いずれも個人口座の金利を記載しています。
※普通預金の金利が預金額によって変動する銀行があります。
※金利は最新のものを記載していますが、変更になる場合があります。

好調な経済成長に裏付けされたもので、なかには定期預金の金利が7%を超える銀行もあります
また、日系企業が筆頭株主になっている銀行も下記のように複数存在します。

  • Jトラストロイヤル銀行:東京証券取引所に登録のあるJトラストロイヤル銀行が株の55を保有
  • アクレダ銀行:三井住友銀行・オリックス社の日系企業が株の約3割を保有

日本とも経済的連携が深く、日本語での対応を導入している銀行も多くあります。
また、カンボジアの銀行は非居住者でも口座を開設できるため、資産形成に適した環境です。

まとめ

今回は、カンボジアに進出する企業の観点から、当国の経済事情についてご説明しました。
企業がカンボジアに進出するメリットは多くあり、投資家の目線と共通する部分も見受けられます

この機会に、カンボジア不動産投資を本格的に検討されてはいかがでしょうか。

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荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

代表取締役 / 宅地建物取引士 / 宅地建物取引業 東京都知事免許(2)第99967号
所属団体:一般社団法人RE AGENT 理事長 / 一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC) / 公益社団法人全日本不動産協会
1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。
著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
   はじめての海外不動産投資