カンボジア不動産を購入できる種類は?リスク、税金や流れを解説

執筆者:荒木 杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

近年、海外不動産投資市場で注目を浴びているカンボジア

長らく続いた内戦の影響で経済成長が遅れた国ですが、2022年の経済成長率(実質GDP成長率)は5.3%と高い水準で、今後も更に発展が続く見通しです

この記事では、カンボジアの不動産投資市場の状況や購入するメリット・デメリットなどを詳しく解説します。

カンボジア不動産市場の動き

まずは、現在のカンボジア不動産市場の状況について解説します。

カンボジア不動産の相場はいくら?

カンボジアの不動産価格は、日本や他の東南アジア諸国と比べて非常に安いといえます。
日本では数億円もするような高級コンドミニアムであっても、カンボジアでは2,000万円台で購入できる場合があるほどです。

不動産価格の推移

カンボジアの首都プノンペンの地価から不動産価格の推移を見てみると、2010年と比べて、ほとんどのエリアの地価が2倍以上に値上がりしています。

カンボジアでは、2011年から外国人が投資用の不動産物件を購入することが可能になったことで、プノンペンに外国からの資本が流入しました。
加えて入国者数の増加や外国企業の参入が増えたことにより、地価が右肩上がりに高騰したと考えられます。

カンボジア不動産を購入するメリット

カンボジア不動産を購入するメリットは、どのようなところでしょうか。
ここでは4つのメリットについて解説します。

不動産の価格は比較的に低い

カンボジア不動産の価格は他のアジア諸国と比べて安いため、購入時のコストを抑えられます
首都プノンペンに建つ高級コンドミニアムでも、物件によっては2,000万円台から購入が可能です。

さらに駐在員などの富裕層をターゲットにした家賃設定の高い物件のため、高利回りを期待できます。

もしシンガポールや香港で同等の物件を購入した場合、1億円を超える価格がつくと考えられます。
また、同じ発展途上国であるマレーシアの首都クアラルンプールでも、3,500万円ほどの価格になるでしょう。

成長する可能性が高く物件価格の上昇期待できる

近年、カンボジアの経済は著しく成長しており、将来的に不動産価格の上昇が見込まれています
2022年のカンボジアの経済成長率(実質GDP成長率)は5.3%と高く、今後も人口増加や外国資本の流入によりさらに発展すると考えられます。

また、外国から流入している資本のほとんどが不動産投資であることから、不動産市場は特に成長が期待できる分野です。
そのため、カンボジアの不動産は将来的にキャピタルゲイン(売却益)を狙える、魅力的な投資物件だといえるでしょう。

米ドルで資産を持つことができる

カンボジアの不動産投資は、米ドル建てでの運用が可能です。

カンボジアでは自国通貨であるリエルの信用度が低く、米ドルが流通しています
そのため、自国通貨建てでの投資が必要な他の東南アジア諸国と異なり、為替リスクの少ない米ドルで投資することができます。

非居住者でも現地銀行の口座開設ができる

カンボジアでは、国内に住んでいない外国人でも、現地の銀行口座開設が可能です。
さらに米ドル建てで高金利の定期預金を開設することで、インカムゲイン(家賃収入)を効率的に運用することができます。

カンボジア不動産を購入するリスク

カンボジアで不動産を購入する際に考えられるリスクは以下の4つです。
順番に解説していきます。

外国人は購入できる不動産の種類が限定されている

カンボジア国内に住んでいない外国人が購入できる投資物件は限られています。

外国人が購入できる居住用物件は、「2階以上の上層階」「全床面積の70%以下」などの条件に当てはまる、アパートやコンドミニアムといった集合住宅のみです。
非居住者の土地所有や戸建ての購入は認められていません。

プレビルド方式で途中建設が中止になることがある

カンボジアの不動産投資には、「建物が建設中止になり引き渡されない」という事態に陥るリスクがあります。

カンボジアで新築物件を購入する場合は、建設前に購入を決める「プレビルド方式」が一般的です。
建物が完成する前に費用を支払うため、不測の事態により建設が途中で止まってしまい、「不動産が手に入らない上に支払った費用も返ってこない」といったトラブルが起こる可能性があります。

登記制度がまだ整備されてない

カンボジアの登記制度は未整備の部分が多いため、不動産を購入する際は注意が必要です。
1970年代前半から20年以上続いた内戦時代、不動産の所有権を含む法律に関する資料が消失してしまったため、カンボジアは法整備を行なっている最中です。

現在のカンボジアの登記制度では、不動産の取得時に「ソフトタイトル」と「ハードタイトル」という2種類の書面が発行されることになっています。
ソフトタイトルは不動産取引があったことを証明する書類です。
一方でハードタイトルは日本の権利証にあたる書類で、こちらを入手しなければ物件の所有権を法的に主張できません
よって、カンボジアの不動産を購入する際は、ハードタイトルを入手されることをオススメします

規制や法制度は今後変わる可能性がある

カンボジアの経済成長は目覚ましく、今まさに近代国家として生まれ変わろうとしています。
一方で、まだ政治的・法的に不安定なところが多く、今後政策や法律が変わることも十分に考えられます

例えば、カンボジアの税制が改定され、現在はかからない不動産投資関連の税金(キャピタルゲイン税など)の納税が必要になる可能性があることも念頭に置いておいた方が良いでしょう。
なおキャピタルゲイン税に関しては、日本居住者の場合、日本国内での納税義務があります。

カンボジアで購入できる不動産の種類

カンボジア国内に居住していない外国人でも、不動産投資が可能な物件についてまとめました。

アパート、コンドミニアム

カンボジアで不動産投資対象となる物件の多くが、アパート・コンドミニアムといった集合住宅です。
「2階以上の上層階」「全床面積の70%以下」などの条件に当てはまる区分建物であれば、非居住者でも購入可能です。

ホテル、オフィス

非居住者でも購入可能な居住用の物件はアパートやコンドミニアムに限られますが、実はホテル・オフィスといった事業用不動産であれば、投資用として購入できます。

開発が進み空室リスクが高まる集合住宅よりも、外国人向けのホテルや外資系企業向けのオフィスを購入したいと考える投資家のニーズも増加しています。

土地の購入はできない

非居住者によるカンボジア国内の土地購入は禁止されています。
2023年現在、東南アジア主要国の中で非居住者の外国人が土地を購入・所有できるのはマレーシアのみです。

カンボジア不動産を購入する時にかかる3つの税金

カンボジアで不動産を購入・所有する際にかかる税金をまとめました。

固定資産税

価格が25,000米ドル以上の不動産には、不動産評価額の80%に税率0.1%の固定資産税が課税されます。

源泉税

不動産を保有することで発生する利益に対して、非居住者には毎月14%の源泉税が課税されます。
なお、カンボジア国内に居住している人の場合の税率は毎月10%です。

資産譲渡税

物件を購入する際、「物件の評価額もしくは購入額のどちらか高い方」の4%の資産譲渡税がかかります。
基本的に買主が負担する税金ですが、転売する際などには売主負担とするケースもあるようです。

カンボジア不動産購入する時の流れ

実際にカンボジアの不動産を購入する際は、大体以下のような流れで進みます。

  • 仲介業者を選ぶ…直接問い合わせる、オンラインセミナーに参加する
  • 物件を選ぶ…ネット上で情報収集する、可能であれば現地ツアーに参加し視察する
  • 物件を購入する…諸費用やサポート内容について理解した上で物件購入を決める
  • 物件の引き渡し…物件の賃貸管理業務を任せる管理会社を選定する

海外不動産を購入する場合は、日本人スタッフがいるなど、日本語でのサポートを受けられる不動産業者を利用することを強くおすすめします
日本人が現地人とクメール語のみでやり取りしながら不動産取引を進めるのは、非常にハードルが高いためです。

また、現地の不動産業界に精通している、豊富な販売実績のある業者かどうかも大切なチェックポイントです。
さらに不動産の売買だけでなく、購入した後の賃貸管理業務も任せられる不動産業者であればなお安心感があるでしょう。

まとめ

今後も経済成長が見込めるカンボジアの不動産投資は、売却時のキャピタルゲインはもちろんインカムゲインの効率的な運用も期待できる、資産形成にうってつけの投資対象です。

購入するリスクや税制、法律などを事前に確認し、メリットだけでなくデメリットも十分に理解した上で、カンボジア不動産の購入を検討しましょう。

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荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

宅地建物取引士 / 1984年生まれ、東京都出身。
大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。
2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。

著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
   はじめての海外不動産投資