カンボジアの歴史から経済のこれからを読み解こう!

執筆者:荒木 杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

「カンボジアは平均年齢が若くて、労働世代が多いから経済成長が期待できる」
「外資優遇政策をとっているから、投資をするならカンボジアがおすすめ」

海外投資を考えている人の中には、このような話を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
今回は、歴史から今後のカンボジアの経済について説明していきます。

カンボジアの歴史

カンボジアの歴史は非常に古く、その栄光と苦難が交差しています。以下は、主な時代を簡単に紹介します。

  • アンコール時代
    紀元9世紀から紀元15世紀まで、アンコール時代が栄えました。これはカンボジア文化の黄金期であり、アンコール遺跡群が建設されました。特に、アンコール・ワットは世界的に有名なヒンドゥー教寺院であり、カンボジアの象徴となっています。
  • フランス植民地時代
    19世紀後半、フランスがカンボジアを植民地化しました。フランス領インドシナの一部として統治され、フランスの影響下に置かれました。
  • 独立とシアヌーク王朝
    1941年にフランスから独立を果たした後、カンボジアはノロドム・シハヌーク国王によって統治されるシアヌーク王朝となりました。シハヌーク王朝は一時的に民主的な体制を採用しましたが、後に国王自らが政治の中心となり、一党制を敷いた時期もあります。
  • カンボジア内戦
    1970年代初頭、カンボジアは内戦の時代に入ります。1975年にクメール・ルージュと呼ばれる共産主義の革命勢力が政権を掌握し、ポル・ポトが指導者となりました。この時期には数百万人の犠牲者を出す大量虐殺(キリング・フィールド)が行われました。
  • ベトナムによる解放
    1979年、ベトナムがカンボジアに侵攻し、クメール・ルージュ政権を打倒しました。その後、ベトナムの支援を受けた人民共和国カンボジアが成立しました。
  • 内戦の終結
    1991年、パリ和平協定によってカンボジア内戦が終結し、国連の仲介のもとで選挙が行われ、ノロドム・シハヌークが国王に復帰しました。1993年にカンボジア王国が成立しました。


近年は経済成長や国際的な関与も増え、観光業が盛んになっていますが、政治的な課題や社会的な問題も依然として存在しています。

ポル・ポト政権

ポル・ポト(本名:サラ=サロ)はカンボジアの政治家で、クメール・ルージュ(カンボジア共産党)の指導者として知られています。彼は1975年から1979年までカンボジアを支配し、その間に非常に過酷な政権を展開しました。

【ポル・ポト政権の特徴】

  • 大量虐殺
    ポル・ポト政権の指導下では、カンボジア社会の反革命勢力や知識人、宗教指導者、外国人、市民のほとんどに対して大量虐殺が行われました。この期間に推定200万人から300万人以上の人々が殺害されたとされています。特に、「キリング・フィールド」として知られる処刑場が有名です。
  • 強制労働
    ポル・ポト政権は都市部の住民を強制的に農村に移住させ、農耕労働を強制しました。労働条件は過酷で、飢餓と病気が広がりました。
  • 文化の破壊
    ポル・ポトは外国の影響を排除し、近代的な文化や教育を否定しました。学校や寺院、文化的な施設が破壊されました。
  • 社会制度の廃止
    ポル・ポト政権は個人的な所有権や家族の概念を否定し、共産主義的な理念に基づく集団農村社会を築こうとしました。

【ポル・ポト政権の終焉】
1979年にベトナム軍がカンボジアに侵攻し、ポル・ポト政権を打倒しました。ベトナムの支援を受けた人民共和国カンボジアが成立しましたが、カンボジア内戦は続き、ポル・ポト派は抵抗活動を継続しました。

1991年にパリ和平協定が締結され、1993年にカンボジア王国が成立し、ポル・ポト派は政治的に影響力を失いました。ポル・ポト自身は1997年に逮捕され、1998年に心臓発作で死亡しました。彼はその後、国際刑事裁判所によって戦争犯罪や人道に対する罪で起訴される予定でしたが、裁判にかけられることなく亡くなりました。

カンボジア王国の成立

1991年、カンボジアは長年にわたる内戦からの脱却を目指してパリ和平協定が締結されました。
この協定によって国連の仲介で選挙が実施され、1993年にノロドム・シハヌーク(ノロドム・シハモニ)が国王に復位し、カンボジア王国が成立しました。

  • 政治体制
    カンボジア王国は立憲君主制を採用しており、国王が元首を務めます。ただし、国王の権限は限定されており、実質的な政治的権力は首相と議会に委ねられています。カンボジアは一院制の国会を持ち、議員は選挙で選ばれます。
  • 経済
    カンボジアは農業が主要産業であり、主要な輸出品としては米、糖、ゴムなどがあります。観光業も成長しており、アンコール遺跡群をはじめとする歴史的な遺産や美しい自然が観光客を惹きつけています。

以上が、カンボジア王国についての簡単な概要です。
カンボジアは多様な文化や歴史を持つ国であり、これからも発展と向上を目指している国です。

カンボジアの人口

カンボジアの人口はおよそ1,670万人で、平均年齢は24歳となります。(共に2021年時点)

カンボジアの人口の大部分は若年層で構成されており、平均年齢は若いです。若年層の割合が高い一方で、高齢者の割合はまだ比較的低いですが、高齢化が進む可能性もあります。

カンボジアの人口分布は地域によっても異なるため、都市部と農村部の間や地方都市と首都プノンペンの間にも人口の違いが見られます。人口動態や社会経済の変化によって、将来的に人口分布はさらに変化していくことが予想されます。

カンボジアの経済成長

カンボジアの経済成長は、過去数十年間にわたって着実に進展しています。特に2000年代以降は高い成長率を記録しており、その経済成長はアジア地域でも注目されるようになりました。
以下にいくつかの要因を挙げて、カンボジアの経済成長について解説します。

  • 農業と観光産業の成長
    カンボジアは農業が主要産業の一つであり、米やゴム、カシューナッツなどの農産物の生産が盛んです。また、アンコール遺跡などの歴史的な遺産を持つカンボジアは観光業が成長産業として重要な役割を果たしています。
  • 外国からの投資の増加
    カンボジアは安価な労働力を持つため、外国からの投資が増加しています。特に衣料品産業や軽工業への外国企業の進出が目立ちます。これにより、輸出収入の増加や雇用機会の増大が期待されます。
  • インフラ整備の進展
    政府がインフラ整備に力を入れていることも成長の要因となっています。道路や港湾、電力供給の改善により、ビジネス環境が改善され、投資が促進される効果があります。
  • 貿易の拡大
    カンボジアは近隣諸国との貿易を拡大しており、特に中国との経済関係が深まっています。ASEAN(東南アジア諸国連合)との経済統合も進展しています。
  • 若年層の労働力
    カンボジアの人口の多くは若年層で構成されており、労働力が豊富です。これにより、生産性の向上や経済活動の拡大に寄与しています。


カンボジアの経済成長は一部の成功要因によるものですが、一方でいくつかの課題も抱えています。
格差是正や教育の向上、貧困削減などが引き続き課題とされており、持続可能な成長と社会的な発展を両立させることが重要です。

カンボジア経済のこれから

カンボジアの経済のこれからは、成長と発展のために重要な段階にあります。
以下に、カンボジア経済の将来に向けて注目すべきいくつかのポイントを挙げてみます。

  • 持続可能な成長への移行
    カンボジアはこれまで急速な経済成長を達成してきましたが、今後は持続可能な成長に焦点を当てる必要があります。環境への配慮や社会的な課題への取り組みを強化し、成長の質を向上させることが重要です。
  • 産業の多様化
    カンボジアは依然として農業が主要産業ですが、産業の多様化が求められています。
    高付加価値の産業やサービス業の育成によって、経済のバランスを改善し、新たな雇用機会を創出することが重要です。
  • 人材育成と教育
    成長する経済を支えるためには、適切な人材を育成することが不可欠です。
    教育の充実や職業訓練プログラムの拡充を通じて、技術力の向上を図り、グローバルな競争に対応できる人材を輩出することが重要です。
  • デジタル化とイノベーション
    デジタル技術の進化は、経済発展に新たな機会をもたらしています。
    カンボジアはデジタル化とイノベーションの促進に取り組むことで、経済の効率化やビジネス環境の改善を図ることが可能です。
  • グリーンエネルギーと環境保護
    環境への配慮がますます重要になる中、再生可能エネルギーの導入や環境保護への投資が進められるでしょう。これにより、環境負荷を低減し、持続可能な成長を実現することが期待されます。
  • インフラの拡充
    インフラの整備は経済成長に不可欠です。
    道路、港湾、電力供給などの改善を進めることで、ビジネス環境の向上や地域の経済発展が促進されるでしょう。


これらの取り組みが進むことで、カンボジアはより持続可能な経済成長と社会的な発展を実現することができるでしょう。

しかし、課題も依然として存在しており、政府や関係者が継続的な努力を行うことが重要です。
国際社会の支援や適切な政策の実行が、カンボジア経済の将来において重要な要素となります。

一覧に戻る

記事をシェア:

荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社

宅地建物取引士 / 1984年生まれ、東京都出身。
大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。
2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。

著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
   はじめての海外不動産投資