仮想通貨などでよく耳にするワード「ブロックチェーン」ですが、
・どのような仕組みかよくわかっていない
・サービスへの活用のイメージが沸かない
上記のような方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ブロックチェーン技術の概要と、不動産市場にもたらす影響や活用事例をご紹介します。
不動産市場の将来性や今後の変化について把握しておきたい、という方におすすめの内容になっていますので、ぜひ最後までお付き合いください。
1. ブロックチェーンとは
ブロックチェーンは、仮想通貨を実現するために確立された技術です。
数十年前のインターネットの登場が世界を大きく変えたように、ブロックチェーンの普及は革命を起こすと言われています。
では、ブロックチェーンの技術はどのようなものか具体的に解説します。
(1) ブロックチェーン技術の概要・特徴
ブロックチェーンが仮想通貨の根幹の技術であることはよく知られています。
ブロックチェーンとは、重要なデータを世界中のネットワーク上で共有・記録し管理していく方法です。
特徴としては、以下の4点が挙げられます。
・自立分散型台帳
・システムダウンが起きない
・改ざんができない
・取引の記録が消せない
ブロックチェーンは、自立分散型台帳と言う特徴を持ち合わせているため、分散した状態でデータが管理されます。この特徴により、データの共有が非常に簡単です。
ユーザー同士で管理し、中央集権的な管理者を置かない為、システムダウンが実質的に起きないという特徴も持ち合わせています。
このブロックチェーンは、ブロックと呼ばれるデータの情報を鎖状に連結していくデータベースで成り立っています。
取引の履歴だけでなく、システムエラーやメンテナンスの状況などあらゆる履歴が連続した情報として残ります。
この履歴は、先程の自立分散型台帳という特徴から全ネットワーク上で共有されているため、消すことができません。
よって、現実的に改ざんを行うことができないような仕組みになっています。
このように、高い信頼性と透明性をもたらす仕組みであることから、仮想通貨に用いられることで発展してきました。
今後はこの技術を様々な業界へ導入することが計画されています。
(2) 不動産への活用が進んでいる
ブロックチェーンの活用範囲は、1.0〜2.0〜3.0で表現されています。
1.0は仮想通貨、2.0は金融、3.0は幅広い分野を表します。
実は、このブロックチェーンは不動産と非常に相性が良いと言われています。
不動産市場は40兆円以上とも言われる巨大な市場です。
この業界は、古くからの商慣習や取引手法などがいまだ色濃く残っているため、ブロックチェーン技術の導入で、革新的に取引方法が変わると考えられていました。
昨今、このブロックチェーンが不動産に導入されることによりビジネスモデルも変化してきています。
今後もブロックチェーン技術の活用で変化は続いていくことが予測されますので、しっかりと最新の情報を入手することが、不動産投資成功のキーポイントになります。
2. 不動産への導入で考えられるメリット
不動産取引では、多くの提出書類の準備が必要であったり、物件の取得に日数がかかってしまったりと、まだまだ不便に感じることも多いでしょう。
では、このブロックチェーンによって、不動産取引はどのように変化するのでしょうか。
不動産市場に与えるメリットについて具体的に解説します。
(1) 安全性の向上
ブロックチェーンには、改ざんができないという特徴があります。よって不動産情報をブロックチェーン上で管理することで、登記システムなどのセキュリティが非常に高まります。
また、ブロックチェーン上で不動産情報を管理することで、過去の取引データや修繕・改修などのデータを確認することができます。なぜなら、ブロックチェーンでは、改ざんできない連続したデータが管理されているからです。
よって、不動産に対して不当に評価額を上げるような不正を行うことができませんので、透明性の高い取引がおこなわれるようになります。
このように、不動産取引の安全性を向上させることができるのです。
(2) 手続きの簡略化
ブロックチェーンでは、デジタルデータを連結することで、過去のデータに遡って辿ることができます。そのため、様々な手続きを省略することが可能になります。
データをオープンかつ正確に記録することができますので、様々な提出書類を用意するような手間、重要書類の押印など様々な手続き上の負担が解消されるでしょう。
手続きが簡略化することで、不動産自体の取引もより流動的になるため、さらなる市場の拡大も見込めます。
(3) コストの大幅削減
不動産市場にブロックチェーンが導入されることで、中央集権的な管理者の存在が必要なくなります。
現在政府が不動産登記情報の正確性を担保し、管理しています。
しかし、分散された台帳システムの中で正確なデータが自律的に管理されるため、この管理にかかる莫大なコストを削減することができます。
また、ブロックチェーンの導入で手続きも非常に簡略化されることが予想されます。
その為、現在の不動産取引で中間的にかかっているコスト(仲介、手続代行…など)の削減を行うことができます。
3. 不動産市場におけるブロックチェーンの活用事例
不動産市場ではブロックチェーン技術を応用した事例がすでにいくつか始まっています。
よって、今回はブロックチェーンを活用している不動産市場の動向を、具体例を用いて解説します。
(1) STO (SecurityTokenOffering)
ブロックチェーン技術を用いた注目すべき動向の一つとして、「STO」があります。
STO(Seurity Token Offering-セキュリティ トークン オファーリング)はブロックチェーンシステムを利用した新しい資金調達方法です。
セキュリティトークンとは、有価証券化された不動産所有権のことです。このセキュリティトークンを利用して資金調達を行うことをSTOと言います。
STOには以下4つの特徴があります。
・所有権の小口化
・即時取引が可能
・利便性の向上
・高い安全性
STOでは、不動産の所有権が有価証券化されているため、所有権を小口化することができます。
例えば、都内一等地のワンルームマンションを個人で取得しようとすると膨大な資金が必要になります。この際、STOにより所有権が小口化されると、初期投資費用が抑えられることになり、参入のハードルが下がります。
また、STOでは有価証券化されたデジタルデータで取引が行われるため、24時間リアルタイムでの即時取引が可能になります。
不動産取得には、提出書類の準備や契約手続きで取得まで時間がかかることが一般的でした。しかし、このSTOの導入でこれらのフェーズを省略することができます。
この、所有権の小口化や即時取引の導入などにより、不動産の流動性がかなり高くなることが予想されます。よって、不動産市場全体も活性化し成長していくでしょう。
(2) 土地の登記システム
海外では、土地の登記率が低い国が多々あります。
そのような国では、手続きも煩雑で費用もかかるので更に登記が進まないという悪循環に陥る場合がほとんどです。
そんな中、ブロックチェーンの登場で、土地の登記率に変化が出た国があります。
ジョージアでは、土地の登記にブロックチェーンシステムを導入したことで、コストの大幅削減、手続きの簡略化を実現し、登記率が大きく改善したそうです。
日本を含め、世界各国で土地の登記へのブロックチェーン導入が検証されています。
4. まとめ
今回は、ブロックチェーンについて概要や特徴から、不動産市場への活用事例について解説しました。
ブロックチェーンと不動産市場は相性が非常に良く、今後もさらなる活用が見込まれます。ブロックチェーンの導入で、今回解説したように不動産市場全体が大きく変化する可能性があります。
この変化についていき、大きなメリットなどを享受できるように常に最新情報を収集するようにしましょう。
荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
代表取締役 / 宅地建物取引士 / 宅地建物取引業 東京都知事免許(2)第99967号
所属団体:一般社団法人RE AGENT 理事長 / 一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC) / 公益社団法人全日本不動産協会
1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。
著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
はじめての海外不動産投資