執筆者:荒木 杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
経済大国として現在も発展を続けるアメリカ(米国)は、海外不動産投資の中でも、投資先として人気の国です。
この記事では、アメリカ不動産投資の今後の見通しやメリット・デメリットなどについて、徹底解説します。
これからアメリカ不動産投資を検討されている方は、ぜひ最後までお付き合いください。
アメリカ不動産投資は今後も明るい?
移民国であることから人口が増加し続けている
アメリカは積極的に移民の受け入れる国であることから、人口が右肩上がりで推移しています。
人口が増えるということは、経済の発展と住宅の需要増が期待できます。
アメリカの人口は今後も増加すると見られているため、不動産の賃貸経営に適しているといえるでしょう。
世界の基軸通貨である「ドル」で資産が持てる
アメリカで不動産を取得することで、基軸通貨であるドル建ての資産を保有できます。
ドルは高い信用力を持っており、新興国などで危惧される通貨暴落のリスクを考えずに投資できることから、今後も需要が見込めるでしょう。
またドル建ての資産は、昨今問題になっている「円安」に強いため、為替のリスクヘッジができる投資先としても有効です。
中古不動産市場の流通が非常に活発である
アメリカ不動産投資では、中古市場が活発です。
日本では住宅を購入する際、新築の物件に資産価値を見出す傾向がありますが、アメリカでは新築を購入すること自体が少ないです。
またアメリカには、日本に比べて転居が多いという特徴もあります。
そのため、アメリカの中古不動産は価値が下がりにくく、今後もその傾向が続くと見通せます。
人口に対して不動産が不足しているため不動産の価値が下がりにくい
アメリカの不動産市場では、需要(人口増)に対して供給(不動産)が追いついていない状況が続いています。
そのため、アメリカの不動産価格は上昇し続けており、全米の住宅価格指数はこの10年間で2倍程度まで高騰しているというデータもあります。
アメリカでは今後も人口増が見込まれていることから、不動産の価値は当面下がりにくく、賃料収入も期待できるでしょう。
カントリーリスクが低い
アメリカは世界有数の先進国であり、新興国にみられるような「カントリーリスク」が低いです。
カントリーリスクとは、その国の政情不安や法律改訂などの事情により、不動産価格の下落や増税といったネガティブな変化が起こることです。
アメリカは不動産市場が成熟しており、法律や税制が整備されていることなどから、長期的に見ても安心できる投資先といえます。
アメリカ不動産投資をするメリットは?
アメリカ不動産投資で得られるメリットを4つ紹介します。
1. 外国人投資家に対する制限がない
アメリカには、外国人が不動産を購入・保有することについての規制がほとんどありません。
通常、外国人の不動産購入に関して「土地の購入はできない」などの規制をしている国が多い中、アメリカでは原則自由に不動産を購入できます。
2. 日本国内でも融資を受けることができる
アメリカ不動産投資は、金融機関から融資を受けやすいのも魅力です。
海外不動産を購入する場合、基本的に住宅ローンを組みたくても組めないケースがほとんどです。
しかしアメリカの不動産購入であれば、専用の融資商品を提供してくれる金融機関が、日本国内に複数存在しています。
3. ドル資産を持つことによってインフレ対策になる
インフレに備える目的でアメリカ不動産投資を始める、というのも有効です。
日本でインフレが進んだ場合、それは「円」の通貨としての価値が下落することを意味します。
そのため、ドル建ての資産としてアメリカの不動産を購入することが、資産を守ることに繋がるのです。
4. 資産を分散して持つことができる
アメリカの不動産購入は、資産分散にも効果的です。
「卵を1つのカゴの中に入れるな」という格言があるように、異なる投資先に資産を分散させることは、資産運用の基本です。
日本の株式や不動産だけでなく、米国不動産もポートフォリオに組み込むことで、より安定した資産形成を目指すことができるでしょう。
アメリカ不動産投資をするデメリット、リスクは?
アメリカ不動産投資をする上で知っておきたい、デメリットおよびリスクを6つ紹介します。
1. まとまった自己資金が必要
アメリカの不動産購入をする場合、まとまった自己資金が必要になります。
アメリカ不動産投資は、他の海外不動産投資と比べて金融機関から融資が受けやすいのが特徴ですが、融資比率が小さく、不動産購入に必要な金額の半分程度が一般的です。
例えば購入費用が6,000万円だった場合、融資額は3,000万円程度で、残りは現金で用意する必要があります。
2. 不動産の価格が高騰している
アメリカの不動産価格が近年高騰していることも、デメリットの一つです。
先述のとおり、全米の住宅価格指数はこの10年間で2倍程度まで高騰しているため、以前よりも物件購入しづらくなっています。
日本人の場合、2022年以降急速に進んだ円安の影響も受けているため、余計に手が届きにくくなっているのが現状です。
さらに、価格が高い物件は利回りが低くなる傾向があるため、物件を選ぶ際には融資返済額などを除いた「実質利回り」を計算してから検討しましょう。
3. 減価償却による節税効果が薄くなった
以前存在した、アメリカ不動産投資を利用した節税スキームがなくなったこともマイナスポイントです。
2020年度の税制改正前までは、減価償却費を経費計上することが認められていたため、節税対策のためにアメリカの不動産を購入する人もいました。
しかし現在は、アメリカ不動産の減価償却費としての計上はできなくなっています。
4. 言葉の壁が高い
アメリカ不動産投資を始める際に、必ずぶつかるのが言語の壁です。
特に、アメリカの不動産売買の契約書類は英語力のある人でもハードルが高く、細部まで理解するのに労力を伴います。
また不動産会社の現地スタッフが英語しか話せない場合には、英語でコミュニケーションを取る必要があります。
5. 文化の違いに対する理解が必要
アメリカ不動産投資を成功させるためには、アメリカと日本との文化の違いを考慮する必要があります。
例えば、アメリカではバスルームが複数ある家を好む人が多いなど、日本の常識があてはまらないことが多くあります。
文化の違いを理解し、どのような物件なら入居者が付きやすいか、判断することが大切です。
6. 信頼できるエージェントを探すことが重要
アメリカ不動産投資において最も重要といえるのが、信頼性のあるエージェントや不動産会社を見つけることです。
具体的には、以下のようなポイントに注目して業者を探すとよいでしょう。
- 日本語サポートが手厚いか
- 現地にも日本にも事務所があるか
- アメリカ不動産投資の販売経験や知識が豊富か
- アメリカの不動産情報に精通したプロかどうか
- 購入だけでなく、物件管理や売却も任せられるか
少しでもあやしいと思ったらそのままにせず、他の仲介業者にも相談するなどして、確認してから検討しましょう。
アメリカ不動産投資をおすすめしたい人
アメリカ不動産投資は、下記のような人に特におすすめです。
- 日本と比較して、アメリカの方が今後成長すると考えている人
- 海外不動産の、建物だけでなく土地も所有したい人
- インフレ対策や分散投資目的で、ドル建ての資産が欲しい人
- 海外不動産投資に興味はあるが、なるべくリスクが少ない国がいい人
- 物件価格の半分以上を自己資金で賄える人
同じくドル資産を持てるカンボジア不動産投資は?
アメリカと同じく、米ドル建てで不動産投資ができる国の一つに、カンボジアがあります。
カンボジアでは、自国通貨のリエルよりも信用力の高い米ドルが流通しているため、不動産投資もドルでの運用が認められているのです。
ここではカンボジア投資のメリット・注意点について紹介します。
カンボジア不動産投資のメリット
カンボジア不動産投資のメリットは、以下の3つです。
- 価格が安い
カンボジアの不動産価格は、他のアジア諸国よりも安いです。
首都プノンペンの富裕層エリアのコンドミニアムでも、2,000万円代から購入が可能です。 - 今後の不動産価格の上昇が見込める
カンボジアの2022年の経済成長率は5.3%と、東南アジアの中でも高水準です。
また、今後も人口増加や外国資本の流入が見込まれており、不動産価格の値上がりと売却時のキャピタルゲイン(売却益)が期待できます。 - 銀行口座が作れる
カンボジアでは、外国人も銀行口座を作ることが可能です。
また、高金利な米ドル建ての定期預金を活用することで、インカムゲイン(家賃収入)を効率的に運用できます。
カンボジア不動産投資の注意点
カンボジア不動産投資の注意点は、以下の3つです。
- 購入できる不動産が限定されている
カンボジアでは、非居住者による土地や戸建ての購入は認められていません。
外国人が購入できるのは、アパートやコンドミニアムといった集合住宅のみです。 - カントリーリスクがある
カンボジアでは、今後不動産に関する現地法や税金が変わる可能性が否定できません。
理由は、20年以上続いた過去の内戦の影響で、今も法律の整備が進んでいない部分があるためです。ちなみに登記制度も整備中の段階のため、不動産取引の際には注意が必要です。 - 建物が完成しないリスクがある
カンボジア不動産投資では、建物が完成せず物件が手に入らないリスクがあります。
カンボジアで新築物件を購入する場合、建設前に購入を決める「プレビルド方式」が一般的だからです。
不測の事態により建設が途中で止まってしまい、先に支払った購入資金が返ってこないなどのトラブルが実際に起きています。
まとめ
今回は、アメリカ不動産投資について詳細を解説しました。
アメリカが今後も有望な投資先であることや、ドル建て資産を持つことのメリットがわかったのではないでしょうか。
ただし、以前のような節税効果が無くなっていること、まとまった自己資金が必要なことなどには注意が必要です。
まずは気になる不動産業者を見つけて、アメリカ不動産投資について話を聞いてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。
荒木杏奈 / アンナアドバイザーズ株式会社
代表取締役 / 宅地建物取引士 / 宅地建物取引業 東京都知事免許(2)第99967号
所属団体:一般社団法人RE AGENT 理事長 / 一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC) / 公益社団法人全日本不動産協会
1984年生まれ、東京都出身。大手広告代理店セプテーニ(株)入社、その後SBIグループを経て2012年よりカンボジアの首都プノンペンの金融機関に勤務。2013年に独立し日本とカンボジアに拠点を持ち、国内・海外の国際不動産サービスを展開。
著書:東南アジア投資のラストリゾート カンボジア (黄金律新書) 新書 幻冬舎
はじめての海外不動産投資